2020年シーズンにプロ10年目を迎える北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹が、自主トレーニングの合間に単独インタビューに応じた。近年は一軍で結果の出ない苦しいシーズンが続くが、この状況をどのように受け止めて野球に取り組んでいるのか。(聞き手:田中大貴、撮影協力:トータル・ワークアウト六本木ヒルズ店)

――2019年はオープン戦から好調で、開幕戦でもリリーフ登板して1イニング無失点で逆転勝利につなげました。

 シーズンの最初は良かったと思います。ボールの精度も、投げている感じも。「これで1年、やっていけるかもしれない」という手応えがありました。

――オープナーやロングリリーフといった今までと違う起用法もありましたが、どのように感じていましたか。

 2月、キャンプに入るときに「こういうポジションがある」と伝えられて、大きなチャンスをもらえたと思いました。今の自分のボールでは、一軍で先発して7、8回まで抑えるのは難しくなっていますけど、打順ひと回りを抑えて、それを成功だと言ってもらえるポジションを与えられたので。その戦術を考えてくれた、栗山(英樹)監督には感謝しています。

――「打順ひと回り」を抑えるために最初から全力で行くのか、3イニングのペース配分をするのか、その判断は難しくなかったですか。

 準備の仕方は先発と同じでしたが、登板したら中継ぎのつもりで最初から全力で投げました。実際にやってみるとそう簡単にはいかなかったですけど、このポジションがなくなったら自分が野球を続けるのは難しくなると思っていましたし、フィットしなければならないな、と。

オフに着手した「体幹を使って投げる」。

――その後は調子を落としてしまいましたが、好調を維持するのは難しかったですか。

 自分が投げているボールが一軍で通用するかどうかのボーダーラインはわかっていて、シーズン当初はボーダーよりも上にいたんです。それが疲れが溜まってきたり、ボールに指が掛からなくなってきたときにボーダーラインの下に行ってしまうという……これは技術というより、コンディショニングの問題でした。

――具体的にはどの部分のコンディションですか。

 やっぱり、肩ですね。2012年に故障したこともあるかもしれませんが、キャンプから飛ばし過ぎると肩のスタミナに影響してくるなと。キャンプから結果を残さなければならない立場が続いているので、どうしても最初から飛ばさないといけないんですけど。

――それをわかった上で2020年シーズンを迎えるわけですが、どのように対策していますか。

 そのためにこのオフは肩のスタミナも上げつつ、肩に頼らない、体幹を使って投げるということに取り組んで、キャンプでもしっかりとケアをしていきたいと思っています。

――このオフの自主トレでは「トータル・ワークアウト六本木ヒルズ店」に新設された、動作を解析し、トレーニングにすぐ反映できる「バイオメカニクスステーション」を使っています。

 今まではジムで身体を作ってから、グラウンドに行って試すということにもどかしさを感じていましたが、ここではトレーニングしてからすぐに投げて足りない箇所を知ることができるので、このスピード感でできるのは嬉しいですね。

イチロー、同期・大石の引退。

――2019年は自主トレをともにしていたイチローさんが引退しました。最後の試合を見てどのようなことを思いましたか。

 自分の知らない時代の、王(貞治)先輩や長嶋(茂雄)さんが引退するときもこういう感じだったのかなという……ひとつの時代の終わりを目の当たりにして、その光景を見られたことにも価値があると思いましたし、選手としてイチローさんと一度は対戦したかったという心残りもありました。

――イチローさんとの練習で印象に残っていることは。

 バッティングがすごいのはもちろんなんですけど、身体がしなやかで、こんなにボールの出どころが低くて強い球を投げられる人がいるんだ、と感じました。

――早大で同期だった大石達也投手も引退しました。

 うーん、自分も人のことを言っていられない立場なので……大石が引退すると聞いたときはより一層、緊張感が高まりましたし。一緒に戦ってきた仲間でありライバルなので、この気持ちをどう表していいのかわからないです。

――30代に入って、結果が出ないと引退が頭をよぎったり、焦りが生まれたりしませんか。

 もちろん、結果も出したいし、最後の最後まで野球を続けたいと強く思っています。ただ、最近は野球と自然に向き合えていると感じます。いつ辞めなければならないんだろうと怯えながらやっているのではなくて、大好きな野球ができることが練習中も身に沁みています。

――その境地に至るまで大変だったのではないですか。

 言葉で表現するのは難しいんですけど、自然とそういう気持ちになりましたね。確かにここ数年は焦りの方が大きかったので、それは今までになかった不思議な感情でした。これまでは苦しいばかりでしたが、このオフは野球がすごく楽しいと思えています。

「気持ちはずっとルーキーのまま」

――プロ10年目を迎えますが、球界での自らの立ち位置をどのようにとらえていますか。

 まだまだトライしていきたいですし、結果を出さなければいけない立場でもあるので、気持ちはずっとルーキーのままです。その中でも、ここ数年は「自分がプロ野球選手である意義は何だろう」と考えるようになりました。自分が世の中に与えられる影響って何だろうなと。

――「斎藤佑樹」であることを生かせるのではないかと。

 プロで実績は残せていませんが、アマチュア時代に名前を知ってもらえたので、球数制限や過密日程の問題など、自分じゃなければ発信できないメッセージもあるんじゃないかと、そういうことも考えていかなければいけないと思っています。

――このオフも野球教室や医療従事者に向けた講演会など、各種のイベントに積極的に参加しています。

 野球教室については、僕たちが育てられてきた野球を今後も継続して、子どもたちに興味を持ってもらえる分野にしていきたいという思いがあるので。講演は、野球の現場と医療関係の方々がコミュニケーションを取って、選手の身体により良いものを提供できるようになればいいと思って引き受けました。意外と現役選手の声を医療関係の方が聞く機会はないんだと思いましたし、僕も球数や日程の問題について、医療の観点からどう見えているのか知りたいことが多かったので、とても良い機会でした。

――最近の子どもたちの野球熱はどのように映っていますか。

 野球教室に行けば、子どもたちが野球している姿はみんな楽しそうですよ。これだけいろんな娯楽があって、子どもたちの選択肢が豊富なのは日本にとっていいことですけど、自分が育ってきた野球もいいものですよということを伝えていきたいです。野球をやってみた上で「やっぱり違うな、ほかのスポーツにしよう」となるならいいんですけど、野球の楽しさを知る機会が減るのはもったいないことですし、それは僕らにできることかなと思いますね。

――1月には早大の先輩、和田毅投手(福岡ソフトバンクホークス)と合同自主トレを行います。

 和田さんが気に掛けてくださって、実現しました。長く第一線で活躍されている和田さんがどういう思考で野球に取り組んでいるのか、自分の野球人生のためにも何かを得られるようにしたいと思います。

文=田中大貴

photograph by Shigeki Yamamoto