ずばり“85点”。今年のドラフト会議で、阪神はおおむね満足のいく結果が得られたと思います。さすがに佐藤輝明(1位)や伊藤将司(2位)、中野拓夢(6位)といった、文字どおり「即戦力」を獲得できた昨年には及ばずとも、今、チームが抱えているウィークポイントを踏まえた、戦略性のある指名ができたのではないでしょうか。

ドラ1森木は「球界を代表するエースになれる逸材」。長く活躍するには……

 前提として、阪神は昨年、大学生・社会人中心の指名を行い、それが“成功”しました。それゆえ、今年は将来性の高い高校生を積極的に指名できる状況にありました。そこで私が補強ポイントとして考えていたのが、将来性豊かな「高校生右腕」と、リリーフ抜擢も視野にいれた「即戦力左腕」。加えて、層が薄い「外野手」です。

 ちなみに私の事前予想では、1位で高校生右腕・小園健太(市立和歌山/DeNA1位)、2位で大学生左腕・黒原拓未(関西学院大/広島1位)、3位で高校生外野手・前川右京(智弁学園/阪神4位)を指名すると見ていました。実際の結果は……阪神スカウト陣の“狙い”という意味では私の予想とかなり近いものになりましたね(笑)。

 まず「高校生右腕」については、1位指名で小園投手こそ逃しましたが、同じく“高校ビッグ3”のひとり、森木大智投手(高知)を単独指名できました。これはものすごく大きい。矢野燿大監督から「まさか残っているとは」というコメントがありましたが、まさにそのとおりだと思います。

 何度か森木投手の投球を見たことがありますが、噂どおりストレートのキレ、球速はピカイチ。同じ高知県出身の藤川球児に憧れて野球を始めたということですから、阪神と縁のある選手といえるでしょう。2019年ドラフト1位で入団した高卒ピッチャーの西純矢という身近な目標がありますし、着実に成長すれば、球界を代表するエースになれる逸材だと思います。

 ただ、これは多くの高卒投手に当てはまることですが、森木投手はまだ自分の「才能」に頼って投げているように見える。今後、早いうちに自分の投球をじっくり見つめ直して、投球の連動性、強みと弱みなどを“考える”ことが習慣化すれば、スランプに陥ってもすぐに立て直して、長く活躍できるピッチャーになると思います。

 来季、不動の守護神(ロベルト・)スアレスがメジャーに挑戦するという噂もありますが、森木投手にはその後釜候補として、というよりも、本格派先発右腕を目指してほしい。余談ですが、抑えに関してはアルカンタラに特性があるように感じています。

2位、3位指名の“速球派左腕”は阪神に貴重な素材

 つづく2位、3位では、補強ポイントの2つめに挙げた「即戦力左腕」の獲得に成功しました。今の阪神は左腕の駒不足が深刻です。高橋遥人や伊藤など、いい左投手もいますが、速球派サウスポーが先発に1枚、リリーフに1枚いると投手陣の充実度がグンと増しますよ。

 その点、2位の鈴木勇斗投手(創価大)、3位の桐敷拓馬投手(新潟医療福祉大)はいずれもMAX150キロ近く投げる本格派。阪神で速球派左腕といえば江夏豊さんや井川慶でしょうか。偉大な先輩を目指して、来年の先発枠争いに入ってきてほしいですね。どちらか1人でもローテーション、もしくはリリーフの一角を1年間任されるような活躍をしたら……今年のドラフト採点は、5点くらい加点できると思います。

高校生スラッガーの4位獲得は「今回のドラフトで一番驚いた」

 そして私が今回のドラフトで一番驚いたのが、4位で前川選手を獲得できたこと。私と同じ三重県出身という情報はさておき(笑)、どうにか阪神が獲得してくれないかと思っていた選手でした。スラッガータイプで飛距離抜群。高校生であんなに鋭いスイングをもった選手は稀です。さらに高校入学まで投手をやっていたとあって、強肩の持ち主でもある。贔屓目なしに、将来の中軸を担う可能性のある選手だと思います。4位で獲得できたのは奇跡ですね。

 さらに、前川選手と同じ外野手として、豊田寛選手(日立製作所)を6位で指名しました。これは私の願望でもあるのですが、阪神首脳陣は来シーズン、佐藤輝明を外野ではなく、サードでの起用を考えている気がします。彼には任せられるだけの守備力がありますし、何よりサードを守ることがバッティングにも活きる。下半身を鍛えるためにも、瞬発系の動きが多いサードを守らせたほうがいいんです。理想は4番サードのスラッガー・岡本和真(巨人)。あの下半身を手に入れたいですね。

 佐藤をサードにするとなると、外野の層がさらに薄くなります。その点を考えての外野手2人の指名だったと見ています。「どちらの外野手が来年活躍するか」という点では、昨年の中野拓夢と同じ6位指名で社会人の豊田選手のほうに分がありますが、将来性の前川、即戦力の豊田とそれぞれ獲得できたことは大きい。

年代のバランスも◎。近年は「いいドラフトができている」

 ほかに7位で指名した高校生捕手・中川勇斗(京都国際)も注目です。ドラフト前、正捕手・梅野隆太郎のFA流出に備えて捕手を獲るべき、という声もありましたが、坂本誠志郎もいれば、今季ファームの18連勝に貢献した榮枝裕貴もいる。中川選手は焦らず、5、6年後を見据えて成長してほしいですね。

 ほかに、5位指名で獲得したサイドスロー右腕・岡留英貴(亜細亜大)と、育成で獲得した左腕・伊藤稜(中京大)を入れて計8人。内訳は、高校生3人、大学生4人、社会人1人と世代的なバランスのとれた指名ができたと思います。高校生中心の19年ドラフト、大学生・社会人中心だった20年ドラフト、そして高校生・大学生をバランスよく指名し、即戦力と将来性どちらも見据えた今年のドラフト――。

 近年、阪神は非常にいいドラフトができていると思うので、あと必要なのは……リーグ優勝しかないですね!

(構成/田中仰)

文=藪恵壹

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