NBAドラフトが行われた11月18日は、ゴールデンステイト・ウォリアーズにとって復活を象徴する日となるはずだった。2015年から5年連続でNBAファイナルに出場し、3回優勝を果たす黄金期を送ったウォリアーズだが、昨季は主力選手たちの故障欠場で低迷し、西カンファレンス最下位に終わっている。その代償として全体2位の指名権を獲得。故障していた選手たちも順調に回復し、再び優勝候補に名乗りをあげようとしていた。

 ところが、ドラフト当日に残念なニュースが飛び込んできた。クレイ・トンプソンが、朝の自主練習で右アキレス腱を断裂したというのだ。'19年のNBAファイナルで左膝の前十字靭帯を断裂した彼は、長いリハビリを乗り越えて今年12月の開幕戦でようやく復帰できるはずだった。

 このニュースに「ウォリアーズの王朝は終わった」という声も聞かれる。チームの3本柱のうち、ステフィン・カリーとドレイモンド・グリーンはいるが、トンプソンが完全復帰するまで高額サラリーの3人を抱えて待てるのか、またトンプソンが復帰後に元通りのプレーができるのか等、懐疑的な声もある。確かに、これを機にロスターを組み替える案も、現実的な選択肢に思える。

「優勝も、怪我も、見てきた」

 そんな憶測のなか、ウォリアーズはドラフトで身体能力の高いビッグマン、ジェームズ・ワイズマンを指名し、翌日にお披露目会見を開いた。会見前半でボブ・マイヤーズGMは、トンプソンの故障についても語った。

「クレイが成長するのを見てきた。優勝するところも、優勝を逃したところも、怪我したところも、リハビリするところも見てきた。痛みと喜びを共にすることで関係を築いてきた。だからこそ特別なんだ」

 これは、チーム解体を疑う世間への反論であるとともに、新たに加入した新人のワイズマンらに向けたメッセージでもあった。世間から注目される優勝の瞬間だけが重要な時間ではないこと。うまくいかない時でもお互いを支え、乗り越えてこそ、強い絆が作られること。

 マイヤーズは、ワイズマンらに向かって言った。

「私たちが特別なのはそういうところだと思っています。あなた方ともこの先、そうやって共に道を歩んでいけることを願っています」

文=宮地陽子

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