ラファエル・ナダルは15歳でプロになって以来、数々のタイトルを手にし、ロジャー・フェデラーとノバク・ジョコビッチとともに「ビッグ3」と呼ばれるようになった。グランドスラム優勝回数は3人とも20回で、歴代1位で並んでいる。

 ナダルは今年6月で35歳。今季は8月半ばに休養を宣言したが、依然としてタイトルへの執念を失っていない。

 いったいモチベーションはどこから湧き出てくるのか? 勝ち続けるためのメンタルトレーニング術、現代テニスの問題点、引退などについて話を聞いた。(翻訳:木崎伸也)

感情的になってラケットを壊したことは一度もない

――テニスではいかに感情をコントロールするかが大事だと思います。どんなメンタルトレーニングをしていますか?

「私の場合、ヨガをしたり瞑想をしたりして、試合における決定的なシーンで自分の感情をうまくコントロールできるように訓練しているんだ。

 ラケットを持ったら、常にポジティブな気持ちでコートに足を踏み入れる。理想的なコンディションでないときにも、自信を持って臨むことが大事だよ」

――コートに立っているときの自分と、コート外の自分は違いますか?

「私の中では同じだ。私は競争が好きで、コートの上で自分をコントロールできる。感情的になってラケットを壊したことは一度もないし、クレイジーな振る舞いをしたこともない。私は弱音を吐かず、決してあきらめない。それが私のスポーツ全般に対する哲学だ。だから遊びで友達とゴルフやサッカーをやるときも全力でやってしまうんだ」

――どんなことで息抜きしていますか?

「テレビでゴルフを見るのが、いい息抜きになっている。ソファに座りながら、深夜まで没頭してしまうこともあるよ。睡眠時間は少なくとも5時間は欲しいけど、ゴルフ観戦で少し寝るのが遅くなるくらいなら問題ない。飲みに出かけるよりはるかに健康的な趣味だろ?」

他の選手のコピーではなく、意図を推測する

――あなたは子供のとき、他の選手のプレーを真似していましたか?

「子供のときにとにかく練習が好きで、早朝から夜遅くまで、信じられないくらい長い時間コートで過ごしていた。ただ、他の選手をコピーしたことは1度もなかった。

 正確に言えば、他の選手のプレーを見ないわけではない。他の選手を観察し、彼らがどうやってプレーを成功させているかを研究するんだ。

 そのままコピーせず、プレーの裏側にある意図を推測し、自分のプレースタイルに合うように整えて取り入れる。

 コートの上のどこに立つか、どう動くか、どう打つか、といったことだ。私はアイデアを得るためにYouTubeの何千ものテニス動画を見てきた。

 長くトップでい続ける秘訣があるとしたら、プレー面のイノベーションの探求だ。年齢的な衰えで何かをできなくなったら、新しいアイデアで補えばいい」

サンプラスvsアガシを見るのが好きだった

――昔の試合も見るのですか?

「子供のときはピート・サンプラスとアンドレ・アガシの大ファンで、2人の試合を見るのが好きだった。サンプラスからは攻撃的なプレースタイルを、アガシからはファイティングスピリットを学んだ。異なるタイプの2人なので、彼らの対戦はとても刺激だった。もちろんスペイン出身で現在私のコーチであるカルロス・モヤからも影響を受けたよ。

 さらに歴史を遡ると、イリ・ナスターゼの試合が好きだ」

1999年ウィンブルドンでのサンプラスvsアガシ ©Getty Images

――1972年に全米、1973年に全仏で優勝したルーマニアの英雄ですね。

「私はあの時代のテニスに憧憬を抱いている。パワーに頼ったプレーよりも、感覚的なプレーが多かったからだ。魔法のようなプレーが存在した。

 当時は今より、コートの上で感性と戦術が重要な位置を占めていた。ポイントを取るまでにより長い攻防があり、忍耐力が問われた。現代のテニスに欠けている点だ。クレーコートではまだそれをできる部分があるが、芝やハードコートではほぼ不可能。テニスが高速化している」

サーブについて、何かしらの検討が必要に

――プレーのルールについて、何か変更が必要だと考えているのでしょうか。

「どこかの段階でサーブについて何かしらの検討が必要になると思う。選手たちの体がどんどん大きくなり、サーブがどんどん速くなっているからだ。

 もしサーブに関して賢明な解決策が見つからない場合、テニスの試合がサーブだけで決まるようになるのではないかと心配している。10年以内に、この問題がさらに深刻になると思う」

――現行ルールではサーブを2回するチャンスが与えられていますが、例えば1回だけにすべきだと思いますか?

「決して的外れなアイデアではないと思う。テスト的に導入し、意味があるかを判断すればいい。私はテニス界のイノベーションに賛成だ。まずは小さな大会で試すといいと思う」

――自身のキャリアで、誇っていいと思うことはありますか?

「何度ケガをしても、そのたびに復活したことだ。多くの専門家が私のプレースタイルはエネルギーを消耗すると批判し、ツアーで長く戦うことはできないと予想してきた。私は決してそれを忘れない。

 私自身もそういう批判が正しいかもしれないと、不安に思う時期があった。だがそれは間違っていた。35歳になった今もプレーし続けていることが、その証明だ」

――夢見ていたことはすべて実現してしまったのでは?

「全仏の13回を含めて、グランドスラムで20回優勝した。正直、15歳でプロになったときに、まさかここまで来られるとは思っていなかった。

 ただ、ケガで先が見えない時期を味わい、そこから這い上がる経験をすると、勝つことがさらに特別な瞬間になる。新たな成功を心待ちにしている自分がいる」

なるべく年齢のことは考えないようにしている

――現在「ビッグ3」のライバルのロジャー・フェデラーは40歳です。あなたはこの年齢になっても世界のトップでプレーしている自分を想像できますか?

「現時点では、何も予想できない。なるべく年齢のことは考えないようにしている。心身ともにフレッシュに感じられなくなったら引退するだろう。そうなるまでには、まだ時間がかかるかな。

 これだけ長い間テニスを続けられることが、どれだけ幸せかを理解している。テニスというスポーツに感謝したい」

私は若い選手の成長を助けるのが好きだ

――10年後、あなたは何をしていると思いますか?

「スポーツ業界にいることは間違いない。アカデミーを運営しており、それがテニスとのつながりを保ってくれるだろう。

 私は若い選手の成長を助けるのが好きだ。経済的に恵まれない子供たちをサポートする私の財団にも、より時間を割くことになるだろう。テニスをしない人生をまったく恐れていない」

2020年全仏でのナダル ©Getty Images

文=アレクシス・メヌーゲ

photograph by Getty Images