長い期間トップで活躍し続けるには、「休む」ことも重要なのかもしれない。

 男子テニスの「ビッグ3」の1人、ラファエル・ナダルは6月中旬、ウィンブルドンと東京五輪を欠場すると自身のツイッターで発表した。

 リオ五輪ではスペイン選手団の旗手を務め、男子ダブルスで金メダルを獲得したが、今回の五輪は体調管理を優先して見送った。そして、全米オープンの前哨戦で戦列に復帰したものの、一大会に出場したのみで今季の残り試合に出場しないことを表明。8月半ばのことだった。

 35歳のナダルは何を考え、何を計画しているのか? マヨルカの自宅で休暇中のナダルに、オンラインインタビューで話を聞いた。(翻訳:木崎伸也)

自分を限界まで追い込まないことが大事

――6月下旬開幕のウィンブルドンを欠場し、東京五輪の出場も辞退しましたね。なぜでしょう?

「6月中旬、全仏オープンの準決勝でノバク・ジョコビッチに敗れたとき、体に疲れが溜まっていることに気がついたんだ。体を回復させるために、短い休みを取ろうと決めた。私はもう20歳ではない。ケガを未然に防ぐためにも、自分を限界まで追い込まないことが大事なんだ」

2021年全仏でのジョコビッチvsナダル ©Getty Images

――あなたはサッカーファンとしても知られています。EUROの準決勝、スペイン対イタリア(PK戦の末にイタリアが勝利)はテレビ観戦しましたか?

「もちろんさ。子供の頃からスペイン代表を応援しているからね。スペインはグループステージの最初はあまり良くなかったけれど、決勝トーナメントからはスペインらしい魅力的なプレースタイルのサッカーを見せてくれた。イタリア戦では、スペインの方が内容で優っていたと思う。PK戦ではわずかに運が足りなかった。ルイス・エンリケ監督や選手たちは、準決勝まで勝ち進んだことを誇りに思うべきだ」

2021年の全仏でジョコビッチに敗れたワケ

――あなたは「クレーの王様」と呼ばれ、クレーコートで圧倒的な強さを発揮し、全仏オープンを4連覇していました。しかし今年の全仏では準決勝でジョコビッチに敗戦。今までと何が違ったのでしょう?

「あの日、ノバクは試合を決定づける局面で、私より効率的でクレバーだったと思う。そして私の目には、彼の方がフィジカル的にフレッシュに映った。できるだけ長く連覇したかったが、途切れたことに後悔はない。来年から再び全仏を私の大会にしてやろうと燃えている」

――ジョコビッチはあなたが欠場したウィンブルドンでも優勝し、グランドスラム通算20勝。ついにあなたとロジャー・フェデラーの優勝回数に並びました。ジョコビッチをどう見ていますか?

「彼は完璧なテニスプレーヤーで、弱点が見当たらない。クレーコートだろうが、芝のコートだろうが、ハードコートだろうが能力を発揮できる。

 さらに今年は、驚異的な安定性を見せている。調子が悪いように見える日でも、絶対に勝ってやるんだという気持ちのエネルギーで足りない部分を補っているんだ」

ロジャーは完璧なテニスプレーヤーだ

――「ビッグ3」の先頭を走ってきたフェデラーについては、どう見ていますか? 彼のすごさはどこにあるのでしょう?

「ロジャーも同じく完璧なテニスプレーヤーだ。プレースタイルのモダンさがずば抜けている。いろいろな戦い方ができるので、対戦相手は彼のプレーを予測するのがとても難しい」

――フェデラーとの一番思い出深い試合というと?

「頭に思い浮かぶのは、やはり2008年のウィンブルドン決勝だ。試合中にも、キャリアにおける最高の瞬間を味わっていると感じていた。彼もそう感じていたはずだ。

 天才のフェデラーと、疲れを知らない労働者のナダルの対戦。まず私が2セットを取り、続いて彼が2セットを取って並び、5セット目で私が勝利した」

まさか芝の上でフェデラーに勝てるとは

――4時間48分の死闘で、テニス史上最高の試合と言われていますね。あなたにとって全仏以外の初のグランドスラムのタイトルでした。

「よく知られるように、私は芝のコートがあまり得意ではない。それを乗り越えて優勝できたことに特別な意味があった。まさか芝の上で、ロジャー・フェデラーに勝てるとは想像していなかった。アドレナリンが出まくった試合だった」

ノバク、マリーも含めて意識を高めてくれた

――フェデラーはナダルがいたから自分が成長できた、ナダルに感謝したいと語っています。あなたにとっても同じですか?

「ロジャーのようなチャンピオンと何度も対戦したら、自分を成長させたいという気持ちが自ずと湧き上がってくるものだ。

 私はキャリアの中で、トッププレーヤーと出会う機会に恵まれた。ロジャー、ノバク、そしてアンディ・マリーだ。

 テニスの歴史を振り返っても、グランドスラムの優勝者をこれだけ限られた選手で占めていた時代を見つけるのは難しい。特別な選手たちと同時代にいることが、自分の意識を高め、厳しいトレーニングに向かうのを助けてくれた。

 優れた選手とは、グランドスラムを1度優勝した人のことではなく、毎年成功を追い求め、毎年トップレベルで競える人のことだ」

――「ビッグ3」はテニスの歴史において、どんな意味があるでしょう?

「歴史的と言われる他の出来事と比べるのは簡単ではないが、私たちが長年優勝を争ったことが、テニスの認知度アップに貢献したことは間違いないと思う。子供たちの模範になることを常に意識してきた」

若手の台頭をどう見ているのか

――次世代の選手について聞かせてください。アレクサンダー・ズベレフ(24歳、ドイツ)、ステファノス・チチパス(23歳、ギリシャ)、デニス・シャポバロフ(22歳、カナダ)ら若手の台頭をどう見ていますか?

「まだ私たちビッグ3の壁を越えられてはいないが、ものすごく成長しているのは間違いない。

 ステファノスは今年の全仏で決勝に進んでノバク相手に素晴らしい戦いを見せ、ズベレフは昨年の全米で同じく決勝に進んで優勝に近づいた。

 個人的にはダニール・メドベージェフ(25歳、ロシア)とドミニク・ティーム(28歳、オーストリア)にも高い能力を感じている(※メドベージェフは、このインタビュー後に行われた全米オープン決勝でジョコビッチを倒して優勝を果たした)」

――ビッグ3に追いつく可能性が高い若手は誰だと思いますか?

「すでにティームが昨年の全米で優勝したし、他の4人もグランドスラムで優勝するのは時間の問題だろう」

言うまでもなく圭はトップクラスの選手だ

――錦織圭はケガを乗り越え、再び世界のトップを目指し、東京五輪にも出場します。彼のキャリアをどう見ていますか?

「言うまでもなく、圭は長年ツアーに参加しているトップクラスの選手だ。残念ながら度重なるケガで、活躍にブレーキがかけられてしまっている。

 ケガがなければ、間違いなく世界のトップ5に入る選手で、グランドスラムでコンスタントに準決勝以上に進める選手だ」

錦織はリオ五輪3位決定戦でナダルに勝利して銅メダルを獲得した ©JMPA

――あなたもこれまでにケガに苦しんできました。アドバイスするとしたら?

「ケガには運の要素もある。圭もそうだと思う。彼はプロフェッショナルの塊のような選手だ。食事の節制など、ケガの予防のためにできるあらゆることに取り組んでいるだろう。

 ツアーでは一般の人が想像する以上に選手の体に負担がかかる。負荷をコントロールするために、ときには戦略的に大会を辞退することも必要だ」

――錦織は再び世界のトップに近づけると思いますか?

「彼のポテンシャルを考えれば、間違いなくトップに近づけると思う。そのことに何の疑いもない。自分を信じ、トレーニングに打ち込み、そしてすでに言ったように負荷とうまく向き合えれば、間違いなく再び上昇する選手だ」

 <後編に続く>

文=アレクシス・メヌーゲ

photograph by Hiromasa Mano