プロ野球のドラフト会議まであと1カ月を切った。改めて昨年の指名を振り返ってみると例年以上に即戦力として活躍している選手が多いように見える。ここまで一定の活躍をする主な選手の成績は以下のようになった(9月12日終了時点)。

《セ・リーグ》
佐藤輝明(阪神1位)
105試合 95安打23本塁打60打点5盗塁 打率.254
伊藤将司(阪神2位)
16試合 7勝6敗0セーブ0ホールド 防御率2.98
中野拓夢(阪神6位)
102試合 96安打1本塁打28打点22盗塁 打率.280
牧秀悟(DeNA2位)
104試合 100安打16本塁打52打点1盗塁 打率.276
栗林良吏(広島1位)
39試合 0勝1敗23セーブ0ホールド 防御率0.47

《パ・リーグ》
早川隆久(楽天1位)
17試合 7勝5敗0セーブ0ホールド 防御率3.82
若林楽人(西武4位)
44試合 40安打2本塁打10打点20盗塁 打率.278
伊藤大海(日本ハム1位)
16試合 9勝5敗0セーブ0ホールド 防御率2.54

近本の大活躍→小深田ドラフト1位指名

 若林は5月末に膝の大怪我で離脱しているがそれ以外の選手はシーズンを通して活躍を続けている。

 佐藤はオリックス・ソフトバンク・巨人と、早川はヤクルト・西武・ロッテとそれぞれ4球団競合しているように、昨年は即戦力候補を上位指名した球団が多かったが、その期待に応える「歴史に残るルーキーの当たり年」と言えるだろう。

 彼らの活躍が今年の指名に影響することも大いに考えられる。

 近年では近本光司(18年阪神1位)の大活躍が、ポジションこそ違うものの同じ社会人で俊足のリードオフマンだった小深田大翔(19年楽天1位)の高評価に繋がったということもあった。そういう意味では、今年活躍したルーキーの恩恵を受けそうなドラフト候補も確実にいるはずだ。

 まず佐藤の活躍によってにわかに評価が上がってきているのが、同じ左打の大型外野手である梶原昂希(神奈川大)だ。

 今年春までの6シーズン(3年春は新型コロナウイルスの影響でリーグ戦中止)で3度の打率3割をマークしており、通算本塁打も11本を数える。190cm近い長身を生かしたフルスイングは迫力十分で、脚力でも今年の大学生ではトップクラスのレベルを誇る。

 その一方で試合数を上回る三振数も記録しているように試合によって調子の波が激しいのは課題となる。プロの変化球にはかなり苦労しそうなタイプで当初は三振を量産することになりそうだが、左方向へも大きい当たりを打てるパワーがあるだけに佐藤と同じように早くから高いレベルに対応できる可能性も否定できない。

 選手としてのタイプは違うものの、同じ神奈川リーグから昨年ドラフト1位でプロ入りした渡部健人(西武)が二軍ながらホームランを量産しているというのも梶原にとって追い風となりそうだ。

神奈川大・梶原昂希 ©︎PABB-lab

阪神・中野のようなリードオフマンは?

 同じ阪神の野手である意味、佐藤以上に嬉しい誤算だったのが6位指名の中野ではないだろうか。社会人では走攻守全て目立っていたものの、指名順位を考えてもプロでもいきなりこれだけの成績を残せると予想したスカウトはいなかったはずだ。

 同じ社会人のリードオフマンタイプで中野に続く可能性がある選手として浮上しそうなのが、外野手の藤井健平(NTT西日本)だ。ポジションこそ違うものの、スピードとパンチ力に関しては同等のレベルにある選手で、大阪桐蔭→東海大と常に強いチームでプレーしてきた経験も光る。

NTT西日本・藤井健平 ©︎PABB-lab

 そして重宝されそうなのがその守備力だ。主にライトを守ることが多いが、その強肩は間違いなくプロに入っても上位のレベルである。少しコントロールが乱れることもあるが、そのあたりを修正できれば一気にレギュラーを奪う可能性もありそうだ。守って走れる外野手が手薄な球団にとっては狙い目の選手と言える。

 投手でも栗林と伊藤将の活躍によって“社会人投手の存在”が見直されることが予想される。今年の社会人ナンバーワンである廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ)はもちろんだが、それ以外にも上位に浮上してくる可能性はありそうだ。

 まず栗林のようにリリーフでの即戦力として期待できそうなのが横山楓(セガサミー)だ。昨年は公式戦での登板は少なかったものの、今年は春先から好調をキープ。7月の日本選手権でも150キロを超えるストレートで5者連続三振をマークした。フォークの精度が上がってくればプロでも1年目から勝ちパターンのリリーフとして期待できそうだ。

 左の先発タイプでは伊藤と同じJR東日本の山田龍聖の名前が挙がる。高岡商では春夏連覇を達成した大阪桐蔭を苦しめたことで一躍評価を上げた投手だ。社会人では同期入社の伊藤の存在もあって昨年までは目立った実績はなかったが、3年目の今年は順調に調子を上げている。

 9月8日に行われたJFE東日本とのオープン戦では9球団22人のスカウトが集結する中で、最速150キロを超えるストレートを武器に5回を3安打無失点と見事にアピールしてみせた。伊藤と比べると変化球のコントロールや投球術には課題が残るが、高校卒3年目とまだ若さがあるのも魅力だ。

セガサミー・横山楓 ©︎PABB-lab JR東日本・山田龍星 ©︎PABB-lab

 今年のドラフトは1位指名間違いなしと言える“本命”がそれほど多くなく、昨年の結果や近年のトレンドに左右される選手も間違いなく出てくるはずだ。

 今回紹介した選手たちも、抽選の結果や巡り合わせ次第によっては1位、2位の上位で指名されることも十分に期待できるだろう。今年も即戦力の指名が続くのか、はたまた将来への投資か。10月11日のドラフトを待ちたい。

文=西尾典文

photograph by KYODO/Kiichi Matsumoto