巨人が凄まじい勢いで失速している。

 10月12日の阪神戦を1対2で落として7連敗を喫し、優勝の可能性が完全消滅。さらに引き分けを挟んで14、15日も阪神、ヤクルトに連敗して連敗数は9まで伸びた。最大15あった貯金もこの敗戦で全て使い尽くして借金1となり、9月25日時点では11ゲームあった4位とのゲーム差は残り5試合で4まで迫られている。

 優勝争いから一気にAクラス、クライマックスシリーズへの出場権すら危うい状況となってしまっているのである。

 14日の阪神戦は9回2死から守護神のチアゴ・ビエイラ投手が3点を失って、引き分けることすらできなかった。

「何というか……言葉がなかなか出てこないね。本当にジャイアンツファンに申し訳ない。まだまだできるチームだと思います。なんとかしなきゃいけませんね」

 万策尽きた感の試合後の原辰徳監督は、こう言葉を絞り出すのが精一杯だった。

 ここまでの激しい失速には様々な見方がある。

中田翔獲得がチームのバランスを崩した?

 8月末に日本ハムから中田翔内野手を獲得したことがチームのバランスを崩したのではという意見。9月に入って原監督が勝負手として打った投手陣の中5日を基本としたローテーションの改編の失敗。きっかけとしては9月3日からの阪神戦の3戦目で6点をリードした6回に坂本勇人内野手を交代させ、代わって入った若林晃弘内野手と廣岡大志内野手のエラーから同点に追いつかれた試合を指摘する声も多い。

無期限出場停止中だった中田翔の獲得は、大きな波紋を呼んだ ©️KYODO

 もちろん結果的にはそうした指摘が、チーム不振の1つの答えといえば答えかもしれない。ただ、根本にあるのは、打線の不振によって巨人が築き上げてきたゲームプランが瓦解したことに尽きると思う。

 2019年、3度目の監督就任となった原監督が推し進めてきたチーム作りは、打力を前面に押し出した攻撃野球だった。

ここ10年の野球は「打てなければ、勝てない」

 データ分析の高度化や打撃技術の向上により、ここ10年の野球は、打てなければ、点を取れなければ勝てないのが現状だ。少なくとも打線が5、6点を取って、それをいかに守りきって勝利に結びつけるか。そういうゲームプランに即したチーム作りができるかどうかが勝利のカギを握ることは、今季のヤクルトの躍進でも明らかだ。

 原監督がいち早く攻撃的2番打者を採用したのも、そうした昨今の野球に即したチーム作りを目指したものだった。もちろん投手陣の整備をして、打線もしっかり打てるというのは理想であり、そういうチームを目指してはいる。ただ、投手陣の整備を最優先して2番につなぎの打者を起用して2、3点を守り切るという野球では勝てなくなっている。極端に言えば投手陣で1人か2人の柱になる投手がいれば、あとはオープナー的な投手でもいい。その代わりリリーフ陣をしっかり作って、勝てる試合をしっかり勝ち切る野球をする。それが原監督が復帰してからの巨人のゲームプランだった。

 このゲームプランで肝要なのは先発投手がある程度の失点をしても、それを中盤までに跳ね返せる打力があること。そして7回までにリードを奪った試合は、確実に逃げ切れるリリーフ陣を作り上げることだった。

 実際に4年連続でペナントから見放されていたチームが、原監督の復帰1年目の2019年に優勝できた要因は、シーズン途中でルビー・デラロサ投手を獲得し、そのデラロサと中川皓太投手、澤村拓一投手らのリリーフ陣で7回からの主導権を握れたことだった。

 そして今年の大失速の1つのきっかけは、実は9月9日のビエイラの離脱だった。

流れがプツンと途切れた9月2日のヤクルト戦

 今季も当初は昨年同様にデラロサをクローザーで起用する方針でチームはスタートを切った。ところが4月15日にはデラロサが米国の市民権獲得の手続きのために一時帰国。約1カ月後に再合流したが、調整不足などもあり、昨年までの絶対的な投球内容が見せることができなかった。その中で6月になるとビエイラがクローザーとして力を発揮し出して、それと軌を一にした形でとチーム成績も上昇していった。

 結果的にビエイラは5月3日の広島戦から9月1日のヤクルト戦まで32試合連続無失点記録を樹立し、その間に15セーブをマーク。チームも6月から8月までの間は25勝18敗5分けと7つの勝ち越しを記録して首位にも立っている。

 しかしそんな流れがプツンと途切れたのが9月2日のヤクルト戦でビエイラが33試合ぶりの失点を記録してからだ。その後も4日の阪神戦でも大山悠輔内野手の逆転サヨナラ2ランを浴び敗戦投手となった。そうして9日には肘のコンディション不良で一軍登録を抹消されたのである。

 その後はクローザーを固定できずに中川、畠世周投手、デラロサらで9回を凌ぐことになるが、絶対的なクローザーがいなくなったことで逆算したゲームプランがなかなか組めず、終盤の投手リレーが苦しくなっていった訳である。

チームワースト13連敗のときと同じ現象が……

 そうして終盤の組み立てが難しくなる中で、もう一つ、決定的な問題として浮上してきたのが売り物だったはずの打線の不振だ。

 今回の大失速の直接的な原因は、まさに点が取れない、その一点に尽きるといっても過言ではない。

 失速の始まった9月以降は37試合(10月14日時点)を消化して、総得点は105点で1試合平均は2.84得点。これでは巨人が描いてきた序盤から中盤までに5、6点を取って試合の主導権を握り、それをリリーフ陣で逃げ切るというゲームプランは根本的に崩壊している。

 実は同じような現象は過去にもあった。

 2006年には開幕からスタートダッシュに成功しながら、6月から7月にかけて打線が大スランプに陥り8連敗、10連敗に9連敗と大型連敗を繰り返して6、7月は12勝33敗。8月には最下位に転落している。

 また記憶にも新しいのが高橋由伸監督時代の17年の5月から6月にかけてチームワーストの13連敗を記録した時だ。

 実はこの2つの連敗も極度の打撃不振が理由だった。06年は高橋由伸外野手、小久保裕紀内野手、阿部慎之助捕手らが次々と故障で離脱。17年も阿部に加えて坂本勇人内野手もコンディション不良を抱えながら試合出場を続けてきたことで、スランプとなり、それをカバーできる若手の台頭がなかった。

外国人打者がほとんど機能していない

 今回も坂本に加えて岡本和真内野手、丸佳浩外野手と連覇を支えてきた主力打者が揃ってスランプとなり、それがモロにチームの勝敗に影響を及ぼしている。

 そして過去の大失速同様に、そうした主力の不振をカバーできる若手や他の選手がいない。いまの巨人打線で気を吐いているのは松原聖弥外野手ぐらいというのが実情なのである。

 そこで1つ、指摘できるのはチーム編成として外国人打者がほとんど機能していないことが、この大失速の理由としてあることだ。

 今や日本のプロ野球は外国人選手の成功がチームの浮沈を握っている。ヤクルトにしてもホセ・オスナ内野手とドミンゴ・サンタナ外野手の存在があるから、あの圧倒的な強力打線が形成できている。阪神も打線に課題があったが、今季はジェフリー・マルテ内野手が打線の軸を担ってジェリー・サンズ、メル・ロハス・ジュニア両外野手を併用しながら打線を強化できたことが強さの要因なのは紛れもない事実だ。

孤軍奮闘のウィーラーのバットにも陰りが

 しかし今季も巨人は外国人選手の補強に失敗している。打線の軸として獲得したエリック・テームズ外野手はケガで離脱、ジャスティン・スモーク内野手もコロナ禍の家族問題で途中帰国と機能しなかった。8月にはスコット・ハイネマン外野手を緊急獲得したが、これもまたほとんど結果を残せないままにチームを外れて帰国してしまった。

 結果的にはゼラス・ウィーラー内野手が孤軍奮闘。前半戦ではこのウィーラーが結果を残したことで、丸の不振を補填し、打線は点を取れた。しかしそのウィーラーのバットにも陰りが出ている現状では、主力の不振をカバーできる選手がいないのだ。

 そこに現状の苦しさがある。

「外国人選手の差が大きかった」

 2年連続日本シリーズでソフトバンクにスイープされた直後の昨オフ、原監督が敗因の一つとしてあげたのが、外国人選手の補強の失敗だった。巨人にとってはもうずっと懸案事項だが、今年もまた不運もあったとはいえ、成果を得られなかったことが、シーズン終盤に大きなツケとして出てしまったことになる。

 もちろんそれが大失速の理由の全てではない。ただ、明らかにチーム編成上の欠陥が、この事態を招いた遠因にあることは間違いない。

 そしてこれはいまだけの問題ではないのだ。

 今後のチーム編成で外国人選手の補強をしっかりできない限り、本当に強い、逆境でもそれを跳ね返せるチームを作ることはできないだろう。

 まだシーズンは終わったわけではない。チームを建て直し、クライマックシリーズを勝ち上がれば、日本一の可能性も残されている。

 ただ、この大失速でチームとして、改めて大きな課題が浮き彫りになったはずである。

文=鷲田康

photograph by JIJI PRESS