9月12日現在、4位と4ゲーム差の5位と、今シーズンは苦しい戦いが続いてきた埼玉西武ライオンズ。開幕直後、山川穂高や外崎修汰などの主力が故障で離脱したことや、中断期間以降もなかなかクリーンアップを固定できないことが成績不振に大きく響いている。

 シーズン後半の追い上げが期待されるチームにあって、まず、欠かせないのが前出の山川、外崎らの復調だろう。

 そんな中、外崎はここ4試合連続でヒットを記録し、12日のオリックス戦ではシーズン初となる4番に座るなど、復調の兆しを見せている。

「シーズン前は低く、鋭い打球を打つことを目標に練習してきたんですけど、今は打球よりも、打席でのタイミングの取り方とか、ボールへの体の入り方を意識していますね」

 外崎のバッティングについて、赤田将吾打撃コーチに話を聞いた。

「外崎の魅力は何といっても初球からしっかり振れる思い切りの良さと、予想外の一発です。それが去年の終わりくらいから、ヒットが欲しいがために、強く振るよりうまくボールにコンタクトしようというスイングになってしまっていました。そのせいで、うまく外野の間に落ちるようなヒットは出たとしても、外野の頭を越すような彼本来のバッティングが影をひそめてしまっていました」

赤田コーチ「徐々にいい打席が増えている」

 東京オリンピックの中断期間に行われたエキシビションマッチの阪神戦。赤田コーチと話をした外崎は試合途中、室内練習場に場所を移し、打撃マシンに向かった。ペナントレースが再開した8月13日からはトップバッターとして試合に出場。「徐々に内容のいい打席が増えている」と赤田コーチは語る。

 外崎も言う。

「思い切って行けている感覚は、あります。ただ、1番を打っているときは難しい。特に一打席目は悩みますね。監督やコーチにも相談したんですが、ボールをじっくり見ていくべきなのか、と……。僕自身は初球から振っていくタイプなんですが、そこで万が一、1球でアウトになってしまったら2番を打つ打者の負担が増えてしまいます。(当時)2番を打つゲン(源田壮亮選手)が、制約が多い中で打席に立つことになってしまいますから、自分の気持ちだけで打ちに行っていいときと悪いときとがあると痛感しました」

 そんな中で監督、コーチから言われたのは「外崎修汰の1番バッターを探して行こう」という言葉だった。

「こうしたほうがチームの勝ちにつながりやすいんじゃないかというバッティングを重視しようと言われました。もちろん、できるだけボールを見ては行きたいんですけど、いいピッチャーとなると、その1つのストライクを打ちにいくか、見逃すかが勝負の分かれ目になる。だから状況に応じて変化はしますけど、基本的には初球から打っていくつもりで打席に向かいます。試合前にはゲンも『トノ(外崎)の好きなように打って』と声をかけてくれますから」

 8月26日からはチーム事情によりクリーンアップに戻ったが「これが外崎修汰のバッティングスタイルだ」という軸を確立することが、今のチームに求められていることに変わりはない。

シーズン序盤でのアクシデント

 そもそも主力打者として期待されていた今シーズンの外崎は、アクシデントによって出鼻をくじかれた。4月3日、ペイペイドームでのソフトバンク戦。左足首にデッドボールを受けてそのまま退場することとなる。左腓骨の骨折と診断され6日に手術、当初は全治未定の重症だった。

シーズン序盤に離脱したが、そこから3カ月後の7月に復帰 (c)KYODO

 外崎は振り返る。

「手術した直後は日常生活に戻るためのリハビリをして、その後、上半身の筋トレから練習を再開しました。打撃練習ができるようになったのが手術から1カ月半後くらいでした」

 リハビリ中のもどかしさとはどう闘っていたのだろうか。

「術後1カ月くらいまでは、1日1日回復しているのが自分でもわかるくらいの手応えがあったんですけど、そこからが長くて……。それがつらかったですね。練習ができないほどの痛みじゃないんですけど、ずっと違和感が残っている感じでした。6割の力でプレーすると、痛いけどできる。でも7〜8割の力で練習したら、悪化しそうな不安といいますか……。そんな感じがしばらく続きました」

 再び痛みがぶり返すのではないかという怖さもあった。

「もし痛みが再発したら、それまでのリハビリが無駄になってしまいます。振り出しに戻るとまではいかなくても、リハビリの期間が延びてしまうんじゃないかという怖さは常にありました」

 日々、患部の様子を見ながらの練習が続いたという。では、どんな方法で焦りを抑えていたのか。

「開き直るのがいちばん簡単で、精神的にもラクになれる方法だったなと今は思えます。けっきょく、野球をやりたいと焦っても、頭で考えても意味がないんですよね。だから、そこは開き直って『今は体をしっかり休めて、治療に専念するしかできないから、しゃあないなぁ』と思うようにしていました。試合も、まっさらな気持ちで見て、ライオンズを応援する。そのほうが精神的に安定していましたね」

 ケガさえなければ最終選考入りが濃厚だと言われた東京オリンピックについても「いち観客として、いちファンとして応援していた」と振り返る。

「僕にとっては骨折自体が人生で初めてだったので『どんな感じなんだろう?』『本当に元の感覚を取り戻すことができるのか』と不安だったので、あまりオリンピックのことは考えられなかったですね」

 メダリストの一員になれなかったことは残念ではある。しかし、外崎が言う「これが外崎修汰のスタイルだ」というバッティングを取り戻すことができれば、WBCを始めとする国際舞台出場への道は再び拓けるだろう。

 まずはライオンズのために、終盤戦での巻き返しを目標に――。外崎のバットに多くの期待がかかっていることは間違いない。

文=市川忍

photograph by Sankei Shimbun