巨人のマシンガン継投を危ぶむ声が広がっている。

 直近の6月1日からの西武3連戦では、初戦で先発の高橋優貴投手が4回途中に足の違和感を訴え降板するというアクシデントがあったとはいえ、その後は畠世周投手から6投手を注ぎ込む小刻みなリレー。翌日の第2戦も先発の横川凱投手を3回で諦めると2番手の戸根千明投手から5人の投手を投入した。そして3日の第3戦では先発のエンジェル・サンチェス投手が6回途中まで投げたものの、その後は大江竜聖投手、高梨雄平投手をいずれも左打者のワンポイントで起用する継投でリリーフ陣を5人も使った。

 結果はこの3連戦は9回までリードしていた2試合を追いつかれて引き分け。3連戦3連勝の可能性もあったシリーズは1勝2分けという結果に終わっている。しかも畠と中川皓太が3連投、大江が2連投して、移動日なしで次戦の日本ハム戦へと突入していくことになったわけだ。

 ただ、こうしたマシンガン継投はこの西武3連戦に限ったことではない。

デラロサの戦線離脱から迷走が始まった

 シーズンを通しても西武戦が終わった55試合消化時点で、巨人の延べ登板投手数は246投手で、1試合平均の投手投入数だと4.47人。阪神の3.62人を大きく上回る結果となっている。

 きっかけとなったのは4月15日の守護神、ルビー・デラロサ投手の戦線離脱だった。

 今季のデラロサは新型コロナウイルスによる隔離期間の問題などで開幕に間に合わずに、3月31日にチームに合流。その後は4月1日の中日戦で今季初セーブをあげると、6試合で5セーブを記録し、中川と共に勝ち試合の8、9回を2人で賄う役割をきっちり果たしていた。

 この間の投手陣の延べ登板数は12試合で39人で1試合平均3.25人と、極めて平均的な数字に収まっていたわけだ。ところがそのクローザーが米国の市民権を獲得するために、4月15日に帰国。約40日にわたってチームを離れたところから迷走が始まった。

「投手陣がもたない」と一部のOB、評論家から声が

 この事態に原辰徳監督は、開幕前には「守護神候補」に挙げていた中川ではなく、球の威力を買ってチアゴ・ビエイラ投手の守護神起用を模索。しかしビエイラは制球難が露呈して、失格の烙印を押されると中川に加えて鍵谷陽平、高梨、野上亮麿らの各投手を状況や点差に応じて試合を締めくくる投手として起用せざるを得なくなっていった。

 そうしてリリーフ陣の役割分担が崩れたことで、臨機応変、悪く言えばその場凌ぎの投手起用で戦うことになっていったのである。

 それが今の巨人の現状であり、その“その場凌ぎ感”に対して、「これでは投手陣がもたない」と一部のOB、評論家から声が出ているという訳だ。

 ただ、この戦いは原監督の中ではある程度は、想定内であることも間違いない。

「昨年に続いて今年もコロナ禍という状況の中で戦わなければならない。ということは、例年のシーズンとは全く違う特別なシーズンになるということでもあると思います」

 原監督がこう語っていたのは、開幕前に話をしたときのことだった。

常に万全の状態で戦えないケースを想定している

 特別なシーズン。

 その1つには昨年もそうだったが、どうしても選手のコンディショニングが難しくなり、ケガ人やあるいは、新型コロナへの感染者等の出る可能性も想定せざるを得ないこと。要は常に万全の状態で戦えないケースを想定し、それに備えておかなければならないということだ。

 実際問題として巨人でも4月にチーム内クラスターが起こって丸佳浩外野手、ぜラス・ウィーラー内野手らが戦線離脱する事態が起こった。

 そうして主力選手が数人単位で欠けることを想定しながら、調子のいい若手選手を随時投入できるようにスタンバイさせる。それが序盤の松原聖弥外野手、香月一也内野手らの活躍であった。

「もちろん一番大事なのは選手のコンディショニングをどう維持していくかなのですが、同時にシーズンを戦い抜くためにはコロナ禍という特別なシーズンだからこそ采配、選手起用で考えなくてはならないことがある」

 ただ、そうした若手の抜擢と同時に、原監督が語るのは選手を欠いたときには、ある程度、ムリをしてでもベンチワークでカバーしていかなければならない局面が出てくる。そのためにきちっと今季の特別ルールを活用することの必要性だったのである。

特別ルールの1つが9回打ち切り、もう1つは……

 そうした特別ルールの1つが9回打ち切りであり、もう1つが約1カ月間のオリンピックブレークなのである。

 特に原監督がシーズン前からカギとなると見ていたのが、7月16、17日のオールスターゲーム直後の19日から8月12日までの25日間にわたって設けられている、オリンピックによるペナントレースの中断期間だった。

「7月のあの時期に約1カ月間、試合が止まる。今年はその後からまた新たにシーズンが始まるわけで、当然、そこまでのシーズンとその後のシーズンの戦い方というのも変わってくることになるでしょうね」

 本来ならデラロサが戻った時点でリリーフ陣の再編を図りたかったのが本音だろう。だからこそ米国から帰国後、隔離期間を終えると二軍での実戦登板も経ずに5月21日にすぐに一軍登録をしてマウンドに上げた。多少の調整不足も登板することで解消するのではないかという目論見だったが、実際問題はあの短期での戦線復帰は、時期尚早だったというのが現実だ。

山口俊投手の巨人復帰も濃厚な状況

 そこで改めて二軍で調整をさせる一方で、7月のオールスターブレークという休養期間を見ながら、リリーフ陣に負荷がかかっても、フル回転して何とかデラロサの復帰まで凌いで勝ちを拾っていく。そうしてオリンピックブレークの期間に、改めて投手陣の再整備を行なって、ペナントレースのリスタート後に阪神を捕まえようというのが戦略だ。

 戦線離脱していたエースの菅野智之投手も戻り、サンフランシスコ・ジャイアンツを自由契約となった山口俊投手の巨人への復帰も濃厚な状況だ。もし山口が戻れば、8月には先発陣の再整備も完了して、リリーフ陣も少し楽な起用へと転換できる。

 そこからリーグ3連覇への道を探ろうということである。

 昨年の開幕前のインタビューで原監督はペナントレースを勝つことの難しさを語り「ペナントを勝つ前から日本シリーズのことを考えていたら、必ず足をすくわれる」と話していた。

虎の勢いが原監督を走らせている

 しかし昨年もリーグを連覇しながら、日本シリーズでまさかの2年連続の4連敗という屈辱を味わった。そこで今季は開幕前から、打倒ソフトバンクのためにも選手個々のレベルアップを掲げて臨んだシーズンだった。

 ただ、いまはまだシーズンを勝ち切ることに精一杯だからこそ、9回打ち切りとオリンピックブレークという2つの特殊事情を踏まえて、いまは必死のマシンガン継投で何とか阪神との差を守って、前半戦を乗り切る決断をしたということでもある。

 そう考えるとこの継投は裏を返せば、それだけ今年の阪神は強いという実感があるということだ。

 虎の勢いが原監督を走らせている──それもまた紛れもない事実である。

文=鷲田康

photograph by Kiichi Matsumoto