巨人からポスティング制度を利用してメジャー移籍を目指した菅野智之の今季残留が決まった。年始に渡米し、現地で複数球団との交渉を続けてきたが、期限の1月8日までに着地点は見出せなかった。帰国後、会見に応じた菅野は、率直に思いを明かした。

「いろんな話をする中で、100%納得できるものではなかった」

 コロナ禍の影響で財政難の球団が多いこともあり、6球団から届いたオフォーは、菅野の首を縦に振らせるものではなかった。しかも、米国内は依然として爆発的な感染拡大が続き、キャンプ、公式戦の実施も不透明な状況。学生時代からの夢を目前にしながらも、「挑戦するタイミングは今ではない」と、冷静かつ客観的な判断を下した。

 では、来オフは、菅野にとって、いいタイミングになりうるのだろうか。

 現時点で、今後のメジャーの経済状況を先読みすることは。困難と言わざるを得ない。

 ただ、米国内でワクチン供給が始まり、徐々にコロナ対策が進み始めていることで、早い時期に有観客での公式戦が実施されるようになれば、球界全体の景気が好転する可能性はある。

カーショー、バーランダーら超大物がFAに

 昨季のように60試合に短縮されることなく、ひとつのメドとして120試合以上実施できれば、ある程度の収益は確保できることになり、最悪の事態は避けられる見込みも立つ。

 となると、少なくとも今オフよりも、市場が活況となる可能性は高い。というのも、来オフのFA(フリーエージェント)市場は、サイ・ヤング賞ホルダーをはじめ、近年稀に見る大物揃いで、各球団が積極的に大型の投資に踏み切る流れはできやすい。

 昨季世界一に輝いたドジャースの大エースで生え抜きのクレイトン・カーショー(34、各選手の年齢はいずれも2022年4月時点)、トミー・ジョン手術明けのジャスティン・バーランダー(39=アストロズ)、はともに残留濃厚とみられる一方で、ザック・グリンキー(38=アストロズ)、マックス・シャーザー(37=ナショナルズ)、ジョニー・クエト(36=ジャイアンツ)らが移籍すれば、各球団の勢力図が大きく変わることになり、市場全体の動きは一気にスピードアップする。

3〜4年契約、単年平均10〜20億円のレンジと予想される

 もっとも、5選手とも超大物とはいえ、30代のベテランでもあり、3年以上の長期契約は考えにくい。彼らの場合、金銭面というよりも、世界一に近いチームを優先させる傾向が強いだけに、残留・移籍のいずれにしても、早い時期に決着することも予想される。

 今年10月で32歳となる菅野の場合、カーショーら大物ベテラン勢とは一線を画し、マーカス・ストローマン(31=メッツ)、ケビン・ガウスマン(31=ジャイアンツ)らを含む第2グループとしてランキングされる見込みだ。

 条件としては、3〜4年契約、単年平均10〜20億円のレンジと予想され、上位球団で先発ローテーションの「2〜3番手」を必要とする球団が、積極的に攻勢をかけることになりそうだ。裏を返せば、ベテラン勢に手を出さない球団が最優先のターゲットとするのが、この第2グループでもあり、市場の中でのニーズとしては必然的に高くなる。

 菅野が来オフ、「100%納得できる」契約を手にするためには、今季、巨人で好成績を収めることが絶対条件となる。日本では勝利数、防御率などのタイトルが注目されがちだが、日米間のレベル差があることもあり、メジャーのスカウトが重視するのはイニング数。2018年のような200イニングはともかく、170〜180イニングをクリアすれば、32歳の年齢もマイナス材料にはならないだろう。

 菅野自身、「まだまだ伸びしろはある」と言い切るだけに、故障することなく、1年間フル回転することが、夢実現への、最短の近道となるに違いない。

文=四竈衛

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