2月19日、NBA界隈のSNSにYuta Watanabeの文字があふれた。

 といっても、今回は渡邊雄太が活躍したのではなく、完全にやられ役だった。去年のドラフト1位指名選手で、開幕から多くのハイライトダンクを見せているアンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)が渡邊の上から力強く豪快なダンクを叩き込んだのだ。早くも「今季最高の試合中のダンク」と言われるほど、すごいダンクだった。アメリカでよく言う「ポスタライズされた」(ポスターになるほどすごいプレーのやられ役にされた)場面だった。

アンソニー・エドワーズに立ち向かう渡邊雄太 ©︎USA TODAY Sports/Reuters/AFLO

 試合中のダンクに見応えがあるのは、それを止めようとするディフェンス選手がいるからだ。今回も、正面から止めようと必死に向かっていった渡邊がいて、それでもその上から叩き込んだからこそ、「今季最高」と評されている。

SNS上では、上から決められた渡邊に対して「ご愁傷さま」といったようなコメントがあふれたが、渡邊を馬鹿にしたり、彼のディフェンスを批判しているというよりは、むしろエドワーズに対する称賛のオマケのようなものだ。

昨季を大きく上回る試合数「あくまで通過点」

 今シーズンこれまで、渡邊はトロント・ラプターズでNBA20試合に出場している(アメリカ時間2月21日時点)。2シーズン前のNBA出場は15試合、昨季は18試合だった。17試合に出場した頃に、昨季と並ぶ18試合目、それを超える19試合目の意味について聞いたところ、渡邊はこう言っていた。

「これはあくまで通過点だなと自分自身では思っている。今の状況に全然満足していないですし、もっともっと成長して、もっとたくさん試合に出ていきたい。18試合、19試合の段階で満足しているようじゃ全然だめですし、当然、満足するような人ではないんで、僕は」

 今季、故障以外で渡邊が出なかった試合は、30試合中わずか7試合だ。チームに故障者が出たこともあるが、試合に出ることで、少しずつコーチの信頼を勝ち取ってきている。

渡邊の冷静な自己分析

 その7試合のうちの1試合、1月11日のポートランド・トレイルブレイザーズ戦は彼がローテーション入りしたかと思ったタイミングで、出場の機会がなかった試合だった。その数日後、渡邊がオンライン会見に出てきたときに、ブレイザーズ戦で出場しなかった理由について、ヘッドコーチのニック・ナースから何か言われたか聞いてみた。それに対して、渡邊はこう答えた。

「試合に出なかった理由は特に言われていないです。コーチと話したわけじゃないんで、僕のあくまで憶測なんですけれど、ブレイザーズのバックアップ4 (パワーフォワードの控え)がカメロ・アンソニーで、けっこうポストアップでゴリゴリしてくるタイプの4番ポジションなんで、まだそこに対しての僕のディフェンスの信頼っていうのは得られていないのかなって。正直、それは試合前から思っていて、(試合に出ない)予想はしていました」

 試合前から出ないことも予想していたとは、かなり冷静に分析しているのだと感嘆した。

課題のフィジカル「やれることはある」

 フィジカルの強い相手に対してパワー不足というのは、渡邊にとって日本にいるときからの課題だ。アメリカに来てから年々身体を鍛えてきて、NBAでプレーできるまでにはなったが、それでもパワーの強い選手に対しては、まだ力は及ばない。

「継続して努力はしているんですけれど、身体(に筋肉)がつく、つかないは体質も多少あると思いますし、そこは当然、自分のウィークポイントでもあるんですけれど、ただ、それを言い訳にはできない。コートに出してもらっている以上は、自分のもっている力で活躍しないといけない。

 だから、フィジカルで相手に負けてしまう分、運動量をもっと増やしたりだとか、フィジカルな相手にあたってもやれることは全然あると思う。当然、これからもウェイトトレーニングとか、しっかり食べで身体を強くしていくっていうのは大事なことなんですけれど、そこで仮に負けていたとしても、他の部分でしっかりと補えるようにはしていきたいなと思っています」

 そう語ってから数試合後のインディアナ・ペイサーズ戦で、渡邊はペイサーズのビッグマン、マイルズ・ターナーに1対1でマッチアップし、押し込まれることなくポジションをキープし、相手のオフェンスファウルを誘った。

マイルズ・ターナーとのマッチアップ ©︎Getty Images

 試合後、渡邊はその場面についてこう語っている。

「いいディフェンスだったと思う」

「あれはポジションを深く取られすぎたのはあったんですけれど、ただ、押し合いみたいなのは試合を通して、僕は一切嫌がることはないですし、そこを嫌がってしまうと押し負けてしまう。自分からしっかりコンタクトを先に取って、しつこくやった結果、むこうがしびれを切らしてちょっと肘を使って、結果的にオフェンスファウルを取れたっていう形だった。

 あれは正直いいディフェンスだったと思いますし、まぁ、欲を言えば、もうちょっとペイントの外でボールを持たせるようにしないといけないんですけれど、それでも、最後までしっかりと、しつこくつき切った結果、ああいう形でいいディフェンスに繋がったんじゃないかと思います」

 ラプターズのヘッドコーチ、ニック・ナースもこの日の渡邊のターナーに対するディフェンスについて、こうコメントしている。

「よくやっていたと思う。ユウタは少し細くて、マッチアップする相手より体重では負けていることが多いけれど、でも、彼は見た目より力強いし、いつでも最大限の努力をして戦っている」

 1月31日のオーランド・マジック戦では、オールスターセンターのニコラ・ブーチェビッチのシュートをブロックしている。試合後、渡邊はそのブロックについて、そして自分より大きく、力強い選手に向かうメンタリティについて、こう語っている。

236cmという驚異のウィングスパンを誇るモハメド・バンバ(オーランド・マジック)にタッチを求められる渡邊 ©︎Getty Images

「体格や身体の強さで完全に負けている分、気持ちの面だとか、運動量を増やして(対抗している)。ブーチェビッチへのブロックに関しても、運動量を増やし、いいタイミングで跳べて、『シュートにコンテスト(対抗)できればいいかな』ぐらいの感じで手を伸ばしたらそこにうまくボールが来てくれたみたいな感じだった。そうやって運動量を増やすことで自分のよさはどんどん出てくると思うんで、フィジカルでのディスアドバンテージがあるなら、別の場所で補っていくしかないので、そこは継続してやっていかなきゃいけないなと思っています」

エドワーズとのシーンが示すこと

 最後にもう一度、冒頭のエドワーズにダンクを決められたシーンの話に戻す。

 このとき、エドワーズは渡邊が守っていた選手ではなかったが、チームメイトが抜かれたため、ヘルプ・ディフェンスに出た結果、上からダンクを決められてしまった。出るのが少し遅れたため、ブーチェビッチのときのように「タイミングよくブロック」とはいかなかった。タイミングよく出ていたとしても、相手はハイライト製造マシーンのエドワーズ。結局はダンクを決められていたかもしれない。

 しかし、失敗することや、ポスタライズされることを恐れていたら、成功もない。向かっていったからこそ、自分の課題もわかる。

 NBAは超人のような選手たちがそれぞれの持ち味を発揮し、一瞬の隙を狙ってしのぎを削るような世界だ。その中で渡邊は、自分の長所だけでなく、弱点もしっかりと理解したうえで、戦い方を考え、努力を続けている。今シーズンだけでなく、この先、何年も、そんな世界でしぶとく生き残り続けていくために。

文=宮地陽子

photograph by Getty Images