これまでのFC東京、川崎フロンターレとの対戦で「マークされると嫌だな」「こいつの守備は嫌だな」と思った選手は誰ですか?

 4月11日の『多摩川クラシコ』を前に実現した対談でのこと。かつて緩急自在のパスでFC東京の守備網に穴を開けた中村憲剛と、キレッキレのドリブルで川崎F守備陣を混乱させた石川直宏は、ほぼ同時に口を開いた。

「俺、すぐ頭に浮かびましたよ」

 名手は、名手を知る。果たして2人のレジェンドが「最も嫌った守備者」とは誰か。その名前は、選出理由の後に記しますので、ぜひ答えを推理しながらご一読ください。

 まずは中村憲剛が選んだ「彼」から。

普段はあんな温厚なのに……

中村 彼の守備はね、こっちからすると“痛い”のよ。

石川 確かに! 強いというよりも、痛いですよね。

中村 そう。骨太だからなのか知らないけど、「岩」みたいなイメージで、すごく嫌だった。それに加えて、間合いを詰めるのが速いんですよ。

石川 ほかの選手とは、守る距離間が違いますよね。

中村 しかも、プレーが汚い……じゃなくて激しい(笑)。がっつり体をぶつけてきますからね。普段はあんな温厚な性格なのに。

石川 でもね、憲剛さんに体をぶつけるのって、難しいんですよ。普通、守備の選手はボールホルダーの目線でプレスに行くタイミングを判断する。ヘッドダウンして、目線が下がっている瞬間を狙って。でも、憲剛さんはわざとヘッドダウンしておいて、周りが見えていないフリをしながら、いきなりすごいパスを出す。タチが悪いんです(笑)。

中村 だって、俺に素早く寄せてくるのはわかっているからさ。「絶対に寄せてくる」とわかっているからこそ、先に判断しないといけないから。普通の相手なら、寄せてきたところをかわせるんだけど、彼の場合はそこでガツっと体を入れられて、ボールを奪われる。

石川 憲剛さんが「痛い」と思うほど体を寄せられる彼は、すごいですね。

中村 体をぶつけられて、思わず「おい!」って言っちゃったこともあるよ。「あ、すんません」って返されるんだけど(笑)。

石川 彼は試合が始まるとスイッチが入って、“素”でプレーしてますから。怒られたときには、「すんません!」って謝るけど、またすぐ素に戻る。

中村 ピッチの中と外で性格が全然違うから、面白いんだよね。

――では、そんな「彼」の名前を教えてください。

中村 コンちゃん(今野泰幸)!

中村からボールを奪う「コンちゃん」 ©︎J.LEAGUE

石川 球際が「強い」選手はたくさんいます。コンちゃんは確かに「痛い」。ほかには、前田遼一とか。どっちも同世代なんですが……。

中村 確かに遼一も、そうだね。なんでアテネ五輪世代ばかりなんだろう……FC東京戦では、コンちゃんに近寄りたくなかったなぁ。ボランチにいるときだけじゃなく、センターバックとしても嫌だった。もう1人、FC東京戦で印象的だったDFはトク(徳永悠平)。‟対レナト専用機“みたいな感じで、いつもレナトとバチバチやっていたのを、よく覚えていますね。普段はおっとりしているのに、フロンターレとやるときは、絶対気合いが入っていた。

石川 そうなんですよ。あいつは、強い相手が目の前にいると気合いが入るタイプで。

中村 特にレナトに対しては、完全にロックオンしている感じだったよね。名勝負も多かったな。

2人の記憶に刻まれる名マッチアップ「レナトvs.徳永」©︎J.LEAGUE

得意のクラシコで悩まされたのは?

 続いては、石川直宏編。縦に、中に、その突破力で『多摩川クラシコ』でも通算3ゴールを決めたアタッカーも、川崎F最終ラインに君臨したあのDFに悩まされたという。

石川 駆け引きがうまいんですよ。身体能力も高いし、速いし。

中村 そうそう。確かに速い。

石川 縦に抜こうと思っても、スピードで対応されたり。僕をスピードに乗らせておいて、いつの間にかドリブルのコースを消していたり。間合いが良いから、僕からすれば「早くボールをくれ」という状況でも、パスの出し手からすると出せない感覚に陥る。他の最終ラインの2人との関係性も良かったですよね。

中村 “山脈”ね。

石川 そう。僕がドリブルでゴール前に運んだとしても、寺田周平さんと箕輪義信さんが寄せてくるから、シュートまで行けない。あの頃のフロンターレの守備は嫌でしたね。

――寺田さん、箕輪さんとユニットを組んだ、もう1人の“川崎山脈”と言えば、あの人ですね。

石川 伊藤宏樹さんです。

中村 おー! きっと、この記事を読んだら喜ぶよ、あの人。

石川はDF伊藤宏樹を選出 ©︎J.LEAGUE

――では、シューター目線でFC東京と川崎で嫌だったGKはいますか?

中村 林彰洋選手は……デカい。

石川 デカい(笑)。

中村 いや、「デカい」って大事なんですよ。単純に、それだけゴールが小さく見えるわけだから。そして林選手は、1本目のシュートを止めると厄介なんです。最初の1本で良いセーブをすると、どんどん乗ってくる。だから、序盤に止められると「今日は入らないな。面倒くさいな」って思っていましたね。

石川 僕の時代には、フロンターレに川島永嗣がいましたからね。同世代だからこそ、決めてやろうって気持ちがすごく強かった。やっぱり永嗣はダイナミックで、守備範囲も広い。でも、僕が『多摩川クラシコ』で決めた3ゴールは全部、永嗣から決めています。これは書いておいてください(笑)。

中村 確かに、ナオは永嗣から決めてるよね。

憲剛の注目は森重の起用法

石川 永嗣もすごかったですけど、今の正GKであるチョン・ソンリョン選手もすごいですよね。

中村 今、Jリーグで一番良いGKじゃないかな。ここ何年かでプレースタイルも変わって、ビルドアップの部分も進化している。ソンリョンは真面目で、勉強熱心。36歳にして、まだ成長できるんだって驚かされるよ。

石川 彼の負傷離脱は残念ですが、4月11日の『多摩川クラシコ』は、当日出場するGKがどういう働きをするかもポイントですね。

多摩川クラシコの鍵を握るFC東京DF森重真人 ©︎Getty Images

中村 僕の注目は森重真人選手。彼が4-3-3の中盤のアンカーに入るのか、センターバックに入るのかで、FC東京の戦い方はかなり変わってくるから。『多摩川クラシコ』らしい派手な撃ち合いに期待しているけど、お互いが「嫌がる守備」にも注目したら、より試合を楽しめるだろうね。

文=松本宣昭

photograph by Yoshiaki Matsumoto