前回は大谷翔平・トレーディングカードの高騰に関しての記事を寄稿したが、第二弾はさらにマニアックな内容の、試合で使用された「野球ボール」について記してみたい。

 日本でも球場へ観戦に行って「試合前練習球」「ファールボール」や「ホームランボール」をキャッチして持ち帰った経験のある方もいるだろう(現在はコロナ禍で基本回収の球場が多いのだが)。アメリカでも同様にこれらのボールはキャッチしたものは基本的には持ち帰って良いシステムだが、筆者も引き込まれた独自のシステムがアメリカには存在する。

大谷翔平からもらった練習球

 そのシステムというのが、アメリカのMLBオーセンティケーション(MLB認証)という、バットやボールが実際にゲームで使用されたことを証明する制度となる。以下の写真は大谷のメジャー初勝利の試合で実際に使われたボールだが、そのボールにはホログラムシールが貼られている(写真を参照)。

ホログラムが貼られたボール©Aki

 そのシールのナンバーをMLB Authenticationのサイトで入力すると、そのアイテムがどの試合のどの場面に投げたどんな球種かまで詳細を確認できる。

。大谷翔平メジャー初登板初勝利の試合、2018年4月1日の1回裏に大谷が投げた98.4マイルのフォーシームでキャッチャーファールフライになったボールと特定されている

 これはどのような仕組みかというと……アイテムの認証をオーセンティケーターという球団管理の職員が実際にアイテムを確認し、登録をしているのだ。

どんな感じでボールを登録しているの?

ベンチ横にオーセンティケーターを配置

 筆者が大谷の所属するエンゼル・スタジアムに観戦に行った際のことだが、この球場の場合はホームベンチ横にオーセンティケーターが配置されていた。

黒いホースでボールが送られ、その場でホログラムが貼付される

 そしてこの場所でボール交換のタイミングで受け取り(右の黒いチューブによって受け渡し)、その場で確認、ホログラムのシールを貼るという作業を試合中、繰り返している。これを球場の見える位置に配置することによって、周囲からの疑念を排除している。

 スポーツ・メモラビリアの世界には常に偽物・贋作が付いて回っている。中でも1999年10月に偽造品の大規模な組織的犯罪が発覚し、これによって既存のコレクターは大きな被害を受けるとともに、市場の信頼性を一気に失ったという時代があった。それらの信頼を回復するために2000年頃から現行のシステムの運用がなされ、MLBがその価値を保証するという方式に変更されている。

ホログラムが貼られると当日7回以降に販売

 ホログラムが貼られたボールは、その後ほとんどの球場でその日の7回以降に球場の売店で販売される(試合の終盤で使われたボールは翌日以降販売)。筆者が、登板当日の大谷が交代したあとに売店で購入したものが先の写真のボールとなる。行ったタイミングで同様に使用球を求めて人が数人集まっていたが、このような形で販売されているので無事、実際に大谷が投げたボールを入手できた。

売店に並ぶ当日の実使用球

 では、球場に行かなければその日の試合球が購入できないのか? というとそうではない。例えば開幕戦や特別な記録のボールは、後日MLBが主催するオークションでも販売がなされており、実際に大谷のメジャー・デビュー戦のボールもいくつか主催のオークションで販売されたと記憶している。

 また、記念品や文化をとても大切にする米国らしく、特別な記録のアイテムはホログラムが貼られたあと、米国の野球殿堂博物館に寄贈されるものも存在する。

すり替え防止策にもしっかり対応している

 特に、記録が掛かった打席、例えば3000本安打などの場合にはボールに特別の刻印の入ったものを使用することで、仮にホームランになったとしてもボールの特定・回収を可能にしやすい体制を取っており、すり替え防止対策にもMLBは現在しっかりと取り組んでいる。

筆者が保有している、3000本安打の打席のために用意されていた特別球

  実際にキャッチしたファールボール等にはもちろんホログラムは貼られない。感動の思い出ではあるが、取った本人以外は本物どうかの真偽は分からない。

 このホログラムという証明の存在によって、将来にわたってその記録を残すことのできるという素晴らしい文化に魅せられ、メモラビリアを集めることになった。日本の野球界でも例えば佐々木朗希の初登板の際など同様の試み(使用場面を特定したうえで)をチャレンジして欲しいと願っている。

 実際に大谷が初勝利を挙げた試合で投げたボールは、13球がホログラムを貼られたという証明が残されている。記念の初球と初三振のボールはホログラムが貼られたあと大谷本人にプレゼントされ、そのあとご両親にプレゼントされたそうだ。

 今は日本からアメリカへの旅行、そして観戦が難しい日々が続いているが、コロナ禍が収束した際には、大谷のホームランボールを狙ってライトスタンドで観戦するもよし、また試合終盤に球場の売店へ足を運べば、その日に大谷が投げたボールやヒットを打ったボールも見つかるかもしれない。

 ボールだけではなく、試合で使われたベースや球場のダート(土)、球場で使われた壊れた椅子、まで販売していたりする。何でも売ってしまうアメリカらしさだが、球場に行ける日常が戻った際にはチェックしてみてはいかがだろうか?

マグワイアの70号ボールはなんと2億9000万円

大谷翔平メジャーデビュー戦、初安打の試合で使用されたボール

 さて、大谷のホームランボールの話に戻ろう。

 通常ホームランボールはファンの手に渡り、先に説明したホログラムは貼られず、証明の類はされないのだが、昨年はコロナ禍による特殊事情により、大谷のホームランボールが販売された。2020年8月に大谷が放ったツーランホームランのボールの落札額が1球7500ドル(約80万円)である。

大谷の“80万円”2ランホームランのボール※2020 MLBオークションより

 ボール1球に80万円という金額について“高すぎるのでは”と思う方がほとんどだと思うが、ボールを眺めるだけで、そのシーンの情景や感動をよみがえらせてくれる。

 球場の熱気の中、大谷のバットに当たり、そしてホームランになったボール。かつMLBの証明もされているので将来へ渡って価値を伝えていくことができる。ボール1個と言えど、まさに美術品・芸術品なのである。

 なにより、かつてアメリカでマーク・マグワイアの70号ホームランボールは270万ドル(約2億9000万円)で取引されたこともあるのだから。

大谷のホームランボールはさらなる価値高騰となるか©Getty Images

 今年、すでに数々の伝説を生み出している大谷翔平。MLBオークションで出品されるだろうお宝を通じてその熱気・空気を感じたいと思っている。ちなみに、現在MLB主催オークションでは、4月26日にリアル二刀流で1072日ぶりに勝利をあげた試合の大谷投球ボールが、現地5月17日終了で出されている。

 果たしていくらで落札されるのか――こちらも楽しみにしたいと思う。

文=Aki

photograph by Getty Images