6月13日の交流戦終了時点で貯金「20」、4月から首位を快走する阪神の象徴となっているのが、“怪物ルーキー”佐藤輝明。発売中のNumber1029号 特集・阪神タイガース「猛虎新風伝」では、その佐藤が表紙を飾り、巻頭独占インタビューで掲載しています。ここでは、本編で書ききれなかったエピソードをご紹介します。

 5月下旬の昼下がり、「よろしくお願いします」の声とともに甲子園のグラウンドに“怪物”が姿を現すと、それまでどんよりとしていた空から、俄に陽の光が差し込み始めた。

 阪神タイガース特集は2017年以来、4年ぶりで、その時の表紙は当時の金本知憲監督。これまで数々の阪神特集号を組んできた本誌でも選手の表紙は意外に少なくて、さらにルーキーが表紙を飾るというのは本当に異例で……。

「そうですか、ありがとうございます」

 表紙撮影を担当した編集者の前のめりな説明に対して、佐藤輝明の回答は実にシンプルかつ明快だった。撮影のため対峙するのはポーランド出身の外国人カメラマン、マチェイ・クーチャさん。写真を撮られ慣れていない新人であれば臆しても無理のないシチュエーションだが、バッターボックス上の姿と同様、佐藤に動ずる気配は全くなかった。

「イイネ!」「グッド!」というカメラマンの賛辞とともに次々と撮影されるショットに漂うルーキーらしからぬ大物感――。そして撮影の最後には、ややはにかむような笑顔とともに、お決まりのZポーズも披露してくれた。

サンズ「彼のバッティングを見るのは私もワクワクします(笑)」

 こうした大物感は佐藤の大きな魅力のひとつ。今号でインタビューに応えてくれた選手たちも一様にこう声を揃えている。

「テルには、いい意味で怖いもの知らずで行ってもらいたい」(大山悠輔)
「輝が助けてくれた試合もたくさんあったし、輝が苦しんでいる時に自分が何とかしてあげたいという打席もありました」(梅野隆太郎)
「ファンの皆さんと同じく、彼のバッティングを見るのは私もワクワクします(笑)」(サンズ)
「同期の佐藤(輝明)選手と一緒に行動することによって、そういう(マイペースな)部分がうつってしまったかもしれないです(笑)。彼はしっかりと自分を持っていますから」(中野拓夢)

 どのインタビューも「チームのいま」を語るうちに、自然と話題は佐藤のことになっていった。

 ちなみに本誌の表紙を新人野手が単独で飾るのは、1986年の清原和博(159号)、1993年の松井秀喜(312号)に次いで史上3人目となる。昭和、平成の怪物に続いて表紙となった “令和の怪物”佐藤自身は、今回のインタビューのなかで、「好きな選手」として別の大物の名前を挙げた。

「小さい頃からメジャーリーグが好きでよく観ていました。とくにイチローさんのプレースタイルというか、打っても表情を変えない、クールな感じが好きでした。自分もどちらかというと感情を表に出すタイプではないと思います」

 スタイルは違えども、ファンからも「メジャー級」「まるで助っ人外国人」と声があがる佐藤の日本の枠に収まらないスケール感には、幼い頃から観ていたイチローの野球が大きな影響を与えているのかもしれない。

 彼のスケール感についてもう一つ、チームの井上一樹ヘッドコーチは今号の取材の中で、チームみんなが良い風を吹かせようと必死に羽ばたく中で「その羽をとんでもなく大きくしてくれた」とも例えてくれている。

 佐藤が大きくした羽で、猛虎は今シーズン、天高く空を駆けることができるか――。

<※Number本誌撮り下ろしの佐藤輝明のプレー写真はこちらから>

文=Number編集部

photograph by Maciej Kucia