後半戦に入り、ピッチャーとしても抜群の安定感を誇る大谷翔平。昨季まで聞かれた「打者に専念すべき」という声は今や打ち消されたと言っていい。一方で、大谷のメジャーデビューから「投手専念」を唱え続けてきたのが、通算213勝154セーブ、サイ・ヤング賞1回、殿堂入りも果たした現解説者のジョン・スモルツだ。
 Number1035号に掲載されているスモルツのインタビュー「それでも投手オオタニを推す理由」でも、大谷について熱く語ってくれた。本誌に掲載しきれなかった二刀流評に加え、自分なら打者・大谷をどう抑えるか?というスモルツ流“大谷攻略法”も公開する。

「イチローの一年目とどこか似ている」

「大谷がメジャーに来ると決まった時、私は『右腕こそが彼の持つ一番価値がある財産だ』と言いました。それはバッティングが良くないという意味ではなく、純粋に投球がずば抜けて良いと思ったからなんだ。

 彼は1年目(2018年)のスプリングトレーニングでとても苦戦していて、イチローの1年目とどこか似ているなと感じたよ。イチローでさえその才能を発揮できるようになるまでその時期は苦労していたので、二刀流の大谷ができるとは考えられなかった。エンゼルスもメジャーリーグという舞台で彼に二刀流をさせるのは酷だと思っていたんだ」

 ただ、大谷は1年目からスモルツの予想を上回る活躍を見せて新人王を獲得、今季はとうとうメジャーを代表するスラッガーとなった。スモルツは「大谷が投手に専念すればデグロムに並ぶ投手になれる」とこれまでサイ・ヤング賞2回、現在は負傷中ながら今季もここまで防御率1.08というメジャーを代表する投手と並びうるポテンシャルを評価してきた。一方でスモルツは今季の打者・大谷をこう見ている。

「アウトコースにスプリットを投げるね」

「私はブレーブスで9番バッターとしてプレーしていたが、ナ・リーグでは打撃コーチはピッチャーに指導したりはしなかった。なぜなら、バント以上に何ができるか、と言ってもたかが知れているからだ。だから彼が同じ日に投球と打撃、2つのことを準備するなんて信じられない。でも、打者・大谷はそれをやってみせ、自分を援護することで勝ち投手になったりする。僕もそんな簡単に驚いたりしないけど、彼のやっていることには本当に驚かされるよね。

 デグロムもまた『見たくなる投手』だけど、二刀流の大谷は『見たくなる』という以上に『必ず見たい選手』になってきている。彼がプレーしている時に、見ないという選択肢はない。これってとてもアメージングなことだよね」

 現役時代のスモルツは100マイル前後のストレートを武器に、スライダー、スプリット、カーブを操り、打者を手玉に取った。では、投手・スモルツならば打者・大谷をどう攻略するのか?

「僕ならアウトコースにスプリットを投げるね。というのも6月23日にジャイアンツの先発(ケビン・)ゴースマンと対戦した時、スプリットに唯一合っていないように見えたんだ」

 この試合で、大谷はジャイアンツのエースであるゴースマンに対し、3打数を2三振と1つの内野ゴロという結果に終わる。決め球は3打席ともすべてスプリットだった。

「ゴースマンが投げるアウトコースのスプリットに大谷は対応できていなかった。ただ、ストライクを取れないと選球眼が良くボールは見逃されてしまうので、注意しなくてはならないね。しかも彼は他のパワーヒッターのようなスイングミスをしたりもしない。

 投手としては、彼の左足付近に落ちる球を投げるか、もしくはストライクゾーンのプレートから離れるようなスタンスを取らせる方法を見つけなくてはいけないだろう」

 とはいえ、スモルツが発見した「攻略法」も絶対ではない。

「ただ、こういった攻略法も、一辺倒で投げていると打たれてしまうという難しさがある。スプリットを投げ続けても結局は対応してくるだろうから、ずっと投げるということはできないし……。打者・大谷の攻略法にはたくさん頭を使わされるね」

文=ブラッド・レフトン

photograph by Nanae Suzuki