3月のアルゼンチンとの2試合、そして今回、A代表、ガーナ、ジャマイカとの3試合を終え、東京五輪を戦う18名のメンバーを決める選考マッチが終わった。

 基本的には、今回の招集メンバーから18名が選出されることになる。

谷、久保、上田など「メンバー入りほぼ確定組」は?

 OA枠の吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の3名は当確となり、残りは15名。GKは2名なので、フィールドプレイヤーは13名だ。

 チームの主力という視点だと、ガーナ戦でのメンバーが本大会を見据えたファーストセットになる。この試合では6−0という結果を出しており、スタメン組のGK谷晃生、DF冨安健洋、MF中山雄太、田中碧、堂安律、久保建英、相馬勇紀、FW上田綺世はほぼ当確と言えるだろう。

 また、ガーナ戦では交代選手のファーストチョイスで、ジャマイカ戦では上田へ糸を引くようなラストパスでアシストし、攻撃で違いを見せた三笘薫やセンターバックとボランチを兼ねる板倉滉。さらにトップ下から左サイドバックまで攻守に高いユーティリティー性を持つ旗手怜央は順当にメンバー入りすると思われる。

 これが、ほぼ当確の選手の顔触れだが、そうなると残りは、GK1名、フィールドプレイヤーは3名になる。

 果たして、誰が運命の当落線上にいるのか。

GK)大迫敬介は五輪行きを死守できるか?

 GKは、3年半前のチームのスタート時からゴールマウスを守ってきた大迫敬介がファーストチョイスだった。今回の3試合はそれを確固たるものにすべき絶好の機会だった。そのために大迫は、「試合で自分のプレーを出すということ。あと、試合じゃない練習の時間が多いので常に自分の存在を示し、表現するのが大事」と語っていた。

 だが、最大のアピールの場となるべきA代表の試合で前半に2点を奪われ、交代。その後、ガーナ戦、ジャマイカ戦とアピールするチャンスがなかった。

 一方、ジャマイカ戦で途中出場した鈴木彩艶はデビュー戦ながら安定していた。

 浦和で西川周作からレギュラーを奪いつつあり、粗さはあるもののシュートストップなどのセービングの技術が高く、キック力があり、まだ18歳で将来性もある。パリ五輪の世代だが、世界大会を経験することで次にも生かせる。

 GKは一度、ポジションを失うと取り戻すのが非常に難しい。谷晃生がレギュラーを手中に収め、後輩の突き上げが激しいなか、大迫は微妙なポジションに立たされている。

CB)町田か、それとも猛アピールの瀬古か?

 センターバックの争いは、熾烈だ。

 中2、3日で決勝まで6試合を戦う過密日程で、しかもメキシコ、フランスという強豪が相手のグループリーグを突破し、決勝トーナメントでは世界の強者との負けられない一発勝負がつづく。その連戦をセンターバックが無傷で戦い通すのは難しい。スタートは4バックだが、ジャマイカ戦の後半のように3バックにシステムを変更するケースも出てくるだろう。

 また、ジャマイカ戦直前の9日には怪我のため冨安がチームを離脱。その状態が気になるが、不測の事態を考えておく必要がある。そうしたことを踏まえると、本職のセンターバックが必要になる。

 ガーナ戦までは、町田浩樹が吉田、冨安につづくポジションをキープしていた。

©Masashi Hara

「東京五輪を目標にやってきました。鹿島で試合に出ているので、今は自信をもってやれている。(U-24日本代表に)残りたいという気持ちが非常に強いです」と語るように、強い覚悟で選考レースに臨んだ。だが、A代表での試合では3失点を喫し、ほとんどいい場面を見せることなく終わっている。ガーナ戦は出番がなかったがジャマイカ戦はスタメン出場を果たし、名誉挽回のチャンスをもらったが、町田の特徴である空中戦の強さを見せるシーンや左脚の精度の高いキックから攻撃に繋げるシーンがほとんどなく、前半45分で交代になった。

 町田に代わって後半から出場したのは、瀬古歩夢だった。

 怪我で離脱した冨安の代わりに追加招集された瀬古は、「正直、もう可能性はないと思っていました。最初のメンバーに入れないと思った時は……。今回、怪我人による追加でも選ばれたのは嬉しかった。もう一度、アピールのチャンスをもらったので、しっかりやらなあかんなと思いました。もうやる気もりもりです」と、アピールに並々ならぬ決意を見せていた。実際、その気持ちはプレーにも反映されていた。もともと3月のアルゼンチン戦で好プレーを見せており、森保一監督の評価は非常に高かったが、ジャマイカ戦では相手にほとんど仕事をさせなかった。

 吉田と冨安に続いていた町田は、これといった違いを見せられず、2試合を戦い終えている。瀬古は、ワンチャンスを活かして、最終コーナーで追い上げてきた。

 ジャマイカ戦はセンターバックの競争において、明暗を分けた。

SB)世界の強豪相手に“本職”は必要か

 右サイドバックの菅原由勢、橋岡大樹、左サイドバックの古賀太陽も当落ラインのギリギリにいる。左サイドバックは、守備の中山雄太、攻撃の旗手怜央という異なるカラーがワンセットになっているが、2人とも本職ではない。本大会の相手は世界の強豪だ。ガーナやジャマイカとは攻撃の質も量も速さも違う。そういうチームや選手と彼らが対峙した時、不安が残る。

 一方、ガーナ戦、途中出場した古賀はレフティの左サイドバックとして溌剌としたプレーを見せたが、ジャマイカ戦は出場機会が与えられなかった。すでに当確なのか、それともノーチャンスになったのか……。見極めが非常に難しい。

 菅原は、A代表との試合で悔しい思いをした。「失点シーンもそうですし、自分のプレーができていなかった。悔しい経験でした。チャンスがあれば失点をゼロに抑えて自分の武器と特徴を出したい」と語り、ラストチャンスにかける意気込みを見せていた。

 だが、ガーナ戦、ジャマイカ戦ともに、そのチャンスはやってこなかった。豊田スタジアムは名古屋グランパスのホームで思い入れのある場所。そこで自分の良さをしっかりとアピールしたかっただけに、本人は悔しい気持ちが大きかっただろう。

 橋岡はA代表との試合でセンターバックとして出場し、対人の強さなどを見せたが、開始2分で先制点を奪われ、3失点を喫するなどアピールできなかった。ラストチャンスとなったジャマイカ戦の後半15分、旗手に代わって入り、途中からは右ウィングバックとしてプレーした。

橋岡にはCB、SBの両方ができるという特徴がある©Getty Images

 無難にプレーし、無失点に貢献したが、酒井と比較すると攻守に迫力を欠いてしまう。酒井を出場停止などで欠いた場合、ボローニャで右サイドバックの経験がある冨安をスライドさせることができるので、センターバックの控えがいれば十分に埋められる。そういう判断になると、無難さはむしろマイナスに左右するかもしれない。

右MF)堂安の代わりは「三好か、食野か、それとも……」

 中盤は、右MFがどうなるか……。

 左MFは、相馬と三笘のワンセットになっているが、右MFの堂安の代わりは未定だ。そこを旗手の起用で補うのか。それとも三好康児、食野亮太郎のどちらかを選ぶのか。

 三好はA代表との試合に出場したが、後半28分に堂安と交代した。個での突破で打開を見せようと気持ちが入っているのは見てとれたが、ほとんどチャンスを作れなかった。実際、「点が取れていないですし、チャンスを作れていなかったのは自分の力不足です。結果という部分でシビアに考えるとまだまだ足りていない」と反省を口にしている。置かれている状況の厳しさを肌で感じていたのだろう。次の試合に向けて、「自分の力を示していくだけ」と巻き返すべく、静かに闘志を燃やしていた。ガーナ戦は出番がなく、ジャマイカ戦は後半30分、堂安に代わって出場した。ラストチャンスとばかり、ギラギラしたものは感じたが、個の突破も周囲との連携も結果にはつながらなかった。

 食野はガーナ戦で途中出場、ジャマイカ戦は久保に代わって後半20分に出場している。ガーナ戦もそうだが「元気印」が爆発するようなプレーが見られない。やりにくさを感じているわけではないだろうが、「自分がやらないと」という意識が強すぎて、少し空回りしていた。ジョーカーとして結果を生み出す期待感は、前ほどは感じられなかった。

FW)残りの「1枠」を争うのは…?

 FWは、上田以外の3人の争いになっている。

 田川亨介はA代表との試合にスタメン起用された。「スピードで背後に抜け出す部分とアグレッシブに戦うことが自分の持ち味」と語り、意欲的にプレーしたが、「決めていれば……」という前半21分の決定機を外すなど、存在感を示せず、後半12分、林大地と交代した。スピードがあるのでFC東京ではサイドMFとして起用されているが、スペースがないと田川の良さは活きない。そういう意味で1トップの役割を果たすのは、彼の個性を活かす意味で難しい気がしてしまう。

©JMPA

 林は、A代表との試合で後半12分から出場。ゴールへの気迫を見せるもA代表の壁を打ち破れず、アピールとはまではいかなかった。アルゼンチン戦は、瀬古からの縦パスを受けて素晴らしいゴールを決めて一発勝負に強いところを見せたが、今回はアピールして加点とまでいっていない。気持ちの強さは国際試合向けだが、それだけではメンバー入りは厳しい。ガーナ戦、ジャマイカ戦という大事な2試合での出場機会ゼロは、林の置かれた状況を雄弁に語っている。

 前田は、ガーナ戦、後半22分に上田に代わって出場したが、自分の良さを発揮できずに終わった。スペースがあるとスプリント力を活かした突破を見せるが、そういうシーンはほとんどなかった。

 また、チームが25本ものシュート打っている中でシュート数が「ゼロ」というのも気になるところだ。ジャマイカ戦ではスタメン起用されるも、開始早々の決定的なチャンスを立て続けに2本外すなど、シュートの精度にも課題を残した。だが、スピードは魅力だ。

 ロンドン五輪では、永井謙佑のスピードを活かしたカウンターで勝ち上がった。前田は永井ほどの安定感や決定力はないが、それでも一発の魅力は森保監督が欲するところ。3人のFW争いの中では、前田が田川、林を1歩リードしていると言えよう。

力があっても落選する…「五輪代表」の厳しさ

 正式な18名のメンバー発表は今月下旬の予定だ。

 過去には、小野伸二と遠藤保仁がシドニー五輪の時にメンバーから落選し、鈴木啓太もキャプテンでありながらアテネ五輪を戦う日本代表から漏れた。ロンドン五輪の時は、大迫勇也、原口元気が落選している。18名という狭い枠なので、力があっても編成上、落選する可能性があるのが五輪を戦うアンダーカテゴリーの代表だ。

 ただ、まだ何が起こるか分からない。

 崖っぷちに立たされた選手でも最終段階で一発逆転があるかもしれない。メンバー発表のその日まで、Jリーグに戻った選手は、少しでも違いを見せていくことが求められる。

 森保監督が18名の名前を出す瞬間まで競争はつづく――。

文=佐藤俊

photograph by JIJI PRESS