メジャー11年目を迎えたパドレスのダルビッシュ有が、メジャー通算勝利数と投球回数で「区切り」の数字をクリアし、着実にレジェンドの領域に近づいてきた。

 今季3戦目となった4月17日のブレーブス戦で、今季初勝利を挙げ、通算80勝目に到達。黒田博樹(ヤンキースなど)を抜いて、日本人メジャーとしては単独2位となった。それでも、1位野茂英雄(ドジャースなど)の123勝への意欲を問われると、「あと40年やらないと」と笑いを誘った。その一方で、「黒田さんにはいろいろ助言を頂いた。そういうレジェンドの方をメジャー通算で超えることができたのは本当に光栄です」と、あらためて先人への敬意を表した。 

 4月29日のパイレーツ戦では、6回途中で通算投球回数が1319回1/3に到達し、同部門でも黒田を抜き、日本人として単独2位となった。

 この時も、1位野茂の通算1976回1/3の数字について聞くと、ジョーク交じりに笑った。

「(差が)600イニング? やっぱりあと40年かかるかな。でも、黒田さんも強靭な体で毎年200イニング投げられていましたし、そういう選手を超えたのは、前回(勝利数)もそうですけど、誇りに思います」

長年のトレーニングの成果

 現在35歳。過去数年は、「あと何年投げられるか分からない」と話し、通算勝利数などを「気にするようになった」と、心境の変化を口にするようになった。

 その一方で、サイ・ヤング賞争いで次点の2位となった2020年のシーズン後には、「筋力が落ちなくなった」と長年にわたるトレーニングの効果を実感し、「25〜26歳の時よりも強い。老いを感じていない」と、年齢を重ねたことによる体調面の充実に手応えも感じてきた。

 パドレスへ移籍した昨季は、開幕投手に指名され、前半戦に7勝(3敗)を挙げてオールスターに選出されるなど、期待通りの活躍を見せた。だが、股関節を痛めた後半戦は踏ん張り切れず、最終的に8勝11敗と大きく失速。体力的な不安はないだけに、故障箇所さえ完治すれば、本来の投球を取り戻せる自信を持ち続けていた。

 迎えた今季。オフシーズンはオーナー陣によるロックアウトの影響で短縮キャンプとなったが、ダルビッシュ自身はそれをマイナス要素として捉えていなかった。地元サンディエゴでは、他の投手陣と一緒に定期的に合同トレを行い、フリー打撃に登板するなど、独自に調整を進めてきた。実戦不足を不安視する声がある一方で、「自分のペースで自分のやりたいことができるし、ストレスも何もないので、むしろ僕は楽しかったです」と振り返るほど、心身ともに充実した状態で開幕を迎えた。

日米通算200勝へ視界良好

 開幕後2戦目のジャイアンツ戦こそ2回途中9失点とメッタ打ちされたものの、その後は安定した投球を続け、5月6日のマーリンズ戦では7回2失点と好投し、3勝目を挙げた。持ち前の多彩な変化球に加え、ストレートは最速98マイル(約158キロ)を計測するなど、本来の球威も戻ってきた。

「1試合とんでもないのがありましたけど、それ以外はスプリングトレーニングからそんなに大崩れすることなく来ていると思うので。ただ、いっぱい改善すべきところはあると思います。これから5月、6月となって(シーズンが進んで)いきますけど、少しずついい投手になっていきたいと思います」

 NPBでの93勝と合わせ、この時点(5月6日)で日米通算200勝まであと25勝。

「あと40年」はともかく、「いい投手になっていきたい」との思いを持ち続ける限り、ダルビッシュの限界点は見えてこない。

文=四竈衛

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