NBAのロサンゼルス・レイカーズで20年にわたりプレーしたコービー・ブライアント氏が1月26日、ヘリコプターの墜落事故で急逝しました。享年41。チームをNBAチャンピオンに5回導いた、バスケットボール史上に残るスーパースターの死を悼み、引退した2016年に配信した有料記事を特別に無料公開します。

 立っているのがやっとなほど疲れきったコービー・ブライアントのもとに、レイカーズのチームメイトたちが、跳びはねるように集まってきた。

 4月13日、ブライアント現役最後の試合の終了間際のこと。駆け寄ってきたのは、共にコートに立ち戦っていたルーキー、デアンジェロ・ラッセルとラリー・ナンス・ジュニア、そして2年目のジュリアス・ランドルとジョーダン・クラークソンの4人。いずれも、ブライアント引退後のレイカーズの再建を担うことを期待されている若手選手たちだ。

 両手を大きく広げて彼らを受け止めたブライアントは、彼らに「ありがとう」と感謝の気持ちを告げたという。

 若手選手たちにとって、長く、苦しいシーズンだった。シーズン82試合で勝ったのは僅か17試合。これは、ランドルがケンタッキー大時代に約半分の試合数であげた勝ち星、29を大きく下回る。勝てない苦しさに加え、NBAの世界の壁、その中での自分の力の発揮のしかた、チームでの役割など、世間の注目が引退直前のブライアントに集まる裏で、様々なことに悩み、苦しんだ。

 しかし、最後の試合で、そんな悩みがすべて吹っ飛んだ。

 クラークソンは言う。

「最後の試合で、僕らはみんな、自分のことを心配するのをやめて、コービーのために戦った。それが楽しかった」

 若者たちは進んで裏方となり、スクリーンをかけ、パスを回し、リバウンドを取った。チームメイトたちのサポートを受けたブライアントは、実に50本のシュートを打ち、60点をあげ、そしてチームを勝利に導き、会場を熱狂に包んだ。

 会場を埋めたファンの熱狂も、若者たちの記憶に強く焼き付けられた。プレイオフを逃したチーム同士の試合だったのに、まるでNBAファイナルであるかのように熱い声援を送り、ブライアントの後押しをする。それこそがチームの歴史の積み重ねの証だと感じたという。

「このチームは、それだけ成功を重ねてきた。ファンは成功を期待しているんだ」とラッセル。

 次は自分たちの力で、レイカーズのファンを熱狂させ、再び歓喜を味わいたい。若者たちは、みんな、心の底でそう誓っていた。

文=宮地陽子

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