史上最多の63校が集結した第100回全国高校ラグビー大会。桐蔭学園高校が3度目の全国制覇(松島幸太朗を擁した2010年度大会は両校優勝)、史上9校目となる連覇を達成して幕を閉じた。記念大会ながら無観客で行われた「いつもと違う花園」では、将来の日本代表に担うと期待される選手たちが多数活躍した。元日本代表で、今大会でも解説を担当した大西将太郎氏に振り返ってもらった。

 まずは、細部まで気を配りながら大会を運営してくださった関係者の方々へ感謝を伝えたいです。他競技では大会中に棄権する学校が出るなか、無事に全62試合を消化できたことは、多くの尽力があったからこそ。また、試合がなくなるかもしれないという葛藤の中で期待に応えるプレーを見せてくれた選手たちの健闘も称えたい。いろいろな意味で記憶に残る「100回大会」になったと思います。

 1回戦から解説をさせていただきましたが、放送席でも難しさを感じました。記者さんの取材は限られたエリアのみ、我々TVクルーは選手と接点すらなく、遠くから見るだけ。例年ならば選手の言葉や思いを聞き、それを次の試合で話すことができたのですが、それができなかった。さらに春、夏と公式戦がなかったことで各校のデータ収集にも限りがありました。

 意識したのは、できるだけ多くの選手たちの名前を呼ぶこと。そしてそれぞれの学校が持つ伝統や新鋭校が目指すスタイルを言葉にすること。会場の熱をうまく伝えようと心がけました。

 また、本来は許可が必要だったのかもしれませんが、選手たちのウォーミングアップの様子を少しだけTwitterにアップしました。選手たちがどんな思いで臨んでいるか。そういうことをしっかりと届けたいなと思ったんです。彼らにとって花園がいかにスペシャルな場所かということが、その姿に表れていました。

高校生たちの“無邪気さ”

 近年、中高生のレベルが上がっています。アタックの工夫、ディフェンスの質、戦術の多彩さと徹底ぶり……花園でも至るところで感じられました。それはやはり日本代表から受けた影響が大きい。改めてW杯を日本で開催した意義を感じました。

 ただ、戦術が進化する中でも、30分ハーフという短い時間で高校生たちがどう自分たちのラグビーを表現するか、どう楽しむかという“無邪気さ”も感じられたのことも嬉しかった。マイボールになったら必ず展開して前へ進む。高校ラグビーならではの雰囲気も花園の魅力だと思います。

 決勝戦は連覇を狙う桐蔭学園の「完成度」が際立ちました。

 この試合、桐蔭学園は序盤からほとんどキックを使わずコンタクトを多く仕掛けました。これは前半のうちから京都成章を消耗させる狙いがあったと見ています。大会を通して後半から疲れが出やすい傾向があった京都成章に対し、フィジカルに勝る桐蔭学園があれだけぶつかったらいつも以上に消耗する。“ピラニアタックル”と異名がついた複数によるハードなタックルが売りの京都成章でしたが、早く前に出るディフェンスはシャトルランを何本も繰り返している状態です。桐蔭学園には終始、“高校生らしくない”落ち着きがありました(32−15)。

 完璧な試合展開を見せた桐蔭学園ですが、県予選では苦労していたように(決勝vs.東海大相模/19−17)、試合をこなしていくうちに仕上がっていった印象を受けます。そういう意味で、おそらく大会期間で一番成長したチームと言えるでしょう。初戦で同じ関東のライバル校である茗渓学園と戦うという抽選結果も大きかった。ハードな日程でしたが、最後の決勝戦で一番良いゲームをする。花園での成長の仕方を知っていたのかもしれませんね。

 もっとも成長を感じたのはディフェンスの部分。アタックの引き出しは前評判通りに素晴らしいものでしたが、大会を通じて1人1人のタックルの質が上がり、チームとして成熟していきました。

 惜しくも準優勝に終わった京都成章も素晴らしいチームでした。劣勢の中でもSH宮尾(昌典)がラック周辺でタメて、隠れて入ってくるFWをうまく使うなど、ラインブレイクする工夫を多く見せていました。ディフェンスも最後まで粘り、京都成章だったからこそ、あの点数差で終われたのではと思うほどの好チームでした。

「ロックが良かった大会だったよね」

 また、決勝戦では、両チームに将来、日本の宝になるだろう青木恵斗(桐蔭学園・3年/187センチ)と本橋拓馬(京都成章・3年/193センチ)というロックが揃っていたことにも触れておきたいです。

 ロックは攻守ともに運動量が求められ、セットプレーでもキーマン。個人的にはラグビーにおいてもっとも重要なポジションだと思っています。ただ、背が高く、体重があり、走れて、なおかつ頭もスマートさが求められるので、日本人ではなかなか現れにくい。トップリーグでさえも多くのチームが外国人に託しているのが現状。そういうチームの核となるロックに、身体能力に優れる青木や本橋といった選手が現れたのは日本ラグビーにとっても喜ばしいことですし、「ロックの重要性」を知るチームが増えてきたということとも言える。

 さらに彼らは献身的な仕事だけでなく、トライを取る力や1人でラインブレイクする力など、派手なプレーもできる。そこが2人の凄さ。ともに帝京大に進学するようなのでこれからも切磋琢磨してほしい。

 他にもロックではいい選手がたくさんいました。まだまだ体つきは細いですが、東福岡の田島貫太郎(3年)の194センチの身長は魅力。フランカーやNo.8での出場が多かったのディアンズ ワーナー(流経大柏・3年/201センチ)もロック向き。東海大相模の川瀬悠河(3年/188センチ)は最後の試合(御所実業戦)でめちゃくちゃ輝いていました。「コロナで大変だったけど、ロックが良かった大会だったよね」と後に言われるかもしれませんね。

 では、ここからはベスト15を。

 今大会は個性がある良い選手が多くて選ぶのにとても苦労しました。

 セレクションポイントは貢献できる「チームマン」。解説した試合で出会った選手たちも盛り込んでみました。

<プロップ>
本田啓(東福岡・3年)
現代的な走るプロップ。劇的な試合が多かった東福岡でもロングランの衝撃が大きかった。

亀山昇太郎(茗渓学園・3年)
彼も走れる「3番」。茗渓が強い時は必ず器用なプロップが現る。見た目も“愛される系”。

<フッカー>
當眞蓮(流経大柏・3年)
フッカーながらトライの嗅覚を兼ね備えた選手。タッチライン際でのランニングスキルも魅力。

<ロック>
青木恵斗(桐蔭学園・3年)
昨年度からひと回り成長し、桐蔭の連覇に貢献。大学ではバックローに転向する可能性もある。

本橋拓馬(京都成章・3年)
193センチ、113キロの大型LO。破壊力と柔らかさを併せ持ち、青木同様に将来の代表候補。

<フランカー>
粟飯原謙(あいはら・けん/桐蔭学園・3年)
まだ細いが、人に強く、タックルの技術が高い。タレント集団の中でも貢献度は最上級だった。

加藤アディナン(流経大柏・1年)
超期待枠。抜群の身体能力、タックルがしつこい。フランカー出身の相亮太監督の指導にも注目。

<No.8>
佐藤健次(桐蔭学園・3年)
キャプテンシーも考慮して選出。フッカーに転向したら堀江翔太のような選手になる可能性も。

<スクラムハーフ>
川久保瑛斗(長崎北陽台・2年)
解説した東海大大阪仰星戦で印象に残った9番。プレー選択と強気な姿勢が田中史朗にそっくり。

<スタンドオフ>
安田昂平(御所実業・3年)
2年時から注目を集めた司令塔で、日本代表の松田力也に近い。15番の方が特徴を活かせそう。

<センター>
近藤翔耶(東海大大阪仰星・3年)
抽選敗退後の「30人で試合をしているような一体感があった」という言葉に脱帽。プレーも◎。

山田歩季(京都成章・3年)
「13番」らしい縦に強さがあり、思い切りがいい。ディフェンスでも存在感を十分に発揮した。

<ウイング>
ジョアぺ・ナホ(大分東明・3年)
インパクト枠。フィジー出身で、日本人にはないバネと発想でどんな体勢からでもトライを狙う。

金昂平(きむ・あんぴょん/大阪朝鮮・3年)
フルバックだが、右サイドでの鋭いカウンターが印象に残った。14番でのプレーも見てみたい。

<フルバック>
矢崎由高(桐蔭学園・1年)
松島級になるのも夢じゃないスーパー1年生。地元大阪から桐蔭を選ぶ意志の強さも期待できる。

 このチーム強そうです(笑)。1、2年生にも将来が楽しみな選手が揃った大会でしたので早くも来年が待ち遠しいですね。彼らの成長に期待しましょう。

桐蔭学園1年生の矢崎由高。「派手さはないが、凄さを感じた」(大西氏) ©︎Kyodo News

文=NumberWeb編集部

photograph by Kyodo News