東京ヤクルトスワローズの春季キャンプ地、浦添市民球場へは、沖縄唯一の鉄道である「沖縄都市モノレール=ゆいレール」が延伸したことで、新駅の浦添前田駅から徒歩で行くことが可能になった。20分ほどかかるが、少しアクセスが良くなったのだ。このあたりは浦添城や安波茶橋など、歴史の宝庫でもある。

 今オフはバレンティンがソフトバンクに移籍したが、MLB時代、守備の名手として知られたスター選手のアルシデス・エスコバーが加入した。DeNAのセットアッパー、エドウィン・エスコバーのいとこだ。

 筆者は早速、内野守備練習を見たが、送球がグラブに吸い込まれていくようなフィールディングはモノが違うと思った。

 同じくメジャーを経験した青木宣親は今年も元気だ。外野で大きな声を上げている。一昨年、NPBに復帰した時も春季キャンプを見たが、青木は外野から「Attaboy!(アラボーイ、やるね!)」と声をかけていて、格好いいな! と思ったことを覚えている。

リーを抜いて生涯打率1位の座に。

 青木は2018年5月、NPB史上に残る選手になった。打数が4000に達して、NPBの公式サイトによる「生涯打率ランキング」のトップに立ったのだ。

<2019年オフ時点の生涯打率5傑。()は実働期間。4000打数以上の打者が対象>

1 青木宣親 .326(2004-)
4884打数1591安打

2 L.リー .320(1977-1987)
4934打数1579安打
3 若松勉 .31918(1971-1989)
6808打数2173安打
4 張本勲 .31915(1959-1981)
9666打数3085安打
5 ブーマー.W .317(1983-1992)
4451打数1413安打

 青木とリーの打率差は5厘7毛3糸。まだかなりの差があるように思うが、仮に今季450打数として116安打(打率.258)以下だと、この差はなくなり、リーに逆転を許してしまう。

 昨年の青木は489打数145安打の打率.297。惜しくも3割は割り込んだものの、セ・リーグ打率7位は立派な成績だ。春季キャンプでも故障なくメニューをこなしているし、大丈夫だとは思う。

同学年の鳥谷、糸井という存在。

 しかし青木は1月5日に38歳になった。野球選手としてはかなりの高齢だ。

 青木と早稲田大学時代の同級生だった鳥谷敬は、阪神を退団してまだ所属が決まっていない。鳥谷は37歳の2018年から打率が急落し、2019年は控えに回ってしまった。鳥谷は内野手、青木は外野手、守備の負担は違うとはいえ、打者としてはピークを過ぎているのは否めない。

 一方で、青木よりもさらに元気な同学年もいる。同じ2003年ドラフトで、近畿大学から日本ハムに入団した糸井嘉男だ。彼は昨年、阪神で打率.314、セ・リーグ打率3位だった。彼も外野手、抜群の身体能力で、守備や走塁でもいいところを見せている。青木にとってはいい刺激になるライバルだろう。

ヤクルト移籍1年目で打撃開眼の辻。

 ではこの年代でもなおハイアベレージを残した選手はどれくらいいるのか。

<38歳以上を迎えるシーズンでの打率10傑>

1 岩本義行 1951年 39歳(松竹)
率.351(422打数148安打)
2 落合博満 1991年 38歳(中日)
率.340(374打数127安打)
3和田一浩 2010年 38歳(中日)
率.339(505打数171安打)
4 辻発彦 1996年 38歳(ヤクルト)
率.333(400打数133安打)
5 L.リー 1986年 38歳(ロッテ)
率.3313(483打数160安打)
6 A.カブレラ 2010年 39歳(オリックス)
率.3309(408打数135安打)
7 G.アルトマン 1972年 39歳(ロッテ)
率.328(384打数126安打)
8 T.フェルナンデス 2000年 38歳(西武)
率.327(370打数121安打)
9 戸倉勝城 1955年 41歳(阪急)
打率.321(480打数154安打)
10 G.アルトマン 1971年 38歳(ロッテ)
打率.320(388打数124安打)

 アラフォーになっても元気な選手は結構いるのだ。

 そうそうたる顔ぶれが並んでいるが、意外なのは現西武監督の辻。どちらかというとつなぐ打者で、バントや盗塁の名手という印象があるが、西武からヤクルトに移籍して1年目の1996年にキャリアハイの.333をマークしている。大器晩成というべきか。

最高齢の首位打者は36歳シーズン。

 不思議なことに、これだけ高打率の記録が並んでいながら、当該シーズンの打率順位は岩本、落合、辻、1972年のアルトマンの各リーグ2位が最高。首位打者はいなかったのだ。

 首位打者の最高齢は、1979年のミヤーン(大洋)、1989年のクロマティ(巨人)、2008年のリック(楽天)の、36歳となるシーズンだ。

 青木は今季、「最高齢での首位打者」を目標の1つに設定してもいいと思う。

ホークス柳田が実はライバル?

 通算打率での当面のライバルは前述のとおり、1980年代に活躍したレロン・リーだが、潜在的なライバルとなる可能性がある現役選手がいる。

 今年からチームと7年契約を結んだソフトバンクの柳田悠岐だ。

 柳田は現在、3003打数958安打の打率.319。昨年こそ左膝裏損傷で、シーズンの大半を棒に振ったが、それ以前の5シーズンの打率は.317、.363、.306、.310、.352と確実に3割以上をマークしている。

 年齢は今年10月で32歳。打者としては脂の乗り切った盛りだ。ここから打率を上げてくるとともに、2021シーズン終盤には4000打数に乗って、青木と競り合いを演じるだろう。

 このコラムでは通算打率の基準が「打席」ではなく「打数」なのはおかしいと言ってきた。その考えは変わらないが、「4000打数」という線引きの前提で、こういうデッドヒートが起きるのは興味深いことではある。

 2年後、青木宣親が40歳のシーズンを迎えたとしたら、33歳の柳田悠岐とどんな生涯打率争いを繰り広げるのか。これも楽しみにしたいと思う。

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki