日本の男子ゴルフツアーは1月第3週、今年も東南アジアでスタートした。

 SMBCシンガポールオープンがアジアンツアーとの共同主管競技として、日本の開幕戦となって5年目。2020年はオリンピックイヤーということで、前回2016年リオデジャネイロ五輪のメダリスト3人が招待選手として出場した。

 優勝したのは当時銅メダルを米国にもたらしたマット・クーチャー。1月第1週から2試合続けてハワイでプレーしてから、海をわたってタイトルをかっさらっていくのだから、実力は流石としか言いようがない。

 最終日は一時的に4ストロークあったリードを失い、バックナインで立て直して後続を退けた。PGAツアーで9勝を挙げているクーチャーからすれば、あるいは一部のファンからすれば、アジアと日本のフィールドは見劣りするのかもしれない。だが、最終ホールで何度もガッツポーズを繰り返す姿を見ていると、彼自身がそんな安っぽい心構えでプレーをしていないことが分かる。

 優勝すること、一番になるということは、いつどこであろうと尊い。

メジャー切符を手に入れた木下。

 この大会は7月の全英オープンの出場権がかかる試合のひとつだった。日本勢で奮起したのが、28歳の木下稜介。シード選手として2年目のシーズンのはじめに6位という好結果を残し、メジャー切符を手に入れた。1991年7月生まれは松山英樹、石川遼と同じ学年。大卒後にツアーに飛び込み、努力を重ねてようやく芽が出てきたという印象だ。

「正直、全英の切符がかかっていることを試合前は知らなくて。3日目に記者の方に言われて、そういうのもあるんだ……って」と振り返った。

 大会期間中に突然降りかかってきたプレッシャーともうまく付き合った結果でもある。舞台はアジアナンバーワンの呼び声も高いセントーサGCのセラポンコース。「難コースでどこまでできるか不安だった。世界ランカーがいる試合でのトップ10入りは自信が確信になる。日本ツアーがこれから楽しみです」と充実感たっぷりにシンガポールを後にした。

 ただし……その日本ツアーの次の試合が行われるのは、だいぶ先だ。

 2試合目は4月第3週、三重県で行われる東建ホームメイトカップ。年末年始に1カ月の充電期間を過ごして新シーズンを迎えたと思ったら、すぐにまた“オフ”。選手たちは再び約3カ月の空白期間の真っただ中にいる。

職場確保に奔走する日本人選手たち。

 この間、日本で試合がないからといって、彼らがみな休養モードに入っているかと言えばそうでもない。

 先の木下は2月、再び東南アジアに行く。「アジアンツアーのQTを受ける」つもりだという。2020年の出場資格を争う予選会が現在タイで進行中。同月下旬の5日間にわたる最終ステージで結果が決まる。こちらには宮里優作をはじめ、若手選手もエントリーを予定している。

 実はすでにアジアに進出し、春先の職場を確保している日本のシード選手もいる。昨年、ダイヤモンドカップで優勝した浅地洋佑、パナソニックオープンを制した武藤俊憲。彼らが勝った試合はいずれも国内で開催されたアジアンツアーとの共同主管競技で、両方のツアーのシードを確保している。

「今年はいろいろ行こうと思うよ。せっかく出られるし」と話す武藤は3月に42歳になる。同じ月に行われるマレーシアオープン出場などを予定。浅地に至っては「3連戦、4連戦くらいになるかもしれない」という。こうなると、1年に数あるトーナメントのなかでも「どの試合で優勝するか」というところは、設定された賞金額が高いか低いかとはまた別の重要なファクターになりうる。

今平も、石川もスポット参戦へ。

 昨シーズン、賞金ランキング上位で終えた選手たちの動きも活発だ。

 賞金王になった今平周吾は1月米ツアー、欧州ツアーにスポット参戦。ランク2位だったショーン・ノリスは欧州ツアーで奮闘している。3月末時点で世界ランキング50位に入れば、4月のマスターズに出場できる。

 日本で賞金ランク7位、アジアンツアーで1位だったタイのジャズ・ジェーンワタナノンドは日・亜、さらに欧州ツアーのシードを持っており、休む暇がなさそうだ。

 そして石川遼も、2月中旬以降に米ツアーのスポット参戦を計画している。

膠着状態が続く国内ツアーの試合数。

 明確な四季がある日本では、ゴルフシーズンは冬になれば終わっていた。けれど移動や通信手段の発達で、世界の大きさはもう一昔前とは違う。

 日本男子ツアーの2020年シーズンは、前年比で2試合増えた一方で、1試合が撤退。もうひとつ、ZOZOチャンピオンシップが賞金ランキング対象外となった。昨年12月末の日本ゴルフツアー機構の説明では、他大会との賞金額の乖離が大きいことが原因だという(ZOZOは総額で約10億7250万円、国内ツアー大会の最高額は日本オープンの2億1000万円)。ファンはさておき、スポンサーの意見を尊重した決定だった。

 というわけで賞金ランク加算大会は結局、前年と同じ25大会。試合数の増減はここ数年、膠着状態が続いている。

 そうであれば、もはや選手側は新たな職場確保のため、腕を磨くため、自ら海外との接点を求める姿勢が必要になる。一部のスター選手を除いて、米国や欧州ツアーでプレーする20代、30代の選手たちは多くが年間30試合前後に出ているのだ。

 現況をその場で嘆いているばかりか、一歩を踏み出すか。選択はプレーヤーにゆだねられるのもゴルフである。

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文=桂川洋一

photograph by Yoichi Katsuragawa