現代野球で重要視されているのは、終盤のリードをしのぎ切るリリーフ陣の存在だ。

 昨年、3年連続日本一になったソフトバンクの49セーブはリーグ1位で、137ホールドもリーグ3位という数字だった。強力打線を押し立て2年連続リーグ優勝を飾った西武とは日本シリーズ出場をかけたCS(クライマックスシリーズ)を戦ったが、7回以降の失点はわずかに2。それに対して西武の失点は12だった。

 勝利の方程式を組み立てられなかった西武と、7回以降に甲斐野央、モイネロ、森唯斗を繰り出すソフトバンクリリーフ陣との差を感じないわけにはいかないだろう。

長く活躍するリリーフは貴重。

 しかし、その勝利を左右するリリーフ投手の選手寿命は、実に短い。

 2017年に日本記録となる54セーブを挙げたサファテの全盛期はソフトバンク時代の'14〜17年の4年間で、'18年以降の登板は6試合。

 他チームを見ても、'08年育成ドラフト5位でプロ入りした西野勇士(ロッテ)は'14〜16年に153試合に登板して86セーブを挙げたが、'17年以降は4勝6敗2セーブ5ホールドにとどまり、比嘉幹貴(オリックス)は'14年に62試合に登板、20ホールドを挙げて優勝争いに貢献したが、'18年に復活するまでの3年間は32試合の登板にとどまっている。黒木優太(オリックス)、福山博之(楽天)はリリーフ投手として脚光を浴びながら今季は揃って支配下登録を外れ、育成契約に甘んじている。

 つまり、リリーフ投手は1〜4年の全盛期を過ぎるとそれ以降、急激に成績を落とす傾向にある。

 松井裕樹(楽天)、山崎康晃(DeNA)は'15〜19年の5年間、宮西尚生(日本ハム)は'08〜19年の12年間、第一線で活躍しているが、彼らは例外である。ちなみに松井は今年から役割を先発に替えた。チーム事情で逸材を潰してはいけないという好見本だが、そういう役割転向はめったに行われない。'09、'10年に70試合以上に登板した攝津正(元ソフトバンク)も3年目からは先発に転向、'12年に最多勝と沢村賞を獲得している。これもまた珍しい例だろう。

即戦力が求められるリリーフの補充。

 リリーフ投手の短い選手寿命はドラフトにも影響を及ぼす。そのため、統一ドラフトになった'08年以降、リリーフの素質が見込まれた選手が数多く指名されているのだ。検証してみよう。

2008年
攝津正(ソフトバンク5位)、谷元圭介(日本ハム7位)

2009年
今村猛(広島1位)、比嘉幹貴(オリックス2位)、大谷智久(ロッテ2位)、増井浩俊(日本ハム5位)

2010年
澤村拓一(巨人1位)、福山博之(横浜6位)、中崎翔太(広島6位)

2011年
田島慎二(中日3位)、益田直也(ロッテ4位)、海田智行(オリックス4位)、嘉弥真新也(ソフトバンク5位)

2012年
石山泰稚(ヤクルト1位)、高橋朋己(西武4位)、公文克彦(巨人4位)

2013年
秋吉亮(ヤクルト3位)、三上朋也(DeNA4位)、岩崎優(阪神6位)

2014年
山崎康晃(DeNA1位)、石川直也(日本ハム4位)

 2015年以降は割愛するが、この流れは途絶えることなく現在まで続いている。

 リリーフの補充は緊急性を要するので即戦力が求められ、大学生と社会人が毎年のように指名されているのは過去のドラフトを振り返ればすぐわかる。

 昨年40イニング以上に登板したパ・リーグの日本人リリーフ投手は25人(次ページ参照)。大卒5人、社会人出身14人、高卒6人という内訳で、ドラフト指名順位は1位=5人、2位=5人、3位=4人(大・社ドラフト3巡目の青山、宮西含む)、4位以下=11人である。リリーフ投手の活躍が見込まれているのは、“4位以下の社会人”ということがここでわかる。

 この状況下で異色なのがソフトバンクである。高卒1位の高橋純平と大卒1位の甲斐野央がいる。リリーフの寿命が短いからすぐに使えそうな社会人をドラフト下位指名で補充するという対症療法ではなく、強力なリリーフ陣を作り上げるため計画的にドラフト戦略を練っている、という印象なのだ。

 40イニング以上投げたリリーフ投手の各種成績を記した別表を見てほしい。

40回以上登板のリリーフ投手。

<西武>
平井克典(5位)
82.1回、防御率3.50、奪三振率7.21、与四死球率4.15
増田達至(1位)
69.2回、防御率1.81、奪三振率9.56、与四死球率1.29
佐野泰雄(2位)
67.2回、防御率4.39、奪三振率5.19、与四死球率4.79
マーティン ※退団
41.2回、防御率3.67、奪三振率7.77、与四死球率7.77

<ソフトバンク>
モイネロ
59.1回、防御率1.52、奪三振率13.04、与四死球率4.70
甲斐野央(1位)
58.2回、防御率4.14、奪三振率11.20、与四死球率5.83
森唯斗(2位)
53回、防御率2.21、奪三振率10.02、与四死球率2.55
松田遼馬(5位)
52回、防御率3.81、奪三振率9.87、与四死球率6.06
高橋純平(1位)
51回、防御率2.65、奪三振率10.24、与四死球率3.88
椎野新(4位)
46回、防御率3.13、奪三振率9.59、与四死球率6.46

<楽天>
松井裕樹(1位)
69.2回、防御率1.94、奪三振率13.82、与四死球率3.23
森原康平(5位)
64回、防御率1.97、奪三振率9.14、与四死球率2.67
青山浩二(大3巡)
53.1回、防御率2.70、奪三振率6.08、与四死球率3.04
ブセニッツ
51回、防御率1.94、奪三振率7.94、与四死球率4.41
ハーマン ※ロッテ移籍
47.1回、防御率3.04、奪三振率9.32、与四死球率3.04
宋家豪
45.1回、防御率2.18、奪三振率7.94、与四死球率4.57

<ロッテ>
益田直也(4位)
58.2回、防御率2.15、奪三振率8.59、与四死球率3.68
酒居知史(2位) ※楽天移籍
57.2回、防御率4.37、奪三振率9.36、与四死球率4.06
チェン・グァンユウ
57回、防御率3.63、奪三振率7.11、与四死球率4.58
東條大樹(4位)
52.1回、防御率3.78、奪三振率9.11、与四死球率4.82

<日本ハム>
玉井大翔(8位)
62回、防御率2.61、奪三振率4.94、与四死球率3.34
堀瑞輝(1位)
60.1回、防御率5.22、奪三振率9.10、与四死球率3.13
石川直也(4位)
54.1回、防御率3.31、奪三振率12.42、与四死球率2.82
公文克彦(4位)
52.1回、防御率3.96、奪三振率5.33、与四死球率3.27
秋吉亮(3位)
51.2回、防御率2.96、奪三振率8.36、与四死球率3.66
宮西尚生(大3巡)
47.1回、防御率1.71、奪三振率9.70、与四死球率1.71
西村天裕(2位)
44.2回、防御率3.83、奪三振率11.08、与四死球率4.63

<オリックス>
増井浩俊(5位)
50.1回、防御率4.83、奪三振率11.44、与四死球率4.47
近藤大亮(2位)
49.2回、防御率3.44、奪三振率11.05、与四死球率4.17
海田智行(4位)
49回、防御率1.84、奪三振率6.06、与四死球率2.39
山田修義(3位)
43回、防御率3.56、奪三振率9.21、与四死球率3.77
※註:大3巡とは分離ドラフト時の「大学人・社会人ドラフト3巡目」のことで、ここでは3位と同じ評価をした。

驚くべきソフトバンク勢の奪三振率。

 奪三振率、与四死球率とは1試合完投(9イニング)したときの奪三振と与四死球を換算したもので、奪三振率は9以上、与四死球率は4未満が一流の目安と言っていい。

 ここで注目したいのが奪三振率だ。リリーフ投手として40イニング以上投げた中で、奪三振率「9」以上を挙げた投手はソフトバンクの6人が最高。以下、日本ハム4人、楽天、オリックス各3人、ロッテ2人、西武1人と続く。ソフトバンクの奪三振率が圧倒的に高いことがわかる。

 奪三振の多さはストレートが速く、勝負球の変化球にキレがある証拠である。ソフトバンクの森、モイネロ、甲斐野、高橋はいずれもストレートは150キロ超え。モイネロ、甲斐野は「160キロに迫る」と形容しなければ凄さが浮き彫りにならない。

 彼ら以外でも実績のある石川柊太、椎野新、松田遼馬、加治屋蓮、川原弘之が150キロを超え、田中正義、杉山一樹、古谷優人、尾形崇斗(育成契約)はそれ以上の速球派である。これらのことから、現代野球に適合した人員をしっかり揃えているソフトバンクが投手力に関しては文句なくナンバーワンと言っていいだろう。

文=小関順二

photograph by Kyodo News