私が米ツアーを取材し始めた1990年代の半ば以降、本格参戦を開始した日本人選手たちは、最初のうちは、どの試合にもまずは出場した。

 その際、誰もがまず戸惑ったのは、プロアマ形式の大会だった。開幕前のプロアマ戦ではなく、本戦そのものがプロアマ形式で行われる「AT&Tペブルビーチ・ナショナル・プロアマ」のような大会は、当時の米ツアーでは今よりずっとポピュラーで、ペブルビーチに限らず、年間5〜6試合前後がプロアマ形式の大会だった。

 そういう形式は、当時の日本人選手にはほとんど馴染みがなく、そういう大会を経験した日本人選手は十中八九、「進行が遅い」「集中できない」「有名人アマのほうが注目されて違和感がある」「ギャラリーが動きすぎる。うるさい」と不平不満を抱き、「もう出ない」「もう出たくない」と言って、プロアマ形式の大会を避けるようになった。その傾向は、以後もほとんど変わっていない。

 一方で、米ツアーで戦う米国人選手の中には、プロアマ形式の大会が「大好きだ」「アイ・ラブ・イット!」と公言している選手が多々見受けられる。

 ベテラン選手を見渡せば、デービス・ラブや故ペイン・スチュワート、ブラント・スネデカー、そしてタイガー・ウッズにフィル・ミケルソン。若手ならダスティン・ジョンソンやジョーダン・スピース。

 みなペブルビーチが大好きで、セレブリティたちを上手に盛り立て、ともに戯れながら、自身もきっちり勝利を挙げてきた。

「正義の味方」を自負する選手たち。

 スローな進行、興奮するギャラリー、普段とは異なる喧騒の中、それでも彼らが本領を発揮できるのは、おそらくは自分の立場や役割を認識し、自負しているからだ。

 ゴルフの才能、プロゴルファーという職業、米ツアーという戦いの場。すべては天からの授かりものであり、それが維持できているのは大勢の人々のサポートのおかげである。だから社会に感謝し、人々のために尽くすことはプロゴルファーとしての当然の役割であり、任務であり、責任である。

 そう思ったら自ずと体が動き、自ずと笑顔が生まれ、アマチュアやギャラリーをエンタテインせずにはいられなくなる。

 そういう姿勢や考え方を備えているかどうか。ある種の使命感に近い。見方によっては、自分を過大評価しているようにも、気負いすぎているようにも思えなくはない。

 極端な表現をすれば、「正義の味方、スーパーマン」を自負し、社会に尽くそうとしているとも言えなくはない。

 それができるし、それを好んで実践するプロアマ好きの米国人選手たち。彼らは間違いなくチャリティ活動にも余念がない。

 それは、とても興味深い現象である。

タイガーも、ケプカも、DJも。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で今年の3月半ばに米ツアーが休止状態に陥ったとき、ゴルフ界で真っ先に動いたのはタイガー・ウッズだった。

 自身のTGR財団が運営するTGRラーニング・ラボは、世界各国から優秀な子どもたちを集め、数学や物理科学、テクノロジーなどのハイレベルな授業を提供しているが、ウッズはこの授業をパンデミックで学校が閉鎖されてしまった世界中の子どもたちへオンラインで無料提供することをいち早く決めた。

 ブルックス・ケプカは米ツアー選手の中で誰よりも先に10万ドルの寄付を申し出た。ケプカの親友、ダスティン・ジョンソンも続いて10万ドルを寄付した。

 ウッズもケプカもDJも、トッププレーヤーとして社会のために何かをせずにはいられなかったのだろう。

 世界ナンバー1のローリー・マキロイや米国の国民的スター選手であるリッキー・ファウラーらは、契約先のテーラーメイドとともにチャリティマッチを開催。ウッズとミケルソンはNFLのスター選手らとともに、大規模なチャリティマッチを開催した。

 いずれも、コロナ禍において「そうすべき」「そうしたい」「そうしなければ」という使命感に燃えて起こしたアクションだった。とはいえ、義務感に縛られているわけではない。笑顔が伴い、彼ら自身も楽しみながら社会に尽くすところがミソである。

全米OPの昨年の優勝者が今年の開催地へ。

 社会貢献と言えば、まず思い浮かべるのは寄付であり、ゴルフ界ではチャリティマッチが一般的だ。

 しかし、このコロナ禍では最前線で戦う医療従事者を支援する上で、これまでとは異なる形の社会貢献が行なわれるようになっている。

 病院への支援は、寄付という形で行われることももちろんあるが、多忙をきわめるドクターやナースのために食事を提供したり、激励のメッセージやギフトを贈ったりという支援も増えつつある。

 そんな中、昨年の全米オープン覇者、ゲーリー・ウッドランドが今年の大会会場となるウイングドフット近くの病院へ、ベーグルの朝食とビデオメッセージを贈ったことが米国では大きく報じられた。

 NY郊外に位置するウイングドフットは、コロナ感染が最も激しかったエリアにある。今年の全米オープンは、すでに本来の6月から9月へ延期されているのだが、6月から再開された米ツアーで選手やキャディの陽性判定が次々に出てしまっていることもあり、果たして9月に全米オープンが開催できるかどうかは定かではない。

スターには役目がある、という感覚。

 いやいや、全米オープンが開催できるかどうかもさることながら、ウイングドフットやその近郊で暮らしている人々の健康や命の無事を願い、そのために動くことは「ディフェンディング・チャンピオンである僕の役目だ」と、ウッドランドは感じている。

 かつて、愛妻が身ごもった男女の双子のうちの女の子がこの世に生まれてくることができず、ウッドランド夫妻は大きなショックと悲しみに包まれた。が、その後、医療関係者の励ましや助言を受けて立ち直ることができた。

 2019年2月には、米ツアーのフェニックス・オープン開幕前にダウン症の女子大生ゴルファー、エイミー・ブロッカーセットさんと交流し、TPCスコッツデールの名物ホールの16番を一緒にプレーして大観衆から拍手喝采を浴びた。

 そのエイミーさんの熱い応援を受けながら、ウッドランドは6月に全米オープンを初制覇。その2カ月後に元気な双子の女の子に恵まれ、幸せな家庭を築き、公私ともに充実した日々を得ることができている。

 すべては、医療従事者のおかげであり、天から授かった幸せであり、世の中へ恩返しをすることは当然である。とりわけ、今年の全米オープン開催地の病院への支援は、ディフェンディング・チャンピオンである自分の役割であり、使命でもある。

笑顔でエンターテイナーになれるか。

 我こそは、それを行なうべき、チャリティ大使であり、スーパーマンである――そう認識し、自負しているからこそ、ウッドランドは動いたのだと思う。

 そういうチャリティ大使やスーパーマンに率先してなれるかどうか。名乗りを上げることができるかどうか。それは、プロアマ戦やプロアマ形式の大会で笑顔でエンタテイナーを務めることができるかどうかでもある。

 その分れ目は、どれだけ謙虚になれるか、どれだけ感謝の念を抱けるか、どれだけ相手をリスペクトできるかである。

 人間性を磨けば磨くほど、社会へ貢献したくなり、そうせずにはいられなくなる。

 最近は「チャリティ大使」や「スーパーマン」が増えて増えて目まぐるしい――そんな現象が日本のゴルフ界でも起こることを願ってやまない。

文=舩越園子

photograph by AFLO