「なぜ東京オリンピックの野球競技に、大谷翔平は出ていないの?」

 読者各位の中には会社や家庭で、そんな質問をされたことがある人もいるだろう。その答えはMLBが、オリンピックに関わっていないからだ。

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 野球の五輪代表は、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)が開催する予選(プレミア12含む)によって選抜されている。MLBはWBSCとは資本関係があるが、基本的にノータッチだ。そして規則でMLBの「26人枠(今季は特例で28人枠)」つまり、レギュラークラスのメジャーリーガーは、五輪やその予選には出ないことになっている。

 だからマイク・トラウトも大谷翔平も東京五輪に出場することはできない。メジャーリーガーのほとんどが五輪には出場経験がない。

 対照的にNPBは、選手がWBCや五輪で活躍することを大いに奨励し、侍ジャパンというチームまで作っているくらいだから、スター選手の多くは五輪の出場経験を持っている。

 でも、オリンピックは世界最大の「アスリートの祭典」である。野球も世界最高の選手たちによって金メダルを争うべきではないの? もっともな意見だ。

 では、せっかくなのでアメリカ、ドミニカ共和国、日本の代表メンバーに今、旬のMLB選手が加わったらどうなるか――をシミュレートしてみよう。

アメリカの打線を組んでみると……

 まずは野球の宗主国アメリカから。総合指標RCなどの数字が高い選手をポジションごとに選んだ(データは現地7月27日時点)。野手陣は打線を組んでいる。

<野手陣>
1 トレイ・ターナー(ナショナルズ)28歳
95試387打124安18本49点21盗 率.320 RC71.37/遊撃手
2 セドリック・マリンズ(オリオールズ)26歳
97試372打118安16本35点16盗 率.317 RC75.48/外野手
3 ニック・カステヤーノス(レッズ)29歳
86試337打111安18本59点2盗 率.329 RC70.15/外野手
4 ノーラン・アレナド(カージナルス)30歳
97試375打98安20本61点1盗 率.261 RC56.15/三塁手
5 マット・オルソン(アスレチックス)27歳
95試345打99安27本66点3盗 率.287 RC74.07/一塁手
6 JD・マルチネス(レッドソックス)33歳
94試361打108安20本64点0盗 率.299 RC70.21/DH
7 マーカス・セミエン(ブルージェイズ)30歳
96試389打107安24本62点10盗 率.275 RC70.81/二塁手
8 ジャレッド・ウォルシュ(エンゼルス)27歳
97試364打97安22本67点2盗 率.266 RC58.5/外野手
9 バスター・ポージー(ジャイアンツ)34歳
64試223打72安13本30点0盗 率.323 RC46.03/捕手

大谷と名コンビなウォルシュも入る

 MLB最高の韋駄天と言われるナショナルズのターナー、スイッチヒッターのマリンズと続くスピード感のある打線。4番は本塁打王3回、三塁守備も抜群のカージナルス、アレナドだ。JD・マルチネスは、大谷が台頭するまでは「最強のDH」として知られた。エンゼルスのウォルシュはチームリーダーのマイク・トラウト戦線離脱の穴を埋めた。同い年の大谷翔平とも名コンビだ。そして捕手は昨年全休も見事に復活したポージーとなる。

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 投手陣は先発3人に救援2人を選ぶ。防御率をもとにした総合指標PRで選ぶ。IL(負傷者リスト)入りした選手もいるが、それは考慮していない。

<投手陣>
先発/
ジェイコブ・デグロム(メッツ)33歳
7勝2敗92回 率1.08 PR31.79
ケビン・ガウスマン(ジャイアンツ)30歳
9勝4敗122回 率2.21 PR26.84
ブランドン・ウッドラフ(ブルワーズ)28歳
7勝5敗126回 率2.14 PR28.70

救援/
クレイグ・キンブレル(カブス)33歳
2勝3敗23S 36.2回 率0.49 PR15.07
マーク・メランソン(パドレス)36歳
2勝2敗30S 43回 率2.09 PR10.03

 投手陣は対照的に経験を積んだ30代が多い。デグロムはこのほどIL入りしたが驚異の奪三振率など歴史的快投だった。ガウスマン、ウッドラフも抜群の安定感を見せている。救援のキンブレルはMLB最強クローザーだったが2019年から成績が急降下。しかし今季、奇跡の復活を果たした。ベテランのメランソンは安定感がある。

初戦で勝ったドミニカはどうなる?

 では、日本が初戦で勝利したドミニカ共和国はどうなるだろうか?

<野手陣>
1 フェルナンド・タティスJr.(パドレス)22歳
83試304打88安30本67点23盗 率.289 RC74.24/遊撃手
2 ブラディミール・ゲレーロJr.(ブルージェイズ)22歳
96試348打114安32本80点2盗 率.328 RC89.93/一塁手
3 ファン・ソト(ナショナルズ)22歳
89試308打90安17本55点6盗 率.292 RC61.68/外野手
4 ラファエル・デバース(レッドソックス)24歳
97試363打102安27本81点3盗 率.281 RC71.64/三塁手
5 ネルソン・クルーズ(ツインズ/レイズ)41歳
88試308打89安21本52点3盗 率.289 RC60.11/DH
6 ホセ・ラミレス(インディアンス)28歳
86試307打78安19本52点9盗 率.254 RC52.25/二塁手
7 ゲーリー・サンチェス(ヤンキース)28歳
76試251打55安17本37点0盗 率.219 RC38.22/捕手
8 テオスカー・ヘルナンデス(ブルージェイズ)28歳
77試304打90安15本59点7盗 率.296 RC51.41/外野手
9 ライメル・タピア(ロッキーズ)27歳
95試355打98安5本40点18盗 率.276 RC47.98/外野手

 上位打線がものすごい。走攻守揃ったタティスJr.、三冠王候補で大谷に本塁打でも肉薄するゲレーロJr.、そしてホームランダービーで大谷翔平を破ったソト。3人とも22歳という若さだ。そして5番には松坂世代ながら衰えしらずのネルソン・クルーズ。バランスの良さではアメリカだが、勢いではドミニカ打線ではないか。

ホームラン競争で楽しそうだった大谷、ゲレーロJr.、タティスJr.©Getty Images

<投手陣>
先発/
フレディ・ぺラルタ(ブルワーズ)25歳
7勝3敗102回 率2.29 PR21.53
サンディ・アルカンタラ(マーリンズ)25歳
5勝9敗119.2回 率3.23 PR12.76
クリスチャン・ハビアー(アストロズ)24歳
3勝1敗76.2回 率2.82 PR11.67
救援/
リチャード・ロドリゲス(パイレーツ)31歳
4勝2敗38.1回 率2.82 PR5.84
ディエゴ・カスティーヨ(レイズ)27歳
2勝4敗36.1回 率2.72 PR5.93

 アメリカに比べれば投手陣はやや見劣りする。ドミニカ共和国は攻撃型チームなのだ。しかし今季救援から先発に復帰したペラルタのホップする速球は見ものだ。

 続いては、侍ジャパンにMLBで活躍する選手を加えてみる。

大谷はもちろん、ダルビッシュや沢村も

 秋山翔吾、筒香嘉智というMLBの打者陣は、日本にいれば選出されるような成績を残しているだろうが、現時点の成績で選ぶと外れると考えた。RC、PRはMLBとNPBでは単純比較はできないが、NPB選手の数字も参考までにつけておく。

<野手陣>
1鈴木誠也(広島)26歳
 72試248打76安15本38点6盗 率.306 RC55.15/外野手
2大谷翔平(エンゼルス)27歳
93試336打93安35本76点14盗 率.277 RC79.92/DH
3柳田悠岐(ソフトバンク)32歳
 88試331打98安22本53点3盗 率.296 RC68.96/外野手
4村上宗隆(ヤクルト)21歳
 83試291打75安26本61点8盗 率.258 RC62.59/三塁手
5山田哲人(ヤクルト)29歳
 80試295打79安25本65点3盗 率.268 RC61.44/二塁手
6吉田正尚(オリックス)28歳
 87試315打108安17本55点0盗 率.343 RC72.5/外野手
7浅村栄斗(楽天)30歳
 88試300打88安10本43点0盗 率.293 RC59/一塁手
8坂本勇人(巨人)32歳
 60試213打58安11本23点2盗 率.272 RC39.09/遊撃手
9甲斐拓也(ソフトバンク)28歳
 88試270打64安8本32点4盗 率.237 RC29.75/捕手

 鈴木誠也と大谷翔平、同世代の日米のスーパースターが1、2番を組む。これは野球ファンの夢でしょう。3番柳田悠岐、そして4番は21歳の村上宗隆に任せたい。以下の打線も途切れなく強力。これならアメリカやドミニカ共和国とも戦えそうだ。

©Naoya Sanuki

<投手陣>
先発/
山本由伸(オリックス)22歳
 16試9勝5敗113.2回 率1.82 PR23.36
ダルビッシュ有(パドレス)34歳
 7勝5敗115.2回 率3.27 PR11.82
大谷翔平(エンゼルス)27歳
 5勝1敗80回 率3.04 PR10.22

救援/
平良海馬(西武)21歳
 41試1勝1敗11S 39.2回 率0.23 PR15.16
澤村拓一(レッドソックス)33歳
 4勝1敗37.2回 率2.87 PR5.52

菊池雄星を“泣く泣く外す”ほどの豪華投手陣

 菊池雄星を入れてオールMLBの先発にしようかと思ったが、山本由伸の成績が素晴らしいので先発陣に加えた。山本、ダルビッシュ、大谷がアメリカやドミニカ共和国の強力打線に立ち向かう。胸躍る光景だ。

2014年、MLB選抜相手に投げた侍ジャパンの大谷©Getty Images

 救援は日の出の勢いの平良に、今季MLBで息を吹き返した澤村。どちらも気合で投げる投手だ。沢村は23日にIL(故障者)に入ったが、大事には至っていないようだ。

 これは実現しない夢かもしれない。しかしコロナ禍でスタジアムに応援することもままならない今だからこそ、こういうオーダーを組んでみたい。

 満員の観客とともに、世界のスーパースターの躍動をぜひ見たいものだ。

文=広尾晃

photograph by Naoya Sanuki