雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は日本人メジャー最速となる10号本塁打を放った大谷翔平にまつわる3つの言葉です。

<名言1>
自分の中で課題を消化するのが野球のおもしろさなのかなと思います。
(大谷翔平/Number881号 2015年7月2日発売)

◇解説◇
「ちょっと待って、この人、昨日ピッチングしてたよね……?」

 エンゼルス球団公式ツイッターがこんな風に嘆息するのも、当然だろう。

 現地時間6日(日本時間7日)、大谷が所属するエンゼルスは本拠地エンゼル・スタジアムでレイズ戦に臨んだ。前日先発ピッチャーとして6回途中無失点の投球を見せた大谷は「2番・DH」でスタメン出場したが、第2打席に“日本人記録”となる一打を放つ。

 レイズの2番手サウスポーであるフレミングが投じた初球147kmを強振すると、ボールは高い弾道を描いて右中間スタンドへ。MLB公式ツイッターも「疑いなくオオタニだ」とつぶやくほどの10号2ランを突き刺した。

©USA TodayAFLO

日本人最速2ケタ弾で本塁打王トップタイ

 116打席目での10本塁打は2019年の自身の180打席を更新する“日本人最速2ケタ本塁打到達”で、再びア・リーグ本塁打王争いトップに並ぶ。第4打席には筒香嘉智が守る一塁ベースに当たるラッキーな二塁内野安打でマルチ安打を記録した(試合は3−8でエンゼルスが逆転負け)。

 登板翌日であるにもかかわらず、豪快な一発を放った大谷。日本ハム所属時代の2015年、こんな風に語っていたことがある。

「今の相手と今後10年、20年、ずっと対戦していくのなら、このバッターを倒すために必死になるとか、このピッチャーを打ち崩そうとか思うのかもしれませんが、メンツも時代も変わりますし、若い世代が入ってくれば対戦相手もどんどん変わる。だから、思い通りに投げられなかったボールで抑えたことをオッケーにしちゃったら、成長するチャンスを失うことになるし、もったいないじゃないですか」

©Hideki Sugiyama

 とてつもないスピード感で課題を消化し、成長するのだから誰もが驚くのだが……この言葉をメジャーの世界で実現しているからこそ、大谷のスケール感は特大なのである。

二刀流を目指した同僚が語った「無駄の無さ」

<名言2>
大谷は無駄な時間が無いよね。
(ジャレッド・ウォルシュ/NumberWeb 2019年9月14日配信)

◇解説◇
 2019年、ロサンゼルス・エンゼルスのロッカールームには大谷と同じく「二刀流」に挑戦している選手がいた。それがウォルシュだ。

ⒸGetty Images

「空いた時間を見つけてはミラールームに行き、スイングを確認している。試合前も試合後も映像の確認を欠かさない。データ表を見ながら分析する姿もよく見る。彼は野球を研究しているよ。そんな彼がいたから僕も二刀流を認めてもらえている」

 これほどまで大谷の行動について、じっくりと観察していたそうだ。

 ウォルシュは2020シーズン、野手に専念することになったものの、打率.293、9本塁打、26打点をマーク。60試合制で行われたことを踏まえれば立派な成績と言えるだろう。そして今季も6日時点で打率.330、6本塁打、22打点。6日のレイズ戦でも4番ファーストを任されるなど、首脳陣の期待も高いとみられる。

 西地区最下位に沈むエンゼルスが勝ち星を積み上げるためには、逆転負けを食らったリリーフ陣の整備は大前提だが――大谷、メジャー最強打者トラウト、ウォルシュの3人の並びは、今後さらなる破壊力を見せつけてくれるだろう。

松井秀喜の「31本塁打」を塗り替えるのか

<名言3>
遠くに飛ばすということは誰にでもできることではない。
(松井秀喜/Number637号 2005年09月22日発売)

◇解説◇
「やはり与えられた才能だと思うから、本塁打にはこだわり続けたい」

©NaoyaSanuki

 日本人メジャーリーガーでシーズン30本塁打に到達したのは、2020年時点で松井秀喜しかいない。ホームランを打つ能力については自負心を持っていた一方で、過去にはこのようにも語っていたという。

「自分でこういう選手になるとか……例えば日本のファンが望んでいるホームランをバンバン打つ選手になりたいとか、そういうものはないですよ。どんな選手になりたいとか、どんなスタイルを作りたいとか、そういうことを目指すんじゃなくて、やっぱりどうやって全体をレベルアップしていくかしかないんですよ」

 本塁打40本でも打率が2割なら打者として失格である──走攻守、すべてを完璧にこなすプレーヤーが松井の理想。その理想に一歩でも近づくために自分を高めていたことがわかる。

 そんな松井の活躍から十数年の時を経て、大谷は強烈な打球音とともにスタンドにボールを運んでいる。なおかつ投げては奪三振、走っては盗塁という“無双”ぶりだ。このハイレベルな活躍をつづけることで、松井が打ち立てた「31本塁打」の金字塔を塗り替えることになるのだろうか。

文=NumberWeb編集部

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