大谷翔平が歩かされまくっている。

 45号本塁打を放った9月21日アストロズ戦の翌日からの3試合15打席で11四球(うち4敬遠)である。本塁打王争いに踏みとどまる大谷にとっては厄介な状況ではある。

45号を放った大谷 ©Getty Images

 ここ3試合の大谷翔平の打撃結果は以下の通り。

<アストロズ戦>
9月22日 四球 四球 一ゴ 敬遠 敬遠 三振
9月23日 三振 四球 四球 四球
<マリナーズ戦>
9月24日 三振 敬遠 四球 四球 敬遠

 これは2016年ブライス・ハーパー(当時ナショナルズ)に並ぶMLB記録。ベーブ・ルースでも3試合10四球が最多だ。

ボール球を見逃さざるを得ない大谷 ©AP/AFLO

 アストロズはエンゼルスと同じア・リーグ西地区で首位を走っている。この3試合の結果は、21日アストロズ10−5エンゼルス、22日アストロズ9−5エンゼルス、23日エンゼルス3−2アストロズ、アストロズの2勝1敗だった。

 アストロズはタイガースとともに5被本塁打と最も多くの本塁打を大谷に提供している。ここは勝負しない方が無難だと判断したのだ。一方マリナーズは24日、6−5でエンゼルスを下した。こちらもポストシーズン進出の可能性が残っているので大谷との勝負を避けたのだろう。

DH制のア・リーグで圧倒的に多い敬遠数

<MLB両リーグの敬遠数上位>※はアメリカン・リーグ
J.ソト(ナショナルズ)22
大谷翔平(エンゼルス)17※
F.フリーマン(ブレーブス)14
B.ハーパー(フィリーズ)13
N.クルーズ(レイズ)10※
M.オルソン(アスレチックス)10※
J.ラミレス(インディアンス)10※

 本来、敬遠数はDH制がなく投手も打席に立つナショナル・リーグの方が多くなる傾向にある中で、そんな中で大谷の17敬遠はかなり多い。しかも8月5敬遠、9月は6敬遠と露骨なマークにあっている。

 ちなみに今年と同じ162試合制だった2019年、ア・リーグ最多敬遠は大谷の同僚、エンゼルスのマイク・トラウトの14だった。今シーズン、大谷翔平と激しい本塁打争いをしているブルージェイズのV.ゲレーロJr.の敬遠は7、ロイヤルズのS.ペレスは4だ。

 なお、日本人選手ではマリナーズ時代のイチローが2002年に27敬遠、シーズン262安打をマークした2004年も19敬遠、2009年も15敬遠でア・リーグ最多敬遠となっている。

シーズン262安打の金字塔を打ち立てた2004年のイチローは、19敬遠という成績も残っている ©Naoya Sanuki

 なぜ大谷の敬遠が増えているのかについて、さらに考察を進めよう。

<ア・リーグの本塁打率(打数÷本塁打)10傑>
大谷翔平(エンゼルス)11.33(510打45本)
V.ゲレーロJr.(ブルージェイズ)12.46(573打46本)
J.ギャロ(ヤンキース)12.50(475打38本)
S.ペレス(ロイヤルズ)12.78(588打46本)
M.オルソン(アスレチックス)14.13(537打38本)
A.ジャッジ(ヤンキース)14.56(524打36本)
M.セミエン(ブルージェイズ)14.67(616打42本)
J.ラミレス(インディアンス)14.69(514打35本)
B.ロウ(レイズ)14.97(509打34本)
G.スタントン(ヤンキース)15.03(481打32本)

 大谷は、本塁打数こそゲレーロJr.やペレスに後れを取っているが、本塁打率では2人を上回って、依然として「ア・リーグで最も本塁打が期待できる打者」の座をキープしている。

ゲレーロJr.と大谷 ©Getty Images

「ウイニングショット」の異名がある通り、本塁打は試合を一気に決定づける。前半戦の勢いはなくなったとはいえ、大谷は最も危険な打者と見なされている。

 ただ、それだけではない。大谷が四球で歩かされたり、敬遠されたりするのは、エンゼルスに大谷に比肩する強打者がいないことが大きいのだ。

ゲレーロ、ペレス、大谷……同僚の本塁打数は?

 46本塁打を放っているゲレーロのブルージェイズ、ペレスのロイヤルズ、45本塁打で追う大谷のエンゼルス。3球団において、現時点でプレーしている打者の本塁打数上位5人を並べると以下のようになる。

・ブルージェイズ
V.ゲレーロJr. 46本(105打点、率.319)
M.セミエン 42本(98打点、率.269)
T.ヘルナンデス 30本(110打点、率.301)
B.ビシェット 26本(98打点、率.289)
R.グリシェック 22本(81打点、率.246)

・ロイヤルズ
S.ペレス 46本(115打点、率.274)
C.サンタナ 19本(65打点、率.211)
A.ベニンテンディ 16本(67打点、率.274)
H.ドージャー 15本(49打点、率.212)
J.ソラー 13本(38打点、率.192)

・エンゼルス
大谷翔平 45本(95打点、率.255)
J.ウォルシュ27本(86打点、率.267)
M.スタッシ 12本(33打点、率.251)
J.メイフィールド 10本(35打点、率.214)
T.ウォード 8本(31打点、率.240)

トラウトらがいない打線は怖くない

 ブルージェイズは40本塁打以上が2人、30本以上は3人、20本以上はL.グリエル(21本)も含め6人という強大な戦力。こんな中でゲレーロを歩かせるわけにはいかない。それでも7つ敬遠されているのは、かなりすごいことだ。

 それに比べればペレスのロイヤルズは見劣りがするが、10本塁打以上は7人いる。ベニンテンディという勝負強い打者、そして10本塁打ながら72打点のメリフィールドら50打点以上は5人いて、それなりに得点力がある打線だ。

 では、大谷のエンゼルスはどうか。

 開幕時点ではマイク・トラウト、アンソニー・レンドーン、ジャスティン・アップトンという実績のある強打者がいたが、3人とも長期の負傷者リスト入り。ウォルシュこそ好成績を残しているが、実働選手で10本塁打以上は4人だけ。大谷を歩かせれば、あとはさほど怖くない打者が続くのだ。

©Nanae Suzuki

 マドン監督が大谷を2番で起用することが多いのは、打席が多く回ってくることに加えて、試合序盤は、上位打者は歩かせられることが少ないから。だが、中盤以降になってくれば大谷へのマークが厳しくなるのは仕方がないことだ。

トラウトも「3年連続最多敬遠」の悲哀を味わった

 大谷がただ1人そびえている打線だけに、四球が増えるのも自然なこと。エンゼルスはトラウトが2017年から3年連続でリーグ最多敬遠を記録していた。大谷翔平が出てくるまでは、トラウトが同じような目にあっていたのだ。

 今年、トラウトが戦線離脱せずに大谷と中軸を組んでいたら、ここまでの四球攻めはなかっただろうと思われる。

 2016年までMLBでは、敬遠でもボールを投げなければならなかった。捕手が立って投手が遠く外れたミットに投げ込む敬遠でも、リーチがあって規格外のプレーを見せ続ける大谷なら――手元が狂ったボールを阪神時代の新庄剛志のように安打にしたり、スタンドに放り込む可能性があったかもしれない。

 しかし今の申告敬遠では、打者はバットを一振りすることさえできない。無念さが募る。

大谷の調子は上向き、心ばかりの朗報は……

 とはいえ45号ホームランが出て以降、大谷の調子は明らかに上向きである。打球が上に上がるようになった。それだけに勝負してほしいし、数少ない打席で何とか快打を飛ばしてほしい。

 心ばかりの朗報は敬遠最多のアストロズとの対戦がもうないことだ。エンゼルスの残り8試合の対戦相手はマリナーズが5試合、レンジャーズが3試合。マリナーズ戦は4本、レンジャーズ戦は3本の本塁打を放っている。

9月初旬のレンジャーズ戦では豪快なアーチを描いているだけに ©Nanae Suzuki

 前述したとおり、マリナーズはワイルドカードでのポストシーズン進出の可能性が残っているので、シビアな戦いになるだろう。ただ勝負さえしてもらえれば、大谷翔平にはまだ本塁打王の可能性は十分に残っていると言えよう。

 そして一部には日本人、アジア人にタイトルを取らせたくないという意識が存在しているという話も出ているが、そういうことはないと信じたい。

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki