2020年大リーグ開催が、やっとのことで決まった。

 結局はそうなるだろうという大方の予想どおりだったわけだが、オーナー側やコミッショナーに対する選手会の不信感は根強く、不承不承の匂いがあちこちから立ちのぼっている。

 それでもまあ、「失われたシーズン」にならなくてよかった、というのが偽らざる感想だ。少なくとも私はそう思う。

年間60試合のシーズンは近代野球史上最短。

 開幕は、7月23日か24日のいずれかになる。

 通常のシーズンなら、サマートレードの締切日まであと1週間という時期だ。ここからスタートが切られる、と考えるのが普通だが、そうとらえるとシーズンがあまりにも短く感じられる。

 ならばむしろ、「7月下旬に入って、いまなお横一線」と考えたほうが面白くなるのではないか。

 気の持ちようで……という話だが、「よし行くぞ、残りは60試合だ」と意気込むほうがスリルを覚えられそうだ。

 それにしても、年間60試合のシーズンはいかにも短い。もちろん、近代野球史上(20世紀以降)最短だ(1981年は111試合)。

 球史をさかのぼってみると、1877年と78年のナ・リーグにようやく「年間60試合」の例が見つかる。ナ・リーグ発足が1876年だから、これが「大リーグ史上最短シーズン」だ。

 今季は、無事に完走するとタイ記録。新型コロナウイルスの感染第2波に襲われれば、もっと短くなる可能性もなしとしない。

PCR検査は1日おきに行われる。

 開催の条件は、以前からささやかれていたものと大きな変化はない。

 DH制は両リーグで採用される(2021年以降は未定)。救援投手は、最低限3人の打者を相手にするか、あるいは登板したその回を締めくくるかしなければならない。延長戦は無死二塁からスタートして、決着を早める。

 PCR検査は1日おきに行われる。クラブハウスやダグアウトではソーシャル・ディスタンシングが求められる。

 開幕後2週間までは、ロースターが30人に拡大される。つぎの2週間は28名。以後は26名と段階的に縮小される。

 ダグアウトに入れるのは、その日の試合に出場する可能性が高い選手のみ。他の選手は、スタンドで6フィート以上離れて坐らなければならない(電子機器の携帯はもちろん禁止)。リリーヴァーは、ふたり並んでウォームアップしてはならない。

唾吐き、指なめ、手洟、乱闘は禁止。

 複数の選手が触れたボールは即交換される。唾吐き、指なめ、手洟(てばな)、乱闘は禁止。残塁していた走者は、自分自身で帽子やグラヴを取りに戻らなければならない。バットボーイやボールガールは採用しない(球団職員が代行)。

 衛生面での指示が多いことに気づかされるが、これは当然のなりゆきだろう。

「ワンポイント救援禁止」のルールは、試合時間短縮を意識してのものだが、この実効性は疑わしい。

 ロースターが拡大すれば、ブルペンフル稼働の戦術が採られるにちがいないし、残塁走者がわざわざベンチに戻ったり、ボールが頻繁に交換されたりするようだと、試合時間は確実に延びる。

ポストシーズン進出ラインは32勝程度。

 ひと足早く開幕したNPBでも、3時間を切るゲームはいまのところほぼ皆無の状態だ。2019年大リーグの平均試合時間は3時間10分だった。今季も恐らく、これと同程度の時間を要するのではないか。

 それよりも気になるのは、年間60試合のレギュラーシーズンだと、ポストシーズン進出ラインが32勝程度に設定されることだ。

 平均ペースを維持したチームよりも、ロケットスタートを切ったチーム、あるいは直線一気の追い込みを見せたチームが、このラインに到達するケースが、今季は多く見られるのではないか。

 とくにロースターが拡大される序盤の4週間は、ブルペンの充実したチームが飛ばすような気がする。具体的にいうと、レイズやパドレス。総合戦力はそれほど傑出していないが、ブルペンの充実という点では、どちらもダークホース的な存在だ。

「ドライヴイン・パブリック・ヴューイング」を検討。

 もうひとつ注目したいのは、「無観客でも選手を鼓舞できる」監督の手腕だ。

 エンジェルスのジョー・マドン、ブルワーズのクレイグ・カウンセルら「乗せ上手」の名が浮かぶが、サンフランシスコ・ジャイアンツなどは苦肉の策として、観客席にボール紙の人形を並べるという噂が流れている。

 あるいは、巨大な駐車場を擁するオークランド・アスレティックス。こちらは、ドライヴイン・シアターならぬ「ドライヴイン・パブリック・ヴューイング」を設け、映像を見ながら、球場のすぐ外から選手たちに声援を送ってもらおうという案が出ているそうだ。

文=芝山幹郎

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