「カッゼーニーナレー!!」

 アメリカで鈴木みのるが登場した際、中村あゆみの唄う入場曲『風になれ』のサビに合わせて、現地の観客から大合唱が起こった。

 現地時間の9月5日、イリノイ州シカゴで行われた新興メジャー団体AEWのPPVイベント「ALL OUT」。ジョン・モクスリーが、新日本プロレスの小島聡を下したあと、渡米中の鈴木みのるがサプライズで登場した。

 するとビジョンに「MINORU SUZUKI」「THE KING」の文字が映し出され、花道から姿を現しただけで、シカゴのAEWファンは大騒ぎ。リングインに合わせて、日本語で「カッゼーニーナレー!」と大合唱され、鈴木とモクスリーが向かい合うと「ホーリーシット」コールが沸き起こった。

鈴木みのる(2019年撮影)

「風になれ」の大合唱は恒例

 あらためて驚くべきは、鈴木みのるの海外での人気、そして入場曲『風になれ』の浸透ぶりだ。鈴木の海外での人気は、数年前にまずイギリスで火がつき、その後、新日本プロレスの海外での認知度上昇とともにアメリカでもその人気は定着。ROHやGCWといった団体に出場した際は、「風になれ」の大合唱は恒例となっていた。

 2010年代後半には、新日本のシリーズオフになると毎回のように短期の海外遠征を行うほど、鈴木は売れっ子となっていたが、それも昨年初頭からのコロナ禍により中断。今回は約2年ぶりのアメリカということで、現地のファンが待ち焦がれていた。さらに、メジャー団体・AEWへの初登場ということもあり、その影響力は絶大だった。

 なんと鈴木のAEW登場後、『風になれ〜The King to the World〜』がアメリカのiTunes Storeで「J-Pop トップソング」の1位を記録したことが、中村あゆみのブログで発表されたのだ。これはまさに、鈴木みのる効果に他ならないだろう。

「いつか中村あゆみさんに自分の曲を…」

 もともと鈴木みのるは、高校2年の時から中村あゆみの大ファン。たまたまラジオで聴いた『翼の折れたエンジェル』のレコード(当時はまだCDではなく、レコードだった)が欲しくなり、でも曲名がわからなかったため、地元レコード店のレジ前で、店員に鼻歌を唄って説明して、ようやく手に入れたというエピソードも持っている。

 当時の鈴木実少年の夢は「プロレスラーになって有名になること」と「中村あゆみに自分の歌を唄ってもらう」こと。その夢は、27歳の時に現実のものとなる。

 20歳でプロレスデビューを果たして以来、鈴木はUWFの若手時代から大ファンである中村あゆみの楽曲を入場曲として使用していた。『Rolling Age』『BROTHER』『BOY'S ON THE ROAD』『太陽の光の中で』『MIDNIGHT HALLELUJAH』と、その時々の自分の置かれた立場や気持ちに合う曲を使用していたのだ。

 そして船木誠勝らとパンクラスを旗揚げ後、音楽関係の友人に「いつか中村あゆみさんに、自分の曲を作ってもらいたいんだ」と打ち明けたところ、たまたまその友人は仕事で中村あゆみとつながりがあり、思いがけずOKの返事がもらえたという。

 そして、鈴木みのるが中村あゆみに、自分の格闘技に対する想い、プロレスラーとしての想いなどを伝え、そうしてできあがったのが『風になれ』だった。

スポーツイベントで熱唱する中村あゆみ(2013年撮影)

サビでのリングインは中村あゆみプロデュース

 楽曲が出来上がったときのことを鈴木はこう語る。

「最初のレコーディングのとき、あゆみさんから『できあがったからおいで』って言われて、スタジオまで遊びに行ったんですよ。そしたら、できあがった曲を流しながら、あゆみさんが『ここではまだ入場しないで! ここのタイミングでゆっくり入ってくる。そしてリングに着いたら観客席を見渡して、“かっぜ〜に〜なれ〜!”に合わせてリングに入るの』って、完全に僕が入場するイメージを作ってたんですよ」

 そう、鈴木がずっと続けている『風になれ』のサビの部分でのリングインは、中村あゆみプロデュースだったのだ。

 そして中村あゆみ自身、『風になれ』を作詞、作曲したときの想いをこう語っている。

「『風になれ』は、そうとう力を入れて作ったのは憶えてますね。『誰にも真似ができなくて、他とかぶらなくて、ずっと古くならないような曲』っていうのを自分に課して。この曲を書くのに、当時住んでた家の30畳のリビングを何往復もしながら考えて、考えて作ったから。

 でも、常に彼(鈴木みのる)が現役の最前線にいて、いつも何かにチャレンジしていて、ずっと存在感があるからこそ、この曲がずっとフレッシュなままキープされてるというのがありますよね。古くならない、錆びない感じは、みのるクンがずっと古くならないからだと思う」

『風になれ』は古くならないどころか…

『風になれ』が鈴木みのるのテーマ曲として初めて使用されたのは、1995年9月1日、パンクラスの日本武道館大会。あれから26年経っても古くならないどころか、世界中のプロレスファンに合唱されるようになった。

 この26年間で、時代時代に合わせて何度かアレンジを変えて再レコーディングされてきた『風になれ』。現在のバージョンは副題に「The King to the World」と付けられている。その題名通り、鈴木みのる旋風は世界を席巻しようとしている。

 今回のアメリカサーキットは約2カ月。これから全米各地の会場で、「カッゼーニーナレー!」と大合唱が沸き起こることだろう。

文=堀江ガンツ

photograph by AFLO