2月1日にスタートした千葉ロッテ石垣島春季キャンプ。安田尚憲、藤原恭大、佐々木朗希ら、近年のドラフト1位選手たちにメディアの注目が集まる中、異彩を放つ1人の若手選手がいた。

 プロ3年目の山口航輝である。秋田県の明桜高校出身、今年8月に21歳になる外野手だ。

 高校時代は、金足農の吉田輝星(現・日本ハム)、由利工の佐藤亜蓮(現・仙台大)、能代松陽の佐藤開陸(現・TDK)らと共に「秋田四天王」と並び称される県内屈指の好投手だったが、プロ入り後は「投」を捨て、「打」に専念することで一流を目指す道を選んでいる。

高校時代は二刀流でも注目を集めた山口 (c)Sankei Shimbun

 山口のセールスポイントは、滞空時間の長い打球を飛ばすことだ。しかも、引っ張ったレフト方向の打球だけじゃなく、センターはもちろん、深い右中間にも運べる天性の才能を持つ。同学年で同期入団の藤原、1学年上の安田らとは、また違う魅力を感じさせる稀な存在なのだ。

SNSでも話題になった豪快弾

 その才能は、キャンプ第2クールに行われたフリー打撃でも光っていた。2月8日、ドラフト1位ルーキー左腕・鈴木昭汰がフリー打撃に登板すると、内角球を左中間へ、外角球を右中間へ運んで球場内の視線をさらうと、翌日も左腕・山本大貴からセンターバックスクリーンに運ぶ豪快な一撃を放ち、SNS上では山口に期待する声が多く上がっている。

 とはいえ、一軍での実績はまだない。

 1年目はイースタンで114試合に出場し、打率.238、本塁打6、打点29。2年目は全70試合に出場して、打率.258、本塁打7、打点30と前年の成績を全て上回ってみせたが、それでも、一軍昇格の声はかからなかった。

 藤原らが着々と一軍で実績を積んでいく中、自分にはそのチャンスが巡って来ない。やるせない想いだけが心の中に募っていった。

「昨年1年間、一軍に上がれなかったのは自分の中でも悔しかったですし、その悔しさを持って、今はやっています。その分、今年は頑張りたいなと……」

福浦、松中の指導で「打球が飛ぶようになった」

 昨秋のフェニックスリーグでは、オリックスの本田仁海、横浜DeNAの宮城滝太の2人の投手から、苦手としてた変化球を叩いて本塁打にするなど、成長の跡も窺わせる。

「プロに来た当初は、ひとつにこだわるのではなく、どれがしっくりくるのかを自分で見極めながら、色々と変えたりもしました。打ち方は(高校時代と比べて)だいぶ変わっていると思います」

 高校時代はスクエアで構えていたスタンスも、福浦和也二軍ヘッド兼打撃コーチや、堀幸一育成総合兼育成打撃コーチらの薦めもあって、オープンスタンスに変えると、ボールの見極めは格段によくなり、ボール球も振らされないようになってきた。さらに、今春のキャンプでは臨時打撃コーチを務めた松中信彦から、より下半身を使ってボールを飛ばすことを伝授され、持ち前の長打力に磨きをかけている。

「(自主トレで)下半身を鍛えてきたのもありますし、松中さん(臨時コーチ)に教わってから、実際に打球が飛ぶようになった感じもしています」

 2月13日から始まった練習試合では、3試合を消化した18日の時点で待望の本塁打はまだ出ていないが、それでも18日に行われた東北楽天戦では、楽天の釜田佳直の執拗な変化球攻めにも釣られることなく、しっかりと四球を選ぶなど対応。懐の深さも感じさせた。

目標は鈴木誠也、心に残る三家のアドバイス

 山口には目標とする選手がいる。それは広島東洋カープの鈴木誠也だ。

山口がお手本とする鈴木誠也 (c)Hideki Sugiyama

 鈴木のことは、広島時代に一緒にプレーして交流も深いという三家和真(元ロッテ)から話を聞かせてもらった。

「どういう練習を、どんな意識でやっていたのか、そうした話もたくさん聞かせてもらって、それも自分にとってプラスになりましたし、細かい部分も色々分かったので、それは良い経験をさせてもらったんじゃないかなと思っています」

 三家は昨年、ロッテから戦力外通告を受け、スカウトに転身。兄貴分のように慕っていた先輩は、もう一緒のグラウンドに立つことはない。恩返しをするには、これから自分が一軍で結果を残すしかない。

「三家さんからは『鈴木誠也さんの真似をするんじゃなくて、自分の形でしっかり練習しろ』と言っていただきました。自分も、その通りだと思いましたし、やるのは自分自身なので。参考にする部分は参考にして、その分、しっかり練習しようと思います」

 目指す頂は、遠い。それでも、いつか辿り着けると信じている。

「ホント、一日、一日でしっかり自分をアピールしていかないと生き残れない場所だと思うので、開幕までここ(一軍)に絶対に残る気持ちで、やっていきたいと思っていますし、『今年こそ』と思いながら、オフからずっとやって来たので、1年間、一軍に居続けられるよう、頑張っていきます」

 天高く幕張の空へ。飛んで行く白球の絵が目に浮かぶ。一軍でブレイクするその日を楽しみに待ちたい。

文=永田遼太郎

photograph by JIJI PRESS