2年ぶりの開催となった九州場所。

 わが相撲協会はコロナウイルス感染防止のためのガイドラインが厳しいけれど、今年は7月の名古屋と11月の九州と、2度の地方場所開催に踏み切ったんだ。でも、せっかく東京を離れても、現地ではより厳しく「外出禁止」だったりしてね。「東京から移動するだけで意味がない」と思う人もいるかもしれないけれど、違う土地の空気を吸えるって、それだけで気分転換になるんだ。

 この九州場所では「ルールを守りつつ13日目から外出してもよい」とのことだったので、この時期に美味しい、福岡名物の「アラ」を食べに行ったんだ。いやぁ、「師匠として模範にならなければ」と一歩も相撲部屋から出なかったので、今までのストレス解消になったな。アラって、刺身も唐揚げもいいけど、鍋にするとフグよりも脂が乗っていてコクがあり、本当に美味しい魚なんだ。

 千秋楽の日、ここ約2年はずっと部屋の中で自分たちの手で「打ち上げパーティ(もどき)」をしていたんだけれど、今場所は僕の兄弟子の経営するちゃんこ鍋屋さんを貸し切りにしてもらった。「飲食店は大変だったろうに、閉店せずによく頑張ってくれていたなぁ」と思ったし、部屋のみんなが揃っての外食は本当にひさしぶりのこと。若い力士たちも喜んでいたな。

 それでは、今場所の感想はこれで終わります!

「照ノ富士1強」攻略法は?

 ……ではなくて。

 まずは横綱照ノ富士ね。初めての全勝優勝ということで、引退した白鵬の穴を埋めるように、一人横綱としての存在を示していた。これからも白鵬に代わって横綱として相撲界を引っ張り、いい見本を見せてほしいね。

 みんな、今の照ノ富士には勝てないだろうなぁ。しばらく「照ノ富士1強」の流れは変わらないように思うんだ。誰がこの横綱を倒すのかと考えると、ピンと来ないんだよね。先の9月場所では大栄翔と明生が横綱に土をつけたけれど、彼らはよく動いていた。攻略法としては、まずは大きい横綱のバランスを崩すことが大事なの。照ノ富士は、相手をよく見て、常に自分の真正面に置くんだ。だから、速い動きで反応が追い付かなくなるくらいに動き回ること。まずは立ち合いであごを上げさせて、下から攻めて横を向かせたり、後ろを向かせるくらいに動き回ると勝機はある。右差しが得意なヒトは思い切り右に動け。左差しが得意なら、左に思いっ切り動く。そうすれば照ノ富士は、力の半分しか使えなくなるよ。わからなかったら僕に聞きにおいでね。照ノ富士同様にデカい僕が攻められて苦手だった相手の戦術――いくらでも教えてあげるよ(笑)。

「正代なんて、もう大関と呼ばなくてもいい」

 幕内に復帰した阿炎が、今場所は盛り上げてくれたね。彼がいなかったら優勝争いはどうなっていたんだろ? と思うくらいの活躍だった。体もひと回り大きくなって、跳んだりはねたりの相撲がなくなっていたよね。でも、14日目まではよかったんだけれど、千秋楽の隆の勝戦の一番では、やっぱり昔の阿炎が出て、引いてしまって負けちゃった。今場所はよかったけれど、これからが、来場所以降が勝負だよ。上位陣をかき回す存在でいてほしいな。

 やっぱりね、僕に言わせれば大関はじめ三役陣がだらしないんだ。正代なんて、もう大関と呼ばなくてもいい。「オスモウチャン」でいいよ。九州場所って、熊本出身の正代は「ご当所力士」でしょ? 大関として初めてのご当所で、一層頑張らなきゃいけないのにね。9勝して勝ち越したってホッとしてる立場じゃない。

 先場所から小結に返り咲いた逸ノ城は5勝10敗、同じく小結の霧馬山は6勝9敗。関脇の明生も負け越したなか、三役常連の関脇御嶽海は11勝。でも御嶽海は”なまくら”なんだよ。力はあるんだから、もっと頑張ってくれなきゃ。たとえば照ノ富士戦などでは、ちょっとまわしを掴まれただけですぐに諦めて、力が抜けちゃうんだもの。そこから頑張れよ! ってところ。御嶽海がもっと頑張ってくれたら、もっと面白くなるんだよなぁ。僕はまだ御嶽海を諦めていないぞ?

「番付は十両に据え置き。ただし給料はナシ!」がいい

 協会のガイドライン違反で出場停止となり、今場所で復帰した竜電が、幕下で優勝したね。これまでの阿炎もそうだったけれど、元三役として本来の力があるんだから、格下の地位で優勝するのは当然なんだ。来年の7月場所では元大関の朝乃山が復帰するけど、若いお相撲さんたちの夢がなくなるよ。「この一番で勝てば十両に昇進できる!」「この一番に優勝が掛かる!」と頑張っている若い子の芽を摘んでしまうことにもなるよね。長い期間の出場停止という処分は、意味がないと思うんだよなぁ。僕の持論としては「番付は十両に据え置き。ただし給料はナシ!」がいいと思うんだけどね。

 とにかく、今年一年は相撲界だけでなく、みなさんもいろいろ大変だったと思います。

 大相撲を見ることで少しでも気を休め、楽しみとしてもらえるようにと、お相撲さんたちも日々頑張っています――師匠の僕もね。

 一年納めの九州場所が終わりました。また来年も、大相撲の応援をよろしくお願い致します! 

(構成=佐藤祥子)

文=武蔵川光偉

photograph by KYODO