4勝11敗、B1西地区10チーム中8位。

 これが広島ドラゴンフライズの、初のB1での現在地である。広島は昨季のB2で、中地区の信州ブレイブウォリアーズと並んでリーグ最多の40勝をあげ、Bリーグ開幕から5シーズン目にしてB1の舞台に辿り着いた。

 昨季は開幕戦こそ敗れたものの、2戦目から10連勝。攻撃面でも、B2屈指の破壊力を誇っていた。しかし、これまでいくつものB2からの昇格チームがB1の壁にはね返されてきたように、広島にとってのそれも未だ厚い。

 60試合が行われる今季のBリーグのレギュラーシーズンは、11月14・15日に行われた第9節をもって1/4を消化。バスケットボールの試合に例えるなら、第1Qを終えた段階にある。

「オフェンス力があるチームを作りたい」

 チームにとって初のB1での戦いを率いる堀田剛司ヘッドコーチ(HC)が、ここまでの戦いを振り返る。

「B1とB2では、個々の選手の質が違いますよね。(B1には)日本人は中学、高校、大学と有名な学校で活躍して、アンダーカテゴリーの日本代表に入っていた選手もいる。いわば、エリートたちですから。外国籍選手も、そうですね。選手の質は、全然違います」

 広島は昨季のB2でリーグ最多の1試合平均87.8得点をあげ、今季もここまでの1試合平均得点は、リーグ20チーム中13位の78.3。90得点以上の高得点をマークしたゲームが過去3試合あるなど、オフェンスがハマると攻撃力を発揮する。アップテンポでハイスコアなゲームは、指揮官が目指しているところだ。

「つねづね、オフェンス力があるチームを作りたいと思っています。そのためには、まずディフェンスを頑張らないと、得点は獲れません。現状は悪い形のオフェンスになってしまい、タフショットを打ったあとに走られているケースが多くあります。そういうところも、直していかないといけない。攻撃的なオフェンスは継続してやっていきたいですが、それにプラスしてディフェンスも頑張る。そのバランスをしっかり取っていかないと、上位チームには勝てません」

コアメンバーは外国籍選手も含めて、全員が残留した

 B1で試合を重ねていくごとに、ここで勝ち抜くためにやるべき事項を、あらためて痛感した。それはやはり、チームで戦わねばならないということだ。

「昨季の私たちは個の力で打開できる部分が多かったのですが、それでは勝てないことを再認識しました。B1で戦うためにはチームでディフェンスして、チームでオフェンスをすることが大事だと感じています」

 広島はB1昇格にあたって、3x3日本代表候補であるアイザイア・マーフィー、アメリカの大学でプレー経験がある田渡凌を獲得し、全体的に戦力の底上げを果たした。

 しかしその一方で、選手の入れ替えは彼らを含めて3名のみ。コアメンバーは外国籍選手も含めて、全員が残留した。中心メンバーが替わっていないゆえか、ここまでの広島のゲーム運びは個で打開しようとする、昨季からのクセが抜けていないように見受けられる。

「昨季のクセが残っているところはあります」

「それについては、仰るとおりの面があるかもしれませんね」

 こう言うのは、長くキャプテンを任される朝山正悟。広島が創設されて2季目の2014-15シーズンに加入し、HCがシーズン途中に解任されチームが混乱した2017-18シーズンには、急きょ選手兼HCを務めた。今やチームのシンボリックな存在となった彼が、チームの現状を語る。

「昨季のB2でも、競った試合はたくさんありました。そのなかで、最後に個で押し切ってしまった試合が、けっこうあったんです。それをしっかり修正して、最後のプレーオフで自分たちの完成した形を見せないといけなかった。だけどコロナ禍で、リーグが中断になってしまいました。自分たちはチームとしてなにかをものにできないまま、B1の舞台に来てしまった面があるかと思います。

 仰るようにプレースタイルに昨季のクセが残っているところはありますし、もともと僕たちは個が強いチームといった面もある。ここまでは『自分がやってやろう』という気持ちが、前面に出過ぎた部分もあったでしょう。そうではなく、チームで守ってチームで得点をする。それを、徹底すべきだったと思います。その点は、昨季から引きずってしまっていました。それを、変えていかないといけません」

「個の力では、打開できない」

 指揮官、そして中心選手がともに「チームでプレーする」ことの必要性を訴えた。現在の広島が抱える課題は、明らかだ。

「全員でボールムーブすることについては、口酸っぱく言っています。個の力では、打開できない。そのことを選手たちも、だんだんとわかってきていますし、私自身もB1の選手を相手にして、1対1では攻守のズレがつくれないことをわかっています。

 ですがボールを動かすことで、相手のディフェンスが動く量が増える。そのズレを使ってペイントにドライブすることもできるし、ノーマークの選手も生まれやすい。私たちのチームはシュート力はあるので、そういうオフェンスができるようになれば、自然と得点が獲れるようになってくると思っています」(堀田HC)

コートに立つ5人が有機的に絡み合った

 直近で勝利した11月11日の京都ハンナリーズ戦は、課題解消のヒントをつかんだゲームだったかもしれない。

 試合は前半をタイスコアで折り返し、第3Qで29得点を奪って突き放すと、そのまま危なげなく勝利。前半こそ相手のゾーンディフェンスに手を焼いたが、ハーフタイムで選手も意見を出しあって、プレーを修正した。その結果、人もボールも能動的に動き、コートに立つ5人が有機的に絡み合ったプレーが多く見られた。

「ボールがただ回っているだけだと、ズレもなにも起こりません。ペイントエリアへのドライブやポストヒットだったり、ペイントタッチすることを心がけさせました。京都戦ではボールムーブの意識や、ペイントタッチをやろうという意識がつき始めていることを感じました。

 それにあの試合は、ディフェンスの強度を上げてプレッシャーをかけ、スティールなりターンオーバーを誘って、そのあとに速攻が出せた。ああいったバスケットが、継続してできるようにやっていきたい」(堀田HC)

もう一段階上のチームバスケの構築が必要

 先の京都戦で、これからチームが向かうべき道筋に光が見えたことを、朝山も感じた。

「それまではチームとして戦えず、最後に勝ち切れない試合が続いていました。京都戦はみんながそういったことを我慢して、自分が打てるシュートを、よりチャンスがある横の選手にまわしたり、もう一度ドライブをねらってみたりしていた。そういったことの共通認識が、できていたと思います。それを1試合とおして最後までできたことが、とても大きかったですね」

 勝利した京都戦の次節は、ホームでBリーグ初代王者である強豪の宇都宮ブレックスに、2戦とも完敗した。

 広島ドラゴンフライズが成長し、B1のライバルと伍していくためには、もう一段階上のチームバスケの構築が必要。それはHCと主将が、ともに認めている。

「今までと違うバスケットを見せないといけない」

「まさにそこが今後、自分たちが順位を上げていけるか、上位のチームに対抗できるかの、大きなキーになってくると思います。

 京都戦はしっかりボールが回っていて、人も動いていた。相手にとっては、守り辛かったと思います。シュートは入る、入らないがありますが、落ちてもチームとしてのリズムで打っていれば、リバウンドにも入れる。そうすると相手が走るタイミングを消せたり、そこから自分たちのディフェンスの強度をもう一段階上げることができる。あの京都戦は、そのサイクルができていました。

 勝った試合から学ぶことが大事ですし、これからたとえ負けたとしても、今までと違うバスケットを見せないといけない。そういったところを、もっともっと突き詰めていかないといけないと思っています」(朝山)

「ディフェンスもオフェンスも、チームとしてやっていくことが、これからのカギですね。細かいところまで、手を入れていかないといけない部分はあります。今後はボールムーブ、ボールシェア、ペイントタッチ、ペイントアタック。それが、私たち広島ドラゴンフライズにとって大事になってくる」(堀田HC)

B1一年生の第1Qを評定するなら、可と不可のあいだくらい

 B1とB2のレベルには、思っていた以上の隔たりがある。それを今、広島は実感していることだろう。B1一年生の第1Qを評定するなら、可と不可のあいだくらいか。

 初めて体験するB1で、現在いる場所に対応するためのチームビルドを進めている広島に、明るい話題が届いた。トーマス・ケネディの帰化申請が許可されたのだ。

トーマス・ケネディ (C)B.LEAGUE

 ケネディは2011年に、岩手ビッグブルズに入団。その後日本で複数のチームを渡り歩き、2019年に広島に加入した。得意の3P成功率は今季も39.4%と高い数値をマークし、1試合平均得点12.7はインサイドプレーヤーであるグレゴリー・エチェニケの同17.6に次ぐ、チームNo.2のスコアラー。

 年内に登録区分が外国籍選手から帰化選手に変更される見通しで、それによって広島は新たな外国籍選手1名を獲得できる。クラブ側はかねてから帰化申請が認可された場合に備えて新外国籍選手獲得の準備を進めてきた。ケネディの登録区分が変更された際に、それは速やかに実行されるはずだ。

 ケネディはチーム編成の事情から、ここまではゴールに近い4番ポジションに収まることが主だったが、今後は特性を生かせる3番ポジションでの起用が中心になるだろう。どのような新外国籍選手が加わるかにもよるが、チームのスケールアップが期待できる。

 ケネディが帰化選手登録となり、新外国籍選手が加わった際には、チームはまた違った姿になるだろう。だがそこで、また個に頼るチームに戻ってしまっては、元の木阿弥である。今目指している方向性の延長に、それらのプラス要因を加えていくこと。B1一年生にとって、この先はまだ茨の道かもしれない。だが広島がB1にいるべきであると胸を張る存在になるためには、チームバスケを追求する道がベストではないだろうか。

文=カワサキマサシ

photograph by B.LEAGUE