J2降格ジュビロ、監督続投も……。「強化の責任はどこにあるのか」

J2降格ジュビロ、監督続投も……。「強化の責任はどこにあるのか」

 11月30日第33節、J1ジュビロ磐田がついに力尽きた――。

 名古屋グランパス相手の今季ホーム最終戦でシーズン初の2連勝を演じたものの、残留を争う湘南ベルマーレが勝利したため、最終節を待たずにクラブ史上2度目となる来季のJ2降格が決まった。

 試合直後のセレモニーでは、主将のDF大井健太郎とクラブの小野勝社長がそろって「必ず1年で戻ってくる」と最短でのJ1復帰を宣言。しかし、大井には拍手と激励の言葉が飛んだが、社長の声高なメッセージはファン、サポーターの激しいブーイングにかき消された。

 降格が決まった直後とあってか、スタンドに陣取った40代の男性サポーターは「補強を見ても、去年苦しんだ(16位でJ1参入プレーオフ)反省がまったく生かされていない。フロントは真剣に上位争いする気があるのか疑問だ」と怒りを露わにし、「もう応援する気がなくなった」と言い放ってスタジアムを後にした。

 スタンドには「このクラブの強化の責任はどこにあるのか」と書かれた横断幕が掲げられ、まさに怒りの矛先であるクラブのフロントの甘さが、今回の降格への大きな要因だったことは否めない。

ずれた歯車を修正できず……。

 昨年は勝点41を獲得しながらも、終盤に失速し、プレーオフへ。結局J2を勝ち上がった東京ヴェルディには2−0と快勝し残留を決めたが、チーム総得点数はリーグワースト2位の「35」と、今季を戦うための補強ポイントは明らかだった。

 しかし、降格決定後に振り返った小野社長は「プレーオフを戦ったことで、補強のタイミングが若干遅れた」としたうえで、「(2018年に長期離脱していたMFアダイウトンら)主力組がケガから復帰したことで、しっかりと戦えると判断したが、少しずつ歯車がズレた」と説明し、見通しの甘さを認めた。

 結局、今季の補強で序盤から主力組に加わったのは、ルクセンブルク代表FWロドリゲスのみだった。

 そのうえ活躍が期待された頼みのアダイウトンは第3節大分戦に初ゴールを決めたものの、なかなか得点に絡めないまま中盤を迎えた。そこに元日本代表FW川又堅碁のケガなども重なり、開幕ダッシュを狙ったチームの初勝利は第6節湘南ベルマーレ戦と厳しい船出となってしまった。

エースの移籍、監督交代でも。

 その後は徐々にフィットしてきたロドリゲスがエースとして名乗りを上げたが、黒星先行の流れは変えられず、序盤から2ケタ順位に低迷。そして、1−3と完敗し、最下位に転落した第17節川崎フロンターレ戦後に6シーズン目の指揮を執っていたクラブOBの名波浩監督が責任を取って辞任した。

 コーチから昇格したOBの鈴木秀人監督が引き継いだが、その後も浮上する可能性を見いだせず、追い打ちをかけるように、孤軍奮闘していたロドリゲスが移籍。その直前にはチームの精神的支柱として、2017年シーズン6位浮上にも大きく貢献したMF中村俊輔の移籍も重なり、名門は一気に窮地に立たされることになった。

 ケガや流出で不在となった人員を埋めるため、ようやくクラブが補強に本腰を入れたのは7月。しかし、それ以降に加入した外国籍選手3人、元日本代表ら日本人選手2人のうち、その後スタメン組に定着したのはわずかにFWルキアンだけ。現場とフロントが噛み合わない状況を改めて露呈することになった。

追い風となったフベロの就任。

 そんな名門に追い風が吹き始めたのは8月。今季、クラブ4人目の指揮官としてスペイン人のフベロ監督が就任してからだった。トップレベルでのプレーヤー経験はなく知名度も高くないが、スペイン・バルセロナの下部組織に関わり、その後は南米・パラグアイリーグで手腕を発揮。同リーグでの優勝経験を持つ期待の指揮官だった。

「残留させる自信がある」と明確な目標を掲げスタートし、これまでよりも明らかに強度を高めた練習メニューには、選手たちも「厳しさに可能性を感じる」と手ごたえを口にした。試合形式の練習も多く、次節の相手を想定した戦術の徹底に加え、選手を大きく入れ替えるなど熾烈な競争意識も植え付けていくなど、浮上へのムードは徐々に高まった。

 第24節セレッソ大阪戦から試合で指揮を執り、第33節名古屋グランパス戦までの10試合で4勝1分5敗。降格した33節までの直近5試合で勝点10を上乗せした。今季前半戦の成績を考慮すれば、低迷チームを短期間で大きく上向かせた功績と期待は大きいが、時すでに遅かった。

「今のままではJ2を勝ち上がるのも……」

 新指揮官を招聘し、残留へと浮上を目指すチームには、水を差す出来事も起こった。

 熾烈な選手間の競争とチームが結果を出せない状況下で、出場機会が多い選手とそうではない選手の中に1つにまとまり切れない感情が芽生えていく。そんな中で行われた紅白戦で、主力組とサブ組の選手が接触プレーを巡ってピッチ上で衝突。現場には毎日のように練習に顔を見せる強化部スタッフがいたが、「見ていなかった」と何の対処もしなかったのだ。

 チームが1つにまとめるべき大事な時期に、ましてケガの危険もある場面でのスタッフの行動に、他クラブの状況を良く知る選手は「強化部が連日、練習場にいることにも違和感があるし、目の前で起こったことに何もしないとはね」とあきれ顔だった。

 その結果、終盤の大事な場面で選手たちがコミュニケーションを高めるために以前は行われていた「決起集会」も、「やれるムードではなかった」と中堅選手。チームが真にまとまりを見せることは、少なくともシーズン終盤にはなかったという。

 そして、来季待っているのはJ2だ。

 リーグ王者3度の名門には、初めて降格した2014年以来、6年ぶり2回目の屈辱だ。選手もスタッフも「必ず1年でJ1復帰する」と口を揃えたが、決して楽な道でない。前回の降格時もJ1昇格まで2年を要している。ある若手は「今のままではJ2を勝ち上がるのも厳しいと思う」と改めて現実と向き合い、自らの兜の緒を締めた。

フベロ監督の続投は決まったが……。

 磐田は降格から3日後の12月3日、フベロ監督の来季続投を発表した。

 小野社長は「フベロ体制になってから、チームは躍動感あるサッカーをしているし、監督の目指している戦術も確実に浸透してきている」と指揮官を高く評価。それを受けたフベロ監督は「このクラブが居るべきJ1に1年で戻るために、すぐに練習を始める」と最短での昇格に意欲と自信を覗かせた。

 ただ、ある解説者はこう明言する。

「降格した責任の所在をはっきりさせないと、選手がついてこない。フロントの体制などもできるだけ早く決定するべきだ」

 J2降格に加えチームが1つにまとまらないムードの中、主力を含めた大量流出も予想されるが、今後クラブは人事を含めどんな方針を打ち出していくか。1年でのJ1復帰には、その方向性が大きく関わってきそうだ。

文=望月文夫

photograph by J.LEAGUE


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