「朝の(公式練習の)体の動きの状態だと残念なジャンプが多かったんですけど、今の調子の中、この本番の状態では、一番良いというか、自分の中では精いっぱいを尽くせた試合はできたかなと思います」

 GPファイナルのフリー演技を終えた後、紀平梨花はすっきりした表情でそう語った。

「点数とか順位とかには悔いが残るし、演技にも悔いはもちろん残るので、今できることをしっかり出せたことはすごい良かった。

まず、ミスっていうものをなくすために、もう、次の試合からはこのようなことがないようにっていうことを考えて、SP、フリーをずっと揃えて、完璧を目指せるように。どんな状況があっても対応できるように、それが必要だなと思いました」

試合で初挑戦した4サルコウ。

 SPで転倒というミスがあり、6位という予想外の位置から挑んだフリーだった。

冒頭では4サルコウに初めて挑戦。転倒こそしたものの、回転は承認された。その直後に飛んだアクセルは回転不足になったが、残りはノーミスで滑り切った。

だがロシアの若手たちには追い付かず、総合4位と表彰台を逃した。

「4回転が必須になってくる試合っていうのを改めて感じさせられた試合だったので、あとはSPのミスがすごく大きいミスだっていうのもすごく感じた。

周りの方々もほんとに本番に強かったり、攻めた構成をしてもすごい良い演技をしてらっしゃるので。どんな攻めた演技でも、自分がその試合のその時間に一番いいものをもってくるというのが足りないのじゃないのかなって思いました」

 現在は怪我のため、3ルッツをプログラムに入れていない。優勝したアリョーナ・コストルナヤとは最終的に31ポイント以上の点差がついた。

メダルは予想通りロシアの新人3人。

 表彰台に並んだのは、予想通りGP6大会を2試合ずつ制したロシアの若手3人だった。

 頂点に立ったのは、SPとフリーともノーミスで、質の高い演技を見せた16歳のアリョーナ・コストルナヤだった。

 3人の中で唯一4回転ジャンプを武器に持っていないが、安定した3アクセルを跳び、スケーティングの質や表現力では、3人の中で抜き出ている。247.59で女子の歴代最高スコアを塗り替えた。

「ここでは最高点を目指して滑りました」と通訳を介してコメントした。

 2位になったのは、15歳のアンナ・シェルバコワだった。

 フリーでは初めて試合で入れた4フリップで転倒したものの、4ルッツを2度着氷。フリーは1位だったが、総合240.92で2位になった。

6位のザギトワはノーコメントを貫く。

 3位は、アレクサンドラ・トゥルソワだった。

 SPでは初挑戦した3アクセルで転倒し、フリーでは4回転を5度入れるという、男子でも最高難易度のプログラムを組んできた。冒頭で、女子として史上初となる4フリップを成功させたが、次のサルコウが2回転に。2度目の4トウループで転倒し、

 結局フリップ、ルッツ、トウループの3度の4回転を成功させたものの、総合233.18で3位となった。

「正直に言うともうジュニアで滑るのは飽きていたので、こうしてシニアの大会に出ることができて嬉しいです」と通訳を通して語ったトゥルソワ。

 SP2位だったアリーナ・ザギトワは、フリーは7度挑んだ3回転のうち5個が回転不足という不調な演技で、6位に終わった。

 キス&クライで呆然とした表情で点数を見ていたザギトワだが、演技後はノーコメントを貫いた。

トゥルソワの膝には愛犬のチワワ。

 表彰式の後に行われた記者会見。中央にコストルナヤ、向かって彼女の左にシェルバコワ、右にトゥルソワが座った。

 トゥルソワは、愛犬のチワワ、ティナを膝に抱いている。

「すべて予定した通りにうまくいって嬉しいです。それだけです」とコストルナヤがまずコメントした。

チャンピオンに求められる品格。

 正直に言えば、会見の壇上に並んでいる3人を見て、本当にこれがシニア女子のメダリスト3人なのかと、覚めた感情が湧いてくるのを抑えるのは難しかった。

 コストルナヤは膝の上に携帯電話をおいているのか、ずっと視線を下に向けたまま。質問した記者の顔をみようともせずに、コメントも木で鼻をくくったようなそっけなさである。

 氷の上の演技の優雅さと、この会見での態度のあまりのギャップにたじろがされた。フランス杯ではこのような態度ではなかったが、その後何かあったのだろうか。

 トゥルソワは自分の愛犬に視線を落としたまま、記者会見は上の空といった様子。

 正面を向いて記者席をきちんと見渡しているのは、シェルバコワのみであった。

 女子に新世代が登場し、かつてなかったレベルに到達したことはスポーツとして大切な歴史であり、本当は喜ぶべきことなのだろう。

 でも特にフィギュアスケートにおいて、チャンピオンにはそれなりの品格というものが求められる。才能には責任もついて回るということを、彼女たちは誰からも教わってこなかったのではないだろうか。

以前も同じようなことがあった。

 以前に同じようなことがあったと記憶を辿ったら、2014年12月のバルセロナGPファイナルのSPで、エリザベータ・トゥクタミシェワ、ユリア・リプニツカヤ、エレナ・ラジオノワの3人が記者会見に来たときのことだった。

 あの中で、現在も選手として残っているのは唯一正面を向いて座っていたトゥクタミシェワだけだ。

 コストルナヤは、フランス杯の時にカロリーナ・コストナーの滑りを尊敬していることを口にしていた。

 だがコストナーは、15歳でシニアデビューした当時から記者会見でこのような態度を見せたことは一度もない。

 エフゲニア・メドベデワ、アリーナ・ザギトワ、そしてもちろん昨年チャンピオンになった紀平梨花も、会見ではきちんとチャンピオンに相応しい態度で臨んでいた。

 飛びぬけた身体的才能でいきなりジュニアからシニアの表彰台を制したティーンエイジャーの女子たち。彼女たちがこれから、シニアの女王に相応しい品格を身に着けていってくれることを願いたい。

文=田村明子

photograph by Asami Enomoto