米国の国民的スター選手であるフィル・ミケルソンが、ずいぶんと激しい言葉でタイガー・ウッズへ宣戦布告している。

「おい、タイガー! そこへ行ってキミを倒す日が待ちきれない。ホームコースで戦いたいと言い張るなんて、ずいぶん得しているな。まあ、いいだろう。必ず負かしてやる。キミがホームコースに行くたびに、嫌な思い出が蘇るようにしてやるぜ」

 このセリフ、強面(こわもて)の選手がすごみながら口にしたら、ずいぶんと恐ろしい雰囲気になるのだろうと思う。

 しかし、言葉の主はミケルソンゆえ、なんとなくコミカルで、遠吠えのように聞こえてしまう。

 だが、それがミケルソンの良さであり、魅力でもある。だからこそミケルソンは愛され、「ウッズvs.ミケルソン」のマッチは、社会のためになるのだと私は思う。

ゴルフとNFLの超スター4人が集結。

 今週末24日の日曜日(米国時間)、TVマッチが米フロリダ州ホーブ・サウンドのメダリストGCで開催される。ゴルフ界の2大スターとNFL界の2大スターのコラボレーションによって実現する「世紀のチャリティ・マッチ」だ。

 ウッズとペアを組むのは元NFL選手のペイトン・マニング。対するミケルソンは、やはりNFL選手のトム・ブレイディとペアを組み、18ホールのチーム・マッチを行う。

 ビッグな4人がともにプレーすることで、10ミリオン(1000万ドル)超の巨額をコロナ禍の緊急支援として寄付できるのだから、米国のスーパースターたちの威力が、いかに「スーパー」であるかが伝わってくる。

 しかし、社会貢献という大きな意義はさておいて、ミケルソンは、とにかく勝つことに燃えている様子だ。

 マッチの会場となるメダリストはウッズのホームコース。5年前の改修の際に「タイガー・ティ」が設けられ、そこからプレーすれば、全長は7515ヤード(パー72)の超ロングコースになる。

 ウッズはもちろんのこと、米ツアーのパワーヒッターであるブルックス・ケプカやダスティン・ジョンソンらも、このメダリストで「タイガー・ティ」から回るのが「最高の練習だ」と絶賛している。

下馬評は「どう見てもウッズ組の勝利」。

 しかし、ミケルソンはこれまでメダリストを回ったことが一度もないそうで、コースの知識はもちろん皆無。それなのに「ザ・マッチ」の会場がメダリストに決まったのは「ウッズがホームコースでやりたいと言い張ったからだ」と苦笑している。

「まあ、いいさ。ボロクソに負かしてやる。今後、タイガーは自分のホームコースに行くたびに嫌な思い出が蘇る。それぐらいボロクソにしてやるぜ」

 そうやってミケルソンは不敵に吠えているのだが、下馬評では「どこからどう見てもウッズ組の勝利」と言われており、ミケルソンの強気の言葉はあたかも遠吠えのように受け取られている。

 何せ、ウッズはメジャー15勝、通算82勝を誇っているのに対し、ミケルソンはメジャー5勝、通算44勝だ。

 そして、ウッズの相棒となるマニングは名門オーガスタ・ナショナルとチェリーヒルズのメンバーで、ゴルフの腕前はハンディキャップ6.4。一方、ミケルソンの相棒となるブレイディが所属しているのはフロリダの秘境、セミノールGC。ハンディキャップは8.1。

 すべてが「ウッズ組の勝利」を示しているように感じられる。

「トムはパットがとても上手い」

 それでもミケルソンは勝利を信じて燃えている。

 今回のマッチは「ノー・ギャラリー、ノー・キャディ、乗用カートでプレー」とされている。前半9ホールはフォーボール形式、後半9ホールはオルタネート形式で競うことになる。

「トム(ブレイディ)はパットがとても上手い。飛距離も出るし、ショートアイアンも上手いから、僕がボールをインプレーに保ちさえすれば、後半は僕らにとってビッグチャンスになる」

「この3日間は毎日36ホール回った」

 ミケルソンの考え方は、きわめてポジティブだが、その前向きさは、しっかりとした自信と手ごたえに裏打ちされている。

 コロナ禍で米ツアーが休止となった3月半ば以降、ミケルソンは試合にこそ出ていないものの、「この2週間は、たくさん練習した。この3日間は毎日36ホール回った。調子はとてもいい。試合ではプレーしていないけど、ゴルフそのものの状態はとてもいい。だから勝てる気がしている。きっと行ける。きっと勝てると思っている」

 大会3日前の21日に現地入りして準備万端でマッチに臨むつもりだとミケルソンは、さらに意気込んでいる。

ミケルソンがウッズに勝った2年前。

 そういえば、ウッズとミケルソンの一騎打ち「ザ・マッチ」が初開催された2年前も、下馬評はウッズ勝利だったが、ミケルソンは粘りに粘り、22ホール目で勝利して9ミリオンの賞金を総取りした「過去」がある。

 ステイ・ポジティブとネバー・ギブアップ。これさえあれば、予想を覆して勝利することができる――ミケルソンがそんなお手本を示してくれたら、コロナ禍で苦しんでいる人々にとって、何よりの励みになりそうである。

文=舩越園子

photograph by AFLO