オリンピックであれ、W杯であれ、メンバー発表前のラストゲームは、いつの時代も悲喜こもごもだ。

 持てる力を出し切って晴れやかな表情の選手もいれば、自身のパフォーマンスに満足できずに肩を落とす選手もいる。

 すでに選出が確定的で、本大会に向けて意見交換をする選手たちもいれば、アピールの機会すら得られず、失意を滲ませる選手もいる。

 4-0と快勝したU-24日本代表のジャマイカ戦終了後、オンライン取材に6人の選手が登場した。

 久保建英、三笘薫、堂安律、旗手怜央、相馬勇紀、上田綺世――。

 いずれもこの日、得点に絡んだ選手たちである。

 久保、堂安、相馬、上田に対しては、本大会のメンバーに選出されることを前提に、周りとの連係や個人のプレー、戦術のオプションについての質問が飛んだ。

旗手のコメントの大半はポジティブだった

 一方、三笘と旗手は、アピールやメンバー入りへの手応えを尋ねられた。

「どのポジションだろうと結果を出さないといけなかったので、ゴールやアシストができなかったのはすごく悔しい」

 そう振り返ったのは、本来の2列目ではなく、左サイドバックとして先発した旗手である。

攻守両面で持ち味を発揮した旗手©Toru Hanai/Getty Images

 もっとも、それ以外に発したコメントの大半は、ポジティブなものだった。

 その一例は、こんな具合だ。

「攻撃参加だったり、ボールを持ったときのパスだったりをすごく意識していた。今日が最後の試合だったので、公式戦のピッチで自分のやりたいことを表現できたのはすごくよかったです」

隠れたファインプレーで遠藤航のゴールを演出

 実際、12分には久保のパスからシュートに持ち込み、20分には斜めにスルーパスを流し込んで久保のシュートを導いた。

 隠れたファインプレーは、42分に生まれた。ペナルティエリアの角でボールを持った遠藤航の背後を駆け上がり、相手DFの注意を引くことで、遠藤のミドルシュートを"アシスト"したのだ。

 このランニングについて「あそこで大外を走れば、ボールを持った選手の選択肢を多くすることができる」と自画自賛した旗手は、60分間出場したジャマイカ戦に関して「僕が今持っている力は、出し切ったんじゃないかと思います」と振り返った。

三笘はなかなかアピールに成功してこなかった

 旗手と対照的だったのが、川崎フロンターレでチームメイトの三笘である。

 60分に途中交代する直前、得意とする左サイドからのカットインで中央に進入すると、鮮やかなスルーパスを通して上田のゴールをお膳立てした。

 しかし、その表情は決して明るくなかった。

「簡単なミスが多かったですし、1点には絡みましたけど、あれがなければ何もしていないところだったので、満足はいっていないです」

 実際、前半にはトラップミスをしたり、ドリブルが長かったりして、チャンスを潰すシーンがあった。

 この東京五輪代表チームには2017年12月の立ち上げから頻繁に招集されてきた三笘だが、アピールに成功してきたというわけではない。

 もっとも、19年までは筑波大学に在籍する大学生。コロナ禍で代表活動が一切中止となった20年に川崎でプロとなり、ルーキーながらJリーグ・ベストイレブンに輝いて大ブレイクしたのは、周知の通りだ。

ジャマイカ戦前に語った悲壮な覚悟

3月の代表戦での旗手と三笘©Getty Images

 そのため、1年2カ月ぶりの代表戦となった今年3月のU-24アルゼンチン戦では、進化を遂げた三笘のプレーに期待が掛かった。

 しかし、「自分のミスで何度も取られたシーンがあった」と本人も振り返ったように、違いを見せられなかった。

 そんな三笘が悲壮な覚悟を語ったのは、ジャマイカ戦4日前のことである。

「結果を出さないと落ちる。この1試合(ジャマイカ戦)に左右される立場だと思っています。そこはプレッシャーを掛けてやらないといけない。練習からアピールしていかないといけないと思います。オリンピックに出ることへの意志の大きさがプレーに表れてくると思うので、そういったところを出してアピールしたいと思います」

 強い覚悟で臨んだだけに、ジャマイカ戦の1アシストでは、なんの慰めにもならなかったのかもしれない。

横内監督の思いが伝わる“フロンターレトライアングル”

 それでも、Jリーグで圧倒的な結果を残している三笘を、なんとか戦力として生かしたいという横内昭展監督の思いも伝わってくる。

 この日は、旗手、田中碧とともにスタメン起用し、"フロンターレトライアングル"を形成した。加えて今合宿のトレーニングでは、三笘が川崎でプレーし慣れている4-3-3も試しているのだ。

三笘は田中碧と近い位置関係を取った©AFLO

「自分たちに何ができるか。オプションとして幅を広げる意味で試してみました」

 横内監督の説明を聞けば、4-3-3を"三笘シフト"と表現するのは乱暴かもしれないが、4-2-3-1の左サイドハーフより、三笘がプレーしやすくなるのは確かだろう。

 このチームでは結果を残せていないが、ジョーカーとして起用すれば、これほど心強い選手もいない。

「名古屋でフィッカデンティ監督の元でプレーして、守備の強度が上がったと感じる」と語る相馬をスターターとして起用し、三笘を切り札として懐に忍ばせておく。

 オリンピック本大会でも選手交代は5人まで認められる。流れを変える攻撃のカードはいくつでも用意しておきたい。

 本大会のメンバーのうち、残り3〜4枠を懸けた争いは、他にもある。

CBは町田か瀬古か、SBもできる橋岡か

 今回、吉田麻也の隣で町田浩樹と追加招集の瀬古歩夢を45分ずつプレーさせたのは、吉田、冨安健洋、板倉滉に続く4人目のセンターバックを見極めるためだろう。

 190cmの長身と左足から繰り出すロングフィードは魅力ながら、ジャマイカ戦ではやや不安定だった町田に対し、瀬古は空中戦で存在感を示し、システム変更後の3バックも無難にこなした。

 とはいえ、センターバックでしか起用できないことをどう考えるか。その点、60分から右ウイングバックに入り、6月3日のA代表戦ではセンターバックを務めた橋岡大樹のほうが、ベンチワークを広げてくれそうだ。

橋岡にはCB、SBの両方ができるという特徴がある©Getty Images

食野と三好のアタッカー、それとも林大地?

 5人の交代枠を最大限に活用するうえで意味を持ちそうなのが、途中から3-4-2-1のシャドーに入った食野亮太郎と三好康児だ。

 食野は得意とする狭いエリアでの突破から1度、三好はGKへの激しいチェックと左足のクロスで2度の見せ場を作ったが、ジョーカーとしての決定打には欠けただろうか。

 スーパーサブであれば、この日は出番のなかった林大地のほうが計算は立つ。三好の存在は同じレフティの堂安、久保のバックアップとして心強いが、コーチングスタッフは、そのどちらを重視するのか。

 試合途中から3バックを試し、オプションの確認も行った横内監督は試合後、「骨格はある程度見えてきた」と明らかにしたうえで、「スタッフ、森保監督も含めて、もう1回見直して、考えていきたい」と語った。

 残る切符は、おそらく3〜4枠。誰の元に吉報が届くのか――。

 近く行われるメンバー発表を楽しみに待ちたい。

東京五輪18人枠の予想布陣図。ベースは4-2-3-1だが、4-3-3や3-4-2-1のオプションも備えている

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文=飯尾篤史

photograph by Masashi Hara(L)/AFLO(R)