1年以上の休養を経て復帰する無敗の牝馬三冠馬、芝戦線に戻ってきた純白の女王、そして、重馬場の大阪杯で牡馬勢を一蹴した小さな女傑。

 第17回ヴィクトリアマイル(5月15日、東京芝1600m、4歳以上牝馬GI)には、レース史上最高と思われる豪華メンバーが揃った。

 同じ牝馬のマイルGIでも、桜花賞は差のない激戦になることが多いのに対し、このヴィクトリアマイルは、突出した力を持つ1頭が、圧倒的なパフォーマンスでインパクトを与えるレース、という印象が強い。

 例えば、2009年は、牝馬のダービー馬ウオッカが2着を楽に7馬身突き放した。2020年は、最強牝馬アーモンドアイが、ほぼ持ったままで4馬身差の圧勝。昨年は、牡馬相手にスプリントGIとマイルGIの「2階級制覇」を達成したグランアレグリアが4馬身差で力の違いを見せつけた。

 GI馬5頭が競演する今年はどうなるのか。

レイパパレにとってマイルは得意距離

 大混戦になりそうな気もするが、週末の雨予報も相まって、飛び抜けた走りで圧勝する可能性のある馬が1頭いる。

 ここが約2年ぶりのマイル戦となるレイパパレ(5歳、父ディープインパクト、栗東・高野友和厩舎)である。

 育成馬時代、「スクミ」と呼ばれる、体がこわばって動かなくなる症状を起こすなど、デリケートなところがあり、デビューが3歳時、一昨年の1月と遅くなった。そのデビュー戦は、京都芝1600mの新馬戦。道中2番手につけ、直線で2着を2馬身突き放した。

新馬戦(1600m)を快勝したレイパパレ。マイルは得意距離だ ©AFLO

 成長を促すため、5カ月の間隔を置いて使われた2戦目は、阪神芝1600mの1勝クラス。中団から直線で馬群を割り、1馬身差で快勝。マイル戦はそれ以来となるが、もともと、得意としていた距離なのだ。

 3戦目の糸魚川特別と4戦目の大原ステークスは芝1800m。つづく芝2000mのチャレンジカップで重賞初制覇を遂げ、次走、重馬場となった昨年の大阪杯で、コントレイルやグランアレグリアといった強豪を相手に4馬身差で圧勝し、無敗のままGIホースとなった。

川田将雅が語っていた“自信”

 2000mでも強い競馬をしてきたので、中距離戦線の馬というイメージが浸透しているが、持って生まれたスピードの絶対値が極めて高く、1800mでも抑えるのに苦労するほど前進気勢が強い。

 もともと適性のあるマイルを、今のレイパパレが走ったら、とてつもないパフォーマンスを発揮するのではないか。主戦の川田将雅も「切望していた1600mをやっと走れます」とコメントしている。週末の東京地方の予報には傘マークがあり、昨年の大阪杯ほどではないにしても、馬場が悪化するかもしれない。

 好条件が揃いそうだ。楽しみしかない。

前走大阪杯(GI)では3着となったレイパパレ ©Keiji Ishikawa

デアリングタクトとレイパパレは待望の直接対決に

 能力と格で言えば、一昨年、史上初の無敗の牝馬三冠馬となったデアリングタクト(5歳、父エピファネイア、栗東・杉山晴紀厩舎)も負けていない。同い年の無敗のクラシック三冠馬コントレイルと、先輩牝馬三冠馬アーモンドアイによる3頭の三冠馬対決となったジャパンカップで3着となり初の敗北を喫したが、力は示した。その後、古馬初戦の金鯱賞で2着、香港クイーンエリザベス2世カップで3着となったあと、繋靱帯炎のため長期休養を余儀なくされた。

 三冠目の秋華賞にはデビューから3連勝していたレイパパレも登録していたのだが、6分の4の抽選を突破できず、除外となった。待望された直接対決がようやく実現する。1年以上の長期休養明けというのは大きなマイナス材料だが、無事に走り切って、今後につなげてほしい。

2020年の秋華賞を制し、牝馬クラシック3冠馬となったアリングタクトと松山弘平 ©JIJI PRESS

白毛の女王ソダシ、3戦全勝の芝マイルに帰還

 ここ2戦はダートGIに参戦していた白毛の女王ソダシ(4歳、父クロフネ、栗東・須貝尚介厩舎)が、3戦全勝の芝のマイルに戻ってくる。前走のフェブラリーステークスでは、道中、キックバックの砂を被っても最後までレースを捨てなかった。直線で勝ったカフェファラオにかわされたあと、後続には抜かせず、走り切って3着。やはり、マイル戦のリズムが合うのだろう。芝の重馬場で走ったことはないが、ダートでの経験が、力のいる馬場で走る能力の向上に寄与しているはずだ。

3頭以外に狙い目の馬とは?

 3年前の2歳女王で、重馬場となった一昨年の桜花賞でデアリングタクトの2着となったレシステンシア(5歳、父ダイワメジャー、栗東・松下武士厩舎)が、坂路コースで素晴らしい動きを見せている。

 昨年の桜花賞でソダシと差のない3着となり、秋華賞では2着と先着したファインルージュ(4歳、父キズナ、美浦・木村哲也厩舎)も上位に来そうだ。

 ◎レイパパレ

 ○ソダシ

 ▲レシステンシア

 △ファインルージュ

「牝馬は格より調子」という格言がある。格も調子も文句なしと言えるのがレイパパレだ。今年のGIでは1番人気が7連敗中だが、この馬がそれをストップするか。

 なお、レース史上最多のGI馬7頭が出走した2016年のヴィクトリアマイルを勝ったのは、前年の覇者ストレイトガールだった。それに次ぐ多さで、今年と同じ5頭のGI馬が出ていた2006年は桜花賞馬ダンスインザムードが制し、2018年は8番人気のジュールポレールがここでGI初制覇を遂げている。

 今年も語り継がれる名レースとなるか、注目したい。

文=島田明宏

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