いよいよ、東京五輪が始まりますね。本番を前に、改めて男女バレーボール日本代表メンバーを見ながら大会をプレビューしたいと思います。

 通常、バレーボールの国際大会は14名の選出ですが、オリンピックは12名。私自身も経験がありますが、メンバーが発表されると一気に緊張感が高まります。

 2012年のロンドン五輪ではスタートから出場する立場ではなかったので、自分が12名に選ばれた時、まず感じたのは「やったー!」ではなく、「この中で自分が何をすべきなのか」という責任感の重さ。オリンピック本番まで、自分が残った意味を必死に考える日々でした。
※NumberWeb以外でご覧になっている方は記事末尾の「関連記事」から ◆東京五輪バレーボール日本代表一覧 をご覧ください。

 そんな実体験と重ねながらまず女子の12名を見て、目を引いたのはミドルブロッカーが4人も選ばれていることです。コートに立つ7人のうち、リベロを除けばセッターが1人、ミドルブロッカーが2人、オポジットを含めればアウトサイドヒッターは3人。必然的にリザーブメンバーもアウトサイドヒッターの人数が増えることが多く、実際にロンドン五輪ではミドルブロッカーが3人であったのに対し、アウトサイドヒッターは私を含め6人でした。

 その日の調子によって途中出場することももちろんですが、戦略として「2枚替え」を活用していたので、セッターの竹下佳江さんが前衛に上がった終盤、私が竹下さんと代わり、新鍋理沙さんとセッターの中道瞳さんが交代して、前衛の攻撃枚数は3枚プラス後衛のバックアタックを含めた4枚の攻撃を維持する。それが日本の戦い方でもありました。

ロンドン五輪の狩野舞子 ©︎Asami Enomoto/JMPA

2枚替えは消防車と救急車

 男女に限らず日本や世界でも「2枚替え」はスタンダードで、眞鍋政義監督(当時)も現役時代は2枚替えで出場する機会が多くあったと聞きました。その経験からよく言われたのは「2枚替えは消防車と救急車」。流れが悪くなったところで鎮火し、再び自チームに流れを引き寄せる。それが2枚替えで投入される選手に与えられる役割だと理解し、臨んできました。

 もちろん試合によっては、スタートの選手が好調で試合の流れもよければ出番が来ないこともあるし、「何もできなかった」と感じることもありました。それでも私に求められるのは、主に前衛でのブロックだったのでそれだけは必死にやろうと思っていました。

 東京五輪に出場する女子日本代表も、5月1日の中国との親善試合では、黒後愛選手と籾井あき選手に代えて田代佳奈美選手と長岡望悠選手を投入するなど、2枚替えをうまく活用していましたが、残念ながらネーションズリーグでも出場機会がなかった長岡選手は東京五輪の12名には入らなかった。

 個人的にも応援している選手なので、とても残念ですが、その分、石井優希選手や林琴奈選手が2枚替えで投入されるかもしれないし、もしかしたらブロックを重視しただけでなく4人選出されたミドルブロッカーからライトに入る選手が出てくるのかもしれない。

 本大会に向け、今はさまざまな策を練り、チームを固めている状況。ネーションズリーグでもほぼすべての試合にスタメン出場した古賀紗理那選手、黒後選手、石川真佑選手が中心になると思いますが、誰をどんな状況で投入するか。それぞれの選手が自らの役割をどう捉えて戦うのか。本番がとても楽しみです。

荒木絵里香、黒後愛らとともにチームの核を担う古賀紗里那 ©︎FIVB

キーマンは20歳セッター籾井

 バレーボールは団体スポーツなのでもちろん全選手に注目していますが、その中であえてキーマンを挙げるなら、やはりセッターの籾井選手。点を獲るのはスパイカーですが、最も多くボールに触るセッターの役割はとても大きい。

中田監督から期待を寄せられるセッターの籾井あき ©︎FIVB

 中田久美監督が就任後、さまざまなセッターが選出される中、最後に選ばれたのが籾井選手。ネーションズリーグを見ていると、まだまだスパイカーがうまく打っている、助けてもらっている印象も強いですが、籾井選手をセッターとして戦うことをチームとして決めた以上、どんな戦いをするか。個人的にも注目していますし、(八王子実践)高校の後輩でもあるので、応援したいですね。

 男子の12人を見た時、率直に感じたのは五輪の1年延期で明暗が分かれた、ということです。“もしも”を言っても意味はないですが、もし東京五輪が昨年行われていたらメンバーも違っただろうな、と。

 特に昨年、一昨年まではチームの中で精神的支柱であった柳田将洋選手、福澤達哉選手が外れてしまったのは驚きましたが、同時に感じたのはピークを持ってくることの難しさ。そして、この大事な場面でしっかりアピールできた選手が選ばれたということ。本当にシビアな選考の末に選ばれた12人だと思います。

高梨、大塚、高橋「本当にすごい」

 新戦力という面で言えば、アウトサイドヒッターの高梨健太選手、大塚達宣選手、高橋藍選手。3選手ともネーションズリーグが初めての海外勢との試合で長期遠征であったにも関わらず、あれだけの結果を残せたのが本当にすごい。

 自分と比べて恐縮ですが、私が日本代表に選ばれた初めての海外遠征では「何もできなかった」という記憶しかありません。どんな相手にも物怖じせず、自分の長所をアピールする。高梨選手はサーブも良く、攻撃力もあるとても安定した選手で、大塚選手も急にオポジットへ入っても器用にこなす。高橋選手は攻撃力だけでなく、何といっても守備力がずば抜けています。

注目の大学生コンビの一人、高橋藍 ©︎FIVB

 ネーションズリーグでもメンバーを固定する女子に対して、男子は流動的で五輪本番でもその日、調子のいい選手を起用する。見方によっては固定したほうがいいのに、と感じるかもしれませんが、裏を返せばチームとしてどんな戦い方をすべきかが明確で、誰が入ってもそれぞれ役割を果たせる能力、技術があるということ。

 石川祐希選手にお話をうかがわせていただいた際、「日本はチームで戦えば強い、全員で頑張ろうと考えられがちだけれど、最後は個人技が大事だ」と話していました。まさにその通りで、いくらコンビネーションが大事だと言ってもその前に個々の技術が高くなければ求められる質にはならない。石川選手はイタリアでプレーする中で実感しているのだと思いますが、そんな“石川イズム”がチームや他の選手にも浸透している。だから誰が出ても同じように戦えるし、見ていて面白いバレーボールができる。いい状態に仕上がってきているのではないでしょうか。

 その中でキープレーヤーを挙げるならば、やはり石川選手です。

 誰が出ても力を発揮できるチームではありますが、攻守において中心になるのは石川選手。ネーションズリーグでも対戦相手のほぼすべてがサーブで石川選手を狙い、潰しに来たことからも明白です。すでにイタリアでも活躍し、各国の選手とリーグで対戦し、石川選手のデータやクセもわかっている。それでもさらに上を行くための準備を重ねていますし、ご自身でもどこまでできるかを楽しみにしていました。

 石川選手の存在、プレーが日本の結果にも直結する。少し大げさかもしれませんが、それぐらい重要で影響力の大きい選手であるのは確かです。

イタリアで多くの経験を積んできた石川祐希。キャプテンとして代表チームを牽引する ©︎FIVB

カギは男女ともに2戦目か

 男女とも、オリンピックではそれぞれ6チームによる予選グループリーグを勝ち抜いた上位4組、計8組が決勝トーナメントに進出します。予選を上位で抜ければ一方のグループリーグ下位と対戦するので、できるだけ上位でグループリーグを抜けたい。

 そのために、重要なのが男女ともに2戦目です。男子はネーションズリーグで敗れたカナダ、そして女子は18年の世界選手権を制したセルビア。

 男女共に初戦(男子はベネズエラ、女子はケニア)は格下の相手になるので勝利するのは必須として、3戦目以降、男子はイタリア、ポーランド、イランと強豪が続き、女子もブラジル、韓国、ドミニカ共和国、まさに1戦必勝の戦い。

 決勝トーナメント進出、ベスト8に向け男子はベネズエラ、カナダ戦は絶対に負けられない戦いであり、メダル獲得を目指す女子はセルビア、ブラジルという強豪相手にどんな戦いができるかが決勝トーナメントを占う試金石にもなります。

 オリンピックは男女が交互に1試合ずつ、1日試合をすれば次の日は休み、というスケジュール。体力的には楽なように見えますが、実は敗れた試合の翌日は引きずってしまいがちで、時間が空くのはプラスばかりではありません。

 決勝トーナメント進出、さらにその先の勝ち上がりを見据え1勝、1ポイントが重要になる予選グループリーグ。男女共にすべての試合に注目していただきたいですが、特に2試合目は要チェック、必見です。

 アスリートにとってオリンピックは長い時間をかけ、さまざまな思いをかけて臨むとても大切な大会です。ましてそれが自国開催。この大会に向けて戦ってきた選手の覚悟はどれほどか。想像するだけで胸が苦しくなりますが、誰も経験したことのない事態に見舞われる今、「頑張れ」「頑張る」すら言えない。私には想像もできない状況です。

 そんな中、縁あって『狩野舞子の知るスポ!』という番組でMCを務めさせていただくことになりました。今知りたいスポーツの第一人者をゲストへ招き、あまり馴染みのないスポーツの魅力を伝えることを目的とした番組で、多くのアスリートに話を機会に恵まれています。

 現役時代、バレーボールは国際大会になればゴールデンタイムで放映され、報じられる機会も多い。正直それが煩わしかったり、プレッシャーになっていたのも事実です。でも知っている人が少ない、競技人口が少ないというだけで「マイナー」とされる競技の選手たちは「オリンピックで結果を出してもっとたくさんの人に知ってほしい」と溢れる思いと熱を、まだまだMCとして未熟な私にも一生懸命伝えてくれる。当時の自分を申し訳なかったと思うと共に、とても貴重な機会だなと感じています。

 スポーツ、オリンピックに関して、人それぞれ、さまざまな感情があります。そんな今だからこそ、アスリートだった私も少しでも多くの思いや熱、スポーツの魅力を伝えたい。東京五輪で戦うアスリートだけでなく、少しでも多くの声を伝えられるように。しっかりと、見届けたいと思います。

※NumberWebでは東京五輪期間、狩野舞子によるバレーボール解説コラムを掲載予定。

(構成/田中夕子)

文=狩野舞子

photograph by FIVB