ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)は、口笛を吹きながらZoom会見の場に登場した。30分前に西カンファレンス決勝の第5戦でロサンゼルス・レイカーズに敗れ、シーズン終了を迎えたばかりだったが、悔しさは大きな身体のなかに閉じ込めていた。この悠々とした性格がヨキッチの魅力のひとつであり、若いナゲッツのチームに、大舞台でも怖気づかない空気を作り出していた。

 今プレイオフで“カムバック・キッズ”の名をつけられたナゲッツは、プレイオフ1回戦、そして西カンファレンス準決勝でそれぞれ、1勝3敗と王手をかけられながら、どちらも3連勝でシリーズを勝ち抜く逆転劇を演じた。特に西カンファレンス準決勝での相手は、優勝候補のロサンゼルス・クリッパーズ。強敵相手に負けたら終わりの試合が続いたが、毎試合、するりと勝利をもぎ取った。さすがに試合中に口笛までは吹かなかったが、そんな気軽さで、プレッシャーをはねのけた。

「笑って、楽しんで試合をしていただけだ」とヨキッチは言っていた。

ほかの誰からも評価されなくても

 ナゲッツのヘッドコーチ、マイケル・マローンは、若くて経験が浅いにも関わらず、粘り強く戦い続けた選手たちを称賛した。

「うちのチームは言い訳を一切せず、追い込まれるたびに解決への道を見つけ出してきた。ほかの誰からも評価されなくても、自分たちは優勝できるチームだと信じている」

 粘り強さの鍵はチーム作りにもある。若い選手たちを簡単に見放さず、信じて育て、起用し続けた。25歳のセンター、ヨキッチは俊敏さや高い身体能力を持つ選手ではない。そのためドラフトでも2巡目まで指名されなかったが、頭脳とフットワークやパスの巧さでオールスター選手、MVP候補にまで育った。

 彼の相棒、ジャマール・マレーは抜群のシュート力と突破力を持つ23歳のガード。ヨキッチとの信頼関係も厚く、お互いが活躍した後には、「彼こそ世界一の選手」と称賛し合っていた。

 今季はNBAファイナルの手前で道が途絶えたが、ナゲッツの将来は明るい。ヨキッチは言う。

「僕らはあきらめずに戦うことを証明した。来シーズンも、それが僕らのメンタリティだ」

文=宮地陽子

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