ラ・リーガ3シーズン目を迎えた久保建英。ヒザの負傷により離脱を強いられたが、保有元のレアル・マドリー、現所属のマジョルカではどんな評価をされているのか。各クラブの現地番記者に記してもらった(翻訳:工藤拓、全3回/マドリー番前編、後編も)

 今シーズン序盤にマジョルカを襲った負傷者の波は、久保建英を含めた攻撃陣にまで押し寄せた。チームが勝利から見放され、序盤の数試合で手にした貯金が底をつきはじめた最悪のタイミングで、久保の名は故障者リストに書き加えられることになった。

 ただでさえ人手不足の状況下、久保は詳細不明の膝の負傷――唯一の手がかりである監督の説明も具体性を欠くものだ――によってスタンドへと追いやられ、マジョルカは攻撃面における最大の武器の1つを失うことになった。

負傷は今季最悪の一戦で生じた

 しかも久保の負傷は今季最悪の一戦で生じている。8年半ぶりに訪れたサンティアゴ・ベルナベウにて、マジョルカは今世紀の最多失点を献上した。当初、久保の離脱は滝に打たれるように失点を重ねた惨敗ぶりに覆い隠された感があった。だが台風が過ぎ去った今となっては、指揮官のゲームプランにおいて重要な損失となっている。

 久保が初めてマジョルカでプレーした2年前は、多くの点でネガティブなシーズンだった。当時のマジョルカは新型コロナウイルスの感染拡大がもたらしたリーグ中断によって良い流れを断たれ、再開後は過酷な過密日程に苦しんだ末、セグンダ・ディビシオンへの降格を強いられた。

 それでも久保は個人的に良い印象を残し、マジョルカが発する数少ない明るいニュースとなっていた。

19-20シーズン、マドリー戦での久保 ©Getty Images

 レアル・マドリーと契約し、トップチームのプレシーズンにも参加していた久保は移籍市場の主役の1人だった。そんな選手がそれまで補強が十分ではなかったチームにやってきたことで、当時は島中が期待感に包まれた。

 チームで最も若い選手の1人だった久保は、加入当初こそビセンテ・モレノの先発構想に入るのに苦労した。だが最終的には攻撃の中心を担い、マジョルカの一員として残留のために戦ってくれた。

プレー時間減少が成長にブレーキをかけたのは明らか

 だがチームの2部降格により、マジョルカと久保の関係は永遠に断ち切られたかに思われた。その後マジョルカは新監督の下で再スタートを切り、久保はビジャレアルへとステップアップを実現する。しかし、再び1部昇格への道を歩みはじめたマジョルカと並行し、久保はウナイ・エメリの指揮下でもビセンテ・モレノの下で経験したのと同じ障害にぶつかることになった。

 プレー時間の減少が久保の成長にブレーキをかけたことは明らかだった。

 1月にはヘタフェへと移ったが、そこでも必要としていたプレー時間は得られず、飛躍が期待された1年を通して久保の進化は停滞することになった。

サポーターは成熟したタケの復帰を心から歓迎した

 そして今夏。東京五輪後に久保の復帰が報じられはじめると、島の人々は再び心を躍らせた。彼らは2年前から久保のことを自分たちの仲間だと感じていたからだ。特別な愛情を抱いていたサポーターたちは、彼の復帰を心から歓迎した。互いに慣れ親しんだ選手が、より成熟した姿で帰ってきたのだから。

 ルイス・ガルシアは加入直後から久保を重用し、スタンドのファンは彼のプレーに期待を膨らませた。ベルナベウで不運な怪我を負うまで、久保は5戦連続で先発に名を連ね、ラスト数メートルの攻撃にプラスアルファをもたらしていた。

マジョルカで最も議論されている2人の共存

 その間、マジョルカで最も議論されていたのは久保とイ・カンインの共存についてだ。

 共に2001年生まれの久保とガンインは、若くしてスペインにやってきた。

 2013年にアレビン(12歳以下)の大会で撮影された1枚の写真には、バルセロナとバレンシアのユニフォームを着た2人が握手する姿が収められている。

 あれから8年。運命の導きにより、彼らは同じシャツを着て戦うことになった。

19-20シーズン、マジョルカvsバレンシアでの2人 ©Getty Images

 懸念されているのは2人がプレースタイルのよく似た選手で、プレーエリアが重なることだ。ルイス・ガルシアは2人の併用は可能と考えているようだが、今のところ同時にピッチに立った時間はわずかしかない。

 初めて揃って先発したのはレアル・マドリー戦で、2人の共演が見られたのは久保が負傷交代するハーフタイムまで。それも防戦一方の展開を強いられる中で終わっている。

 これまでの起用法を見る限り、ルイス・ガルシアは4-2-3-1の右MFが久保のベストポジションだと考えているように思える。右MFはカンインもプレー可能なポジションであり、指揮官は2人が2列目の3ポジションを流動的に入れ替えながらプレーする青写真を描いているのだろう。

 2人にはそれができるだけのタレントと打開力があるだけに、個々がエゴにとらわれず、お互いを生かし合う関係を築くことができれば、面白いホットラインとなるはずだ。

負傷離脱後はイ・カンインが久保の役割を

 久保の離脱後、カンインは2シーズン前に久保が務めた役割を担いはじめた。オサスナ戦では敗れたものの好印象を残し、5戦ぶりの勝利を手にしたレバンテ戦でもチームの攻撃を牽引すべく奮闘し、ファンの喝采を受けていた。

18歳の若さで輝きを放った2シーズン前と同様に

 久保は今回の離脱期間を心身のリフレッシュに当てつつ、スタンドからチームの戦い方を観察することで復帰後のプレーイメージを膨らませていることだろう。監督も久保がしっかりと怪我を治すことを望んでおり、復帰時に良い形でチームに戻れるよう、良い流れを作ることに専念している。

日本代表11月シリーズでの招集は難しいとの報道もあるが、まずはマジョルカでの戦線復帰が先になる ©Takuya Sugiyama/JMPA

 ファンも久保が良い形で復帰し、18歳の若さで輝きを放った2シーズン前と同様に、今季もソンモッシュのピッチでその才能を発揮してくれることを心待ちにしている。

 彼らはマジョルカの1部残留が中心選手の活躍にかかっていることを理解している。もちろん、久保がその1人であることも。

 <第2回:マドリー番記者編に続く>

文=カルロス・ロマン/ウルティマ・オラ

photograph by Daisuke Nakashima