『Sports Graphic Number』で好評連載中の「スポーツまるごとHOWマッチ」を特別に公開します! <初出:1010号(2020年9月3日発売)、肩書きなど全て当時>

 スポーツにまつわるあらゆるモノを、値段を入口に掘り下げる新連載。記念すべき第1回は今年最大のヒット商品、マスクで決まり。マスクのために行列をつくり、もめごとまで起こるとは、いったいだれが想像したか。

 スポーツ界ではプロ野球やJリーグなどのチームが、競うようにオリジナルマスクを発売。観戦のマストアイテムとなった。中でも抜群の人気を誇るのが横浜DeNAベイスターズの『吸水速乾フェイスカバー 横浜ブルー』。

 商品開発と販売促進を担当する同球団MD部の山中勝美さんが、反響の大きさを明かす。

「最大のキャパシティで生産を続けていますが、ありがたいことに入荷即完売が続いています。ここまで売れるとは思わなかったので、現在は多くの方々に行き渡るように購入制限を設けさせていただいています」

 ベイスターズ史上、これほどリピート生産した商品は過去にはないという。

 ユニクロの『エアリズムマスク』(3枚税別990円)と比べると少々高いが、これだけ売れるのはもちろんそれだけの理由がある。

選手とファンは青いマスクで結ばれて

 他球団がマスクを売り始めたのは4月ごろ。だが『吸水速乾フェイスカバー』は6月中旬、シーズン開幕に合わせての発売となった。

「長時間着用してもストレスを極力感じない商品をつくろうと、素材や形状のリサーチにとにかく時間を費やしました。様々な素材、形状のマスクを集めて仕様を検討しました」

 ファングッズという地位に甘んじず、一般のマスクに負けない機能を目指す。このこだわりの姿勢が、ファンに支持されたのだ。

 もっとも山中さんは、ヒットのいちばんの要因はチームの意識の高さにあると語る。

 当初、この商品はファン向けにつくられていたが、チームが統一マスク着用を打ち出したことで、選手の使用も考慮に入れて開発が進められた。試行錯誤を経て完成したマスクはチームでも評判がよく、とくにラミレス監督が率先して着用するようになった。

「グラウンドの体感気温が40度くらいになる夏場でも、監督や選手は積極的に着用してくれています。このことはチームの感染予防の意識の高さの表われだと思います」

 監督、選手が積極的につけることで、応援するファンもこぞって着用。ベイスターズの選手とファンは青いマスクで結ばれて、対戦相手、新型コロナと戦っている。一体感と感染防止を両立する『吸水速乾フェイスカバー』。税込800円、決して高くないと見た。

文=熊崎敬

photograph by KYODO