2021年のレギュラーシーズンが終わりました。阪神は最終戦を落として、首位ヤクルトが優勝。やはり最後の試合でV逸が決まるのはショックなものですね……。試合観戦後は疲れ切ってすぐに寝てしまったほどです。

 優勝こそ逃したわけですが、今季のレギュラーシーズン、阪神はよく戦ったと思います。勝ち星ではリーグ1位の77勝(56敗10分)。6月には2位と最大7ゲーム差をつけるなど、前半戦の快進撃を見て「今年こそは」と思ったファンも多いはずです。

 これからCSという段階なのでシーズン総括は少し早いのですが、私なりに「なぜ優勝に届かなかったのか」「ヤクルトと比べて何が足りなかったのか」を3つ挙げてみたいと思います。

その1)ヤクルトには青木、石川がいたが…

 1つめがチームの“精神的支柱”の不在です。ヤクルトは、青木宣親、石川雅規という、これまで酸いも甘いも噛み分けてきた大ベテランがいました。周りの選手のコメントを聞いていても、いかに彼らが信頼されているか、青木のために、石川のためにという意気で最終盤を戦っていたかがうかがえます。

 かたや阪神にも、糸井嘉男ら実績のある選手はいました。主将としてチームを引っ張ってきた大山悠輔も体の状態が良くない中、懸命に戦っていることは伝わってきました。もちろん、スポットライトが当たらないところで、若い選手に言葉をかけたり、態度で示したりといったことはやっていたと思いますが、チームに“安心感”を与えられる選手が少なかった。前半戦の快進撃を支えたルーキー3人(佐藤輝明、中野拓夢、伊藤将司)を、失敗を恐れずに思いっきりプレーさせられる雰囲気が今ひとつ感じられませんでした。

その2)“球際の弱さ”。失策数は12球団ワースト

 2つめが“球際の弱さ”です。これは長年にわたる阪神の弱点ですが、やはり大事な試合、シーンでエラーが目立ちました。エラーの数は12球団最多の86。バッティングは1年でガラリと変えられずとも、守備は鍛えれば改善できる。毎年の課題ではありますが、今秋こそ徹底して底上げすべきでしょう。これは私が何度も言っていることですが、サードに佐藤輝明、ファーストに大山。ぜひとも、固定してほしいと考えています。

その3)梅野の“スタメン落ち”は正しかったのか?

 そして3つめが、「チームが本当に一枚岩になれていたか」という点です。ヤクルトは高津臣吾監督の「絶対大丈夫」を合言葉に、チームがまとまっている印象がありました。もっと言えば、あの動画を球団がYouTubeで公開したことで、選手のみならず、ファンまで一体となって優勝に向かうことができたように感じます。あのようにわかりやすくて、不思議と力になるような言葉でチームをまとめるあたり、いかにも高津監督らしいマネジメントですね。そうした一体感があったからこそ、シーズン最終盤、1番塩見泰隆、2番青木の当たりが少し止まっても、優勝を前に足踏みしても、チームは崩れなかったのだと感じます。

 もちろん、阪神もチーム一丸となって戦っていたと思います。実際、10月も12勝5敗3分という成績を残して、最後の最後まで粘りました。しかし、一枚岩になりきれたかという点では、疑問を感じた采配もありました。

 それが捕手・梅野隆太郎のスタメン落ちです。今シーズン、阪神は最多勝争いトップの青柳晃洋、ともに10勝を挙げた秋山拓巳、伊藤と投手陣の奮闘が光りました。岩貞祐太や岩崎優、スアレスらリリーフ陣もしかりです。そして彼らをリードし、チーム防御率リーグ2位の3.30に導いたのは、100試合以上でリードした梅野の存在でした。にもかかわらず、10月8〜10日の神宮3連戦で、梅野が先発マスクを被った2試合を落としたからといって、外す必要はなかったと見ています。

最終戦で感じた“ちぐはぐ感”

 キャッチャー出身の矢野燿大監督なので苦渋の判断だったとは思いますが、やはり扇の要ですから。せめて坂本誠志郎と併用するなり、うまい起用法があったのではないか、と。シーズン最終盤、ここから逆転優勝を狙うという重要な局面でレギュラーを外された梅野の気持ちを思うと……。「この大事な局面でこそチームに貢献する」という自負があったでしょうし、彼を信じて起用し続けることで、ナインに伝えられた“メッセージ”もあったのではないかと思います。

 梅野の起用法以外にも、疑問に思う采配がありました。最終戦で、わずか1点ビハインドの序盤2回でエース・青柳に代打を送ったこと。あの日の球を見る限り、もっと引っ張れたと思います。大事な試合といえど、序盤の1点くらいで動じなくていい。青柳はそれくらい信頼できるピッチャーです。

 加えて、4点ビハインドの9回表、スアレスをマウンドに送らなかったこと。最後の試合なので、出し惜しみする必要はなかった。むしろ、チームに「まだ諦めていないぞ」という意思表示としてスアレスを出すべきでした。

 こうしたシーンを見るに、チームの意思が少しちぐはぐな印象を持ちました。

いざCSへ。勝ち抜くためのカギは?

 とはいえ、まだCSが残っています。最初の相手は巨人。ここで2勝する必要がありますが、今の状態からすると、1、2試合目は青柳と高橋遥人の2枚でいくのではないかと見ています。ジャイアンツの状態も良くないので、甲子園で気持ちよく連勝して、満を持して王者・ヤクルトに挑みたいところ。カギは打線。ヤクルトも打線が絶好調とは言えないので、中軸が爆発してくれたら……勝機はあると思いますよ。

(構成/田中仰)

文=藪恵壹

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