リッカルド・モントリーボはグラウンドの"賢人"だった。2019年に現役引退するまで、セリエAとイタリア代表の中盤を繊細なタッチのパスで彩ってきた。

 そんな稀代のファンタジスタにとって、サッカーボールは流転する人生のように現在も転がり続けている。かつてサッカーはプレーするものだったが、今は学ぶものになった。

 今、モントリーボはフィレンツェ近郊コベルチャーノにあるFIGC(イタリア・サッカー連盟)のナショナル・トレーニングセンターで、監督ライセンスの講習に勤しんでいる。

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 昨年12月中旬に始まった「UEFA A」クラスの同期生にはアレッサンドロ・デルピエロやダニエレ・デロッシ、クリスティアン・ビエリ、また旧友のジャンパオロ・パッツィーニといった歴戦の名手たちに加え、EURO2012ウクライナ・ポーランド大会でともに準優勝に輝いたイニャツィオ・アバーテとフェデリコ・バルザレッティの名前もある。

 指導者への道を歩み始めている"賢人"モントリーボにとって、A代表デビューした2007年から10年にわたって招集されて、66試合で袖を通した青いユニフォームへの思いは薄れることがない。

 甘苦に満ちたアズーリ色に対する記憶と、目の前に迫ったEURO2020へ挑む後輩たちへの希望を語った独占インタビュー。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙のマルコ・パソット記者の協力を得て、3回に分けてお送りします。

(翻訳&構成 弓削高志)

イタリアにとっての大いなる雪辱戦だ

――今回のEURO2020は、ロシアW杯への出場を逃し、深い失望を味わった伝統国イタリアが初めて臨む大きな国際大会です。大会出場にはどんな意味合いがあるのでしょうか?

モントリーボ 今度のEUROは、イタリア・サッカー界全体にとっての大いなる雪辱戦だ。今の代表チームには、3年前の予選敗退で味わった悔しさを晴らすための試練に挑む準備ができている。今回のイタリア代表は成長途上の若いチームだから、(コロナ禍による)大会の1年延期はチーム強化のための時間として大いに有効だったし、時間が経ったぶん雪辱への思いも強くなっているはずだ。改めて強調させてもらうけれど、イタリア代表のキーワードは「リベンジ」だよ。

――17年秋のロシアW杯予選敗退で、イタリアは失意のドン底に叩き落されました。

あのW杯予選で返す返す残念だったのは……

モントリーボ 不幸なことに、あの欧州予選でイタリアは(同組のスペインに1位通過を許し)プレーオフに回らざるを得なかった。返す返すも残念だったのは、プレーオフでの戦いぶりにまったくイタリアらしさがなかったことだ(※消極采配をくり返した当時の代表監督ジャンピエロ・ベントゥーラが選手たちの信頼を失い、プレーオフ期間中に両者の関係は決裂、代表チームは半壊していた)。

 勝負事なのだから、敗れることを受け入れなければならないときもある。しかし、僕はアズーリがほとんど実力を発揮できず、(プレーオフ2試合で)1ゴールも奪えないまま終戦を迎えたことが信じられなかった。

 あの屈辱的な敗戦が残した傷は、とても深い。「(予選敗退が決まった)2017年11月13日」は、すべてのイタリア人にとって"暗黒の夜"になった。あの夜、カルチョを愛する人たちの心が死んだんだ。

マンチーニは技術とチャレンジを重視している

――気を取り直して、現在のアズーリに目を向けましょう。ロベルト・マンチーニ監督が率いる代表をどう評価していますか?

モントリーボ マンチーニ監督はプレーのテクニカル・クオリティを何より重視している。フィジカル頼みやタフネスありきではなく、技術のある選手とチャレンジングなプレーにプライオリティを与えている点が評価できるし、とても僕の好みだ。さらに、若手選手を積極的に登用する勇気もある。それは、代表チームではとても難しいことだよ。

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――本大会に招集された26人の顔ぶれについてはどう思いますか?

モントリーボ (FWインモービレやGKドンナルンマら)絶対に不可欠な中心メンバーを除けば、複数の異なるポジションとタスクをこなせる、マルチロール・プレーヤーたちが評価されて多く選出されたという印象だ。

 国際トーナメントでは必ず不測の事態が起こる。短期間に集中開催される大会で(スタメンに)故障者が出れば、すぐさま穴を埋める代役を立てなければならない。マンチーニ監督が突発的な起用や急激な戦術変更にも柔軟に対応できる選手たちを何人も選んだのは、理屈にかなっていると思うよ。

優勝候補とみなされていないのは確か。でも……

――前回フランス大会で、イタリアは準々決勝で道を閉ざされました。今大会はどこまで勝ち上がれるでしょうか? 貴方も出場して、ファイナルに進出した2012年大会の再現は可能だと思いますか?

モントリーボ イタリアが今大会の優勝候補と見なされていないのは確かだ。大会の開幕時点では、2番手グループの一角というところだろうね。それでも、決勝進出は可能だと僕は思っている。もしかすると、優勝だって狙えるかもしれない。

――"予想屋"モントリーボの優勝候補を3番手まで挙げてみてください。

モントリーボ ダントツの鉄板候補は世界王者フランスだろうね。対抗でベルギー。その次がアズーリといったところかな。大会のダークホースは、間違いなくイタリアだ。

(第2回に続く。関連記事からもご覧になれます)

文=マルコ・パソット

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