プロゴルフの試合に足を運んだら、どの選手のプレーを観ようと思うだろう(自粛ムードのなか、大変恐縮ですが)。

 テレビで知った顔もいいけれど、通を気取るにはたまには自分の目で“金の卵”やら“原石”も発掘してみたい。そんな衝動に駆られて、ファンがほとんど付かない組のプレーを熱心に追う、なんてことがあるかもしれない。

 ところが、空はいつの間にか厚い雲に覆われ、雨もぱらついてきた。遠くで雷の音も聞こえてきて……。

 選手たちは、スタッフの指示を聞いてクラブハウスに引き上げていく。どうやらラウンドが中断するらしいが、詳細はよくわからない。いつの間にか、ひとりぼっち。

 そんなとき、あなたはどうするでしょうか。

ゴルフ観戦特有の楽しみと欠点。

 プロゴルフの生観戦には他のスポーツにはない魅力がある。

 スタンドを除けば決まった座席がないため、来場者はどこで選手のプレーを見てもいい。プレーエリアとの境界線はフェンスやネットではなく、多くの場所が1本のロープだけ。だから息遣いがわかるほど近くでプロアスリートを観ることができるし、試合中にハイタッチをするチャンスもあったりする。

 だが一方で不自由な面も見過ごせない。

 フィールドが広大で、選手の扱うボールが選手の数だけあるため、観戦者が目にすることのできるプレーは全体のほんの一部に過ぎない。スーパープレーを実際に見られる可能性は必ずしも高くない。

 そしてこのゴルフコースの広さ自体が“不幸”を招くこともある。

 自然との闘いはゴルフというスポーツを面白くする反面、観る側にとっては大変悩ましい。好天なら最高だけど、準備を怠れば日焼けはするわ、汗は流れるわ……。

悪天候時の大会情報はどこで得る?

 それならまだいい。問題は雨風、それも試合が中断するような悪天候になるともっと厄介だ。準備よく傘を持参していたり、都合よく場内で雨宿りできたりすれば事なきを得るが、それが一時的であればまだしも、天候がさらにひどくなって2時間も3時間もストップするような事態になったらどうすべきか。

 そもそも来場者は「中断」や「中止」の情報をどこで得ればいいのか。周りにスコアを知らせる電光掲示板があったり、呼びかけをしてくれる大会スタッフがいればいいが、そう上手く事が運ぶとは限らない。

 何もこれは今に始まった問題ではない。

 たが、今も解決の糸口がない問題でもない。

 策のひとつがやはりデジタルの力を活用することだ。多くの現代人の情報収集ツールは一番がスマートフォンだと言っていい。

情報発信はツアーが管理すべき。

 アプリでもSNSでも、リアルタイムで情報を通知することはもうゴルフコースの外では常識だ。悪天候であれば、中断の経緯や再開の見通しをギャラリーがキャッチでき、その後の行動を判断できる。

 ゴルフ観戦の来場者は年齢層が比較的高いとはいえ、全世代でネットのリテラシーが今後下がる理由はない(たしかに男子メジャー・マスターズは、スマホ端末の持ち込みを来場者に禁じているが、場内は人であふれ、ボランティアスタッフももちろん豊富。素早い情報伝達がたやすいため例外的だ)。

 デジタル化を推進したとして、問題は誰がその情報を発信するか。

 プロゴルフの大会は毎試合、主催スポンサーが異なる事情があるからこそ、やはりファンが一義的にアクセスする情報源は各試合を統括するツアーが管理すべき。諸外国に比べ、プロモーション展開で立ち遅れている国内の男女ツアーに改善が求められる課題だと思う。

現場で伝わりにくいルールトラブル。

 少し逸れるが、ゴルフ観戦で少し残念に思うのが、ルールに関するトラブル処置の情報が、その場で観る人に伝わりにくいこと。

 たとえば選手がルール違反をして罰打を科されたとき、なんだかロープ内で競技委員との話し合いが行われたかと思えば、いつの間にか選手のスコアが増えている(悪くなる)ことがある。一体、何が起こったのか。その場のファンは想像を巡らせるしかない。

 野球であれば、一通り“揉めたあと”に審判がマイクを持ち、「ただ今のプレーについて……」という説明がなされ観客は納得できるが、「打つときはお静かに」が常識のゴルフではそうはいかない。なにも日本に限ったことではない。こんな状況でも即座に「○○選手は○番ホールで○のため○罰打を科されました」といった情報がデジタルを通じて発信されれば、もっとも近くで観ている人が“不幸”にならなくて済む。

リアルタイム発信を躊躇する理由は?

 ただし、現在の国内ツアーの仕組みではリアルタイムの情報発信を推進できない、躊躇してしまう事情もある。

 それが(とくに女子で)懸案事項になっているテレビ放送に関する問題。放映に関する権利がツアーに帰属しないため、まだ多くの放送が実際の試合の数時間後にディレイ中継される実態が続いている。

 テレビ放送より先に結果を知らせてはならない、というバイアスがかかり、ツアーの公式ホームページがスコア速報を途中でストップさせることがあるのはこのためだ。

 そうはいっても、現地に試合を観に来るファンのほうが不利益を被ってしまうのは、なんだかやるせない。

 ゴルフコースでは、天災が起きたとき人命にかかわる問題が起きるリスクも少なくない。その際、新鮮な情報はわずかでも助けになる。緊急事態を知らせる仕組みは、もはや最低限の来場者サービスではないだろうか。

 広大なフィールドで“ぼっち”をつくらない策、デジタルの世界だけでも繋がっていられるトーナメントづくりは、いずれプロゴルフを守ることにもなるかもしれない。

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文=桂川洋一

photograph by Yoichi Katsuragawa