――実はNumberがゴルフの特集を組むのは23年ぶり(416号「ミラクル・キッズの時代」)です。

石川(遼)「23年ぶり! ジャンボ(尾崎)さん以来ですか?」

――その時の表紙はタイガー・ウッズでした。

稲垣(吾郎)「そうか、タイガーか。でも女子も盛り上がっているし、今年はオリンピックもあるし」

石川「ゴルフ特集って、全ページじゃないですよね? えっ、70ページも!」

稲垣「じゃあスイングの連続写真とか、出るんですか?(笑)」

石川「稲垣さんの連続写真載せましょうよ!」

――それ、すごくいいですね(笑)。

稲垣「まあ、連続写真は冗談として(笑)。それにしてもNumberさん、23年ぶりゴルフ特集とは! そんな記念すべき号に呼んでもらえてよかった」

石川「光栄です」

予想をはるかに超えたゴルフ談義。

 発売中のNumber998号で実現した石川遼×稲垣吾郎の対談は、本編では掲載されなかった、こんな会話で始まった。

 稲垣さんは、知る人ぞ知るゴルフ愛好家だ。ゴルフを始めて15年以上で、その腕前も確か。Numberで連載されている「語ろう!2020年へ 新しい地図×Paralympic Athletes」でゴルフについて話すことも多い。

 一方の石川選手は2018年から日本ゴルフツアー選手会長を務める('20年1月から副会長に)など、アマチュア時代の'07年に15歳で鮮烈な優勝を飾って以来、第一線を走り続けている男子ゴルフ界の顔だ。昨年は3年ぶりの国内ツアー優勝を飾り、今年の東京五輪出場を目指す。

 お互いに多忙を極める中、「じっくり語り合うのは今回が初めて」(稲垣)という2人がどのようなゴルフ談義を繰り広げるのか――。

 結論から言えば、その熱気は編集部の予想をはるかに超えるものだった。

石川「稲垣さんはどんなウェア?」

 冒頭の会話は、厳密に言うと、「着座して」から最初のやり取りである。というのも、すでに対談前のフォトセッションから2人のトークは熱を帯び、再会を懐かしむどころか、撮影中の会話でゴルフクラブのメーカー名が飛び交うような状態だったのだ。

 ときにゴルフを離れて趣味の話となり、再びまたゴルフへ戻ってくる……。一向に終わる気配を見せない2人の対談は、気が付けば終了予定時間を大幅にオーバー。本編に掲載できなかったエピソードも多かった。本稿では、その一端を少しだけ紹介したい。

 プレーを楽しむのみならず、プライベートで観戦にも訪れるほど、稲垣さんのゴルフ愛は深い。その魅力は「景色も素晴らしいし、ファッションも楽しめること」だという。石川選手は稲垣さんのラウンド中のファッションについて尋ねた。

石川「稲垣さんは、どういう感じのゴルフウェアが好みなんですか?」

稲垣「暗い色が好きなので、黒が多いですね。黒いニットの中に白いシャツを忍ばせるとか。つまり普段の私服とあまり変わらない(笑)」

石川「ゴルフ場では色味の鮮やかな服を着ている方、結構多いですね」

稲垣「石川選手はデビューした頃、赤いパンツでしたよね。その影響も大きいんじゃないですか? 男子プロでは赤いパンツってイメージがなかったです」

石川「確かに、赤はそんなにいなかったですね」

稲垣「やっぱり。それは大きいと思うな。あとゴルフ場だとクラブハウスから、パターの練習場が見えますよね。ピンクとか派手めのウェアを着てる人は若い人かな、と思って近づくと、50歳くらいだったり(笑)」

石川「稲垣さんみたいに私服と同じ、という方もいれば、普段とのギャップを楽しんでいる方も多いでしょうね」

稲垣「ゴルフ場ってある種のステージ、なのかもしれない。ウェアは衣装だと捉えるとわかりやすいかもしれません。そうだ、最初お会いした時に白いポロシャツを頂いて。今もちゃんととってあります。もったいなくて着てはいないけど」

稲垣「マスターズのグリーンって」

 対談中、石川選手が最も熱く語ったのがパッティングとグリーンの相性について。

パッティングでの打ち方やグリーンの芝について話が進んでいく中で、稲垣さんが「気になる」と話したのは、マスターズが行われるオーガスタ・ナショナルGCの「グリーンの速さ」だった。

稲垣「マスターズのグリーンって大理石みたいに速い、っていう人がいますよね。あれは実際、どうなんでしょう?」

石川「いや、そんなには……」

稲垣「そこまで速くないですか」

石川「たぶんマスターズは12.5フィート(グリーンの速さを示す数値)くらいだと思います。この数値だけだと、日本にもこれに匹敵するコースはいくつもあります。ただ、マスターズは傾斜がきつい」

稲垣「だからなのか。ほら、パッティングでチョン、と打っただけでどこまでも転がっていくシーンがよくあるじゃないですか」

石川「ありますね。高低差の激しい、特殊なコース形状なので」

稲垣「生で観てみたいなあ、オーガスタは憧れです」

石川「雰囲気もすごくいいですよ。隅々まで整備も行き届いていて、ほかのゴルフ場では真似できないくらい、莫大な費用もかかっているはずです。たとえばあのコースは、冬は雪を被っちゃうんですけど、あまり長引くと芝に悪影響が出る。だから対策としてグリーンの下に暖房設備のようなものが入っているそうです」

稲垣「すごいな! なんだか高級ワインみたいですね」

今回の対談で残った悔いが1つ。

 2人がゴルフを語っている時の表情は実に活き活きとしていた。彼らのゴルフに対する愛情は、プロとアマチュアの違いはあっても、間違いなく繋がっていた。

 今回の対談で悔いが残っているとすれば、冒頭で石川選手が言った「稲垣さんのスイング連続写真」を掲載できなかったことだ。諸事情により今回は叶わなかったが、その華麗なスイングの連続写真を、次のゴルフ特集号で実現させたいものだ。もちろん、石川選手の解説付きで。

 最後に。余談だが、対談本編では文末に「(笑)」が多用されている。

 編集者として褒められたことではないのかもしれないが、仕方がなかったのだ。

 本当に、2人はずっと笑っていたのだから。

文=寺島史彦(Number編集部)

photograph by Ayako Masunaga