「僕は不器用なんですよね、ほんとに……」

 キャンプイン前の2021年1月、巨人・丸佳浩選手(以下、敬称略)とオンライントークイベントでご一緒させていただいた。そこで13年間のプロ生活を振り返った丸は、少しハニカミながら自分のことを“不器用”と表現していた。

「(坂本)勇人さんらは素晴らしい。イメージしたら、それがスッとインプットされているように見える。僕はイメージしてすぐに身体がその通りに動くタイプじゃないですよ。カープ時代から緒方(考市)さんに『お前は不器用だ』といつも言われていました。けれど『丸のような不器用な選手は一度、技術を習得したら身体から抜けない分、それを維持するのは得意だ』とも言われました。それを信じてここまで来ましたから」

個人では「セ・リーグ5連覇」

 広島東洋カープで3度、読売ジャイアンツで2度のリーグ優勝。丸個人の成績を見ると、16年から20年までセ・リーグで5連覇を達成していることになる。プロ13年間のうち、実に1/3以上が「リーグ優勝」という、まさに平成・令和の優勝請負人だ。

 さらに、その5年間ではすベてベストナイン、ゴールデングラブ賞に選出。シーズン全試合出場は5年間で4度。最多安打は1回、最高出塁率も1回と個人タイトルも獲得している。

「転機は15年のシーズン終わりから16年ですかね。14年、15年は本塁打19本。14年は打率3割を超えましたが15年は3割に到底及ばなかった。自分がこれまで打つことができなかったコースに対応し、本塁打20本を超えるにはどうしたらいいか……(そう悩んだときに)勝負に出ようと打撃フォーム改造に着手しました。

 一気に変えるのはある種、賭け。でも何としても習得してやろうと球場の外野フェンス沿いを、バットを振りながら何往復もしました。身体の前で8の字を描きながら、バットのグリップをダウンさせて鞭のようにバットを振る動作を繰り返しているうちに良い感覚を覚えました。これはいけるかも知れないと」

打撃フォーム改造に取り組んでいたカープ時代の丸 ©︎Kyodo News

 16年の1月、マツダスタジアムの室内練習場で打撃マシン相手に打ち込む丸の打撃フォームは別人のように変化していた。グリップ位置が大きく変化させ、右足を高く上げてタイミングをとる姿は、これまでのフォームから“180度”変わったと表現しても言い過ぎではないように思えた。

「あまり子どもたちにはおススメできない打撃フォームかも知れませんよね。あれだけ大きくヒッチ(トップを作る前段階において、グリップを一度下げる動作)するのは(笑)。(1)でバットを一塁ベンチ方向に寝かせ、(2)でグリップ位置を一気に下げ、右足を上げる。(3)で右足を前にステップさせ、グリップ位置を上げて捉えにいく……そんなイメージです。スイングの感覚はチャレンジした直後は悪くありませんでした。

 ただ、相手投手がクイックしたり、変則モーションだった時にタイミングをどう合わせるか、ここがポイントでした。ヒッチのさせ方や足の上げ方などを工夫しながら、ようやく今に辿り着きました」

 16年以降は打率3割を2度記録した。20本塁打は5年連続達成、18年にはキャリアハイとなる39本塁打。長打率は5割以上が3回、18年には6割を大きく超えるなど、近年は長距離打者とも言える数字を叩き出している。

丸が一番こだわる「出塁率」

「僕が一番大切にしている数字は出塁率で、4割は超えていかなければならないと思っています。打率3割を超えたら、プラス1割の数字が出塁率というのが理想。20年シーズンは1年を通して、ボールを打ちにいってしまった。ボールを待ち、見極めるということがなかなか出来なかった。シーズン後半はボールを少しずつ待てるようになり、出塁率が上がっていきました。今季はどれだけボールを待てるか。それができればおのずと出塁率は上がってくると考えています」

 もちろん、出塁率以外の成績にも目を向けている。すべての数字がリーグ3位あたりに入ってくることを目指すとも語る。

「突出した数字ではなく、すべての数字がバランスよく高水準にあることが理想です。そして、何といっても出塁率を意識したい。どれだけ四球を選べるかもポイントですよね」

©︎Kiichi Matsumoto

通算1500安打に迫る2021年

 通算1500本安打まであと145本、プロ14年目のシーズンを迎える31歳。

 打撃習得に時間をかけ、3割に辿り着いた若き日々。さらなる進化を求めて打撃フォームを一気に変えるという賭けに出た20代後半。時間をかけながらも見事に自らの形を掴んだ30代。成熟の域に入った丸が、“ボールを待てる自分”を身体にインプットさせたとき、球史に残る数字を叩き出す。そうすれば自ずと“6連覇”が見えてくるに違いない。

文=田中大貴

photograph by Nanae Suzuki