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高校野球部門の第1位はこちら!(初公開日:2019年8月5日)

 第101回全国高校野球選手権大会は、令和最初の甲子園だ。今春の選抜の時点ではまだ「平成の御代」だったのだ。

 私は何度かこのコラムで第1回からの勝利数ランキングを並べた「高校野球番付」を執筆した。調べてみたところ、それはそれで興味深かったが、なにせ100年前の中等学校時代の記録も合算している。それだと古参校、伝統校がズラッと並ぶし、番付はなかなか変動しないものである。

 第101回開幕前時点での、春夏通算勝利数の高校野球番付の横綱、三役はこうなっている(東は東海以東、西は関西以西、ただし三重は関西)。回は、優勝回数。


 横綱 中京大中京(愛知)133勝/11回
 大関 県岐阜商(岐阜)87勝/4回
 関脇 東邦(愛知)75勝/5回
 小結 早稲田実(東京)66勝/2回

西
 横綱 龍谷大平安(京都)103勝/4回
 大関 PL学園(大阪)96勝/7回(休部)
 関脇 松山商(愛媛)80勝/7回
 小結 天理(奈良)75勝/3回

通算だと大阪桐蔭はまだ西前頭2枚目。

 いわゆる古豪、名門という高校が名前を連ねている。その一方で今夏の出場こそ逃したものの、近ごろ圧倒的に強い大阪桐蔭(大阪)の名がない。この番付において、大阪桐蔭は63勝/8回で西前頭2枚目だ。

 高校野球は春夏連覇しても1年に11勝しかできないから、三役入りはどんなに頑張っても2021年以降になってしまう。

 これは実勢を反映していないので、新たに平成年間に限定した番付を作ってみた。勝利数が同数の場合は、勝率が高い方を上位に。学校名が変更になっている場合は、最新の名称とした。

大阪桐蔭と智弁和歌山が同じ勝ち数。

 高校野球番付は、どうしても「西高東低」になる。平成番付も特に三役以上で勝利数の不均衡が起こっているが、東西をまぜこぜでランキングするより、こちらのほうが番付らしくなるので、このままにする。

 最多勝はご存知、大阪桐蔭(大阪)と智弁和歌山(和歌山)の63勝。しかし大阪桐蔭が63勝12敗、勝率.840、優勝8回に対して、智弁和歌山は63勝31敗、勝率.670、優勝3回。平成最強校は文句なしに大阪桐蔭だ。

 続くのは明徳義塾(高知)。近年、高知ではこの学校が夏の甲子園出場をほぼ独占している。過去を振り返っても「星稜(石川)松井秀喜への5連続敬遠」など何かと話題の多い学校だ。

東は横浜と仙台育英がともに41勝。

 東では横浜(神奈川)と仙台育英(宮城)が41勝で並ぶが、勝率の差で横浜。横浜高校は、鈴木尚典、多村仁志、松坂大輔、筒香嘉智、柳裕也と平成年間を通じてコンスタントにトップクラスの選手を輩出してきた。

 仙台育英は勝利数が示す通り、毎回いいところまで行くが優勝は未経験だ。2校に続く三役は、帝京(東京)、常総学院(茨城)となる。ちなみに通算成績では東西両横綱の中京大中京(愛知)と龍谷大平安(京都)は、平成に限定すれば平幕に落ちる。

PLは甲子園に出てはいたのだが……。

 筆者の記憶では、PL学園(大阪)は、平成に入ってからも十分に強いと思っていたが、実は平成年間は28勝はしたものの、決勝戦には一度も出場していないのだ。

 最後の優勝は、KK(桑田真澄、清原和博)世代の2学年下、野村弘樹、立浪和義、片岡篤史らが春夏連覇した1987(昭和62)年。あの当時は、これからも「PL時代」が続くのかと思ったが、平成に入ってからは甲子園には出場するものの、絶対的な存在ではなくなった。

 2004年の大阪府大会は、決勝でPL学園と大阪桐蔭が当たり、4−4で決着がつかず、引き分け再試合の挙げ句13−7でPLが勝った。しかしこの時期から大阪桐蔭は、総合力でPLを凌駕していく。そして2014年大阪府大会は再度決勝で両者が当たるが、9−1で大阪桐蔭が大勝した。

 PL学園硬式野球部は2016年に休部。大きな衝撃を与えた。ただしPLはボロボロになって休部したわけではなく、2015年も大阪府大会では準々決勝まで進出している。

「公立校の衰退」に拍車がかかった。

 昭和時代と大きく様相が異なっているのが「公立校の衰退」だ。通算の番付では三役以上に東大関・県岐阜商(岐阜)、西関脇・松山商(愛媛)と公立校が名を連ねているが、平成番付では、福井県立福井商が東の幕尻に顔を出しているくらいで、苦しんでいる。

 PL学園以降、私学の中には「甲子園」を看板にして知名度アップを図る高校が全国にたくさんできた。こうした高校は練習環境や寮などを充実させ、全国から多くの球児を集めるようになった。

 その代表格が大阪桐蔭だ。また私学の中には、龍谷大平安(旧名・平安)のように大学の系列校になって大学名を冠するところもできた。こうした学校も野球に力を入れている。

 少子化や、他のスポーツの選択肢の増加に加え、新興私学の躍進もあって、一定の予算しかない公立校は昨今、なかなか甲子園に出場できなくなっている。部員数も減少し、部員数が9人を割り込む学校も生まれている。

 日本高野連は2012年から「連合チーム」の公式戦参加を許可したが、その背景には公立校の苦境があるのだ。

金足農、大船渡のような場合……。

 それだけに昨年の金足農(秋田)や、今年の大船渡(岩手)のように、好投手を擁した公立校の躍進が注目を集めるが、乏しい戦力のためにエースに負担がかかる。ギリギリの戦力での戦いの是非が、「球数制限」議論の高まりの中、大きな話題になっている。

 公立校の「普通の野球部」が、強豪私学に伍して戦えるようにするために――。試合日程やリーグ戦の導入など、高校野球の改革が必要になってきていると個人的には思う。

令和の高校野球はどんな進化を?  

 ここまで平成の番付を振り返ってきたが、「令和の高校野球」はどうなるのか。  大阪桐蔭、智弁和歌山、横浜などの強豪私学が引き続き強そうなイメージだが、おそらく、異なるカテゴリーの学校が台頭するだろう。

 注目すべきは「通信制高校」だ。従来とは全く異なる教育環境の通信制高校では、球児たちに思い切った練習環境や時間を提供できる。すでに地球環境(長野)、クラーク記念国際(北海道)が甲子園出場を果たしている。こうした高校がメリットを最大限に生かして従来の名門校に挑戦する可能性はあるだろう。

 さらに今、急速に進んでいる国際化によって、海外の血を引く高校球児が増えるだろう。すでに乙坂智(DeNA)、オコエ瑠偉(楽天)などがプロでも活躍しているが、今後はメジャー流の野球を取り入れた高校が、従来の「高校野球」とは違うスタイルの野球を展開するかもしれない。

 令和の「高校野球番付」がどんなものになるのか、想像するのも野球ファンの一興ではないだろうか。

文=広尾晃

photograph by Koh Hiroo