諸刃の剣であることは間違いない。

 今季から巨人でプレーするグレゴリー・ポランコ外野手とアダム・ウォーカー外野手の2人の外国人野手の存在だ。

 ポランコは、5月12日のDeNA戦終了時点で40試合に出場して打率2割4分8厘の6本塁打12打点という成績。12日のDeNA戦では同点ソロを含む3安打で連敗脱出の原動力となる働きを見せ、ここまで主に3番打者として打線を支えてきている。

 一方のウォーカーも持ち前の長打力で貢献し、5月に入ってすでに4本塁打をマーク。規定打席不足ながら打率2割8分8厘の7本塁打17打点とバットでは“合格点”の活躍を見せている。

カットマンに普通に投げることもできない

 ところがその一方にあるのが、ファンも目を覆いたくなるような2人の拙守の連続である。

 ポランコも動きが緩慢で12日のDeNA戦では4回にネフタリ・ソト内野手のライナー性の打球をグラブに入れながら弾いて二塁打にするなど、守備面でのマイナスが何度も見られた。

 しかしそんなポランコに輪をかけて守備面での問題を抱えているのがウォーカーだ。

4月24日の中日戦で木下拓哉の打球を捕り損ねた巨人・ウォーカー ©Sankei Shimbun

 打球の追い方も危なっかしいが、それにも増して危険なのがスローイングだ。中継に入る内野手への送球をグラウンドに叩きつけたり、とにかく速くて正確な球を投げるどころか、カットマンに普通に投げることもできない。イップス説も飛び交う送球は、もちろん他球団の格好の餌食。10日のDeNA戦でも初回無死満塁から牧秀悟内野手の左翼への浅い飛球で、三塁走者に迷うことなくタッチアップされて生還を許してしまった。レフトに打球が飛んだら迷うことなく次の塁に「GO」というのは、すでに相手チームの選手たちには折り込み済みという状況だ。

 それでも巨人はこの2人を使い続ける。

 もちろん理由は打撃の魅力である。

ウォーカーは連日、亀井コーチがつきっきりで指導

「ポランコは適応能力も高いし、ボールの待ち方など日本の野球にどんどん対応してきている。使っていけば、もっと良くなっていくと思いますね。ウォーカーは荒削りな面はあるけど、あれだけのスイングスピードというのは、なかなか見られないものがある。そういう意味ではやっぱり魅力的な選手だと思います」

 原辰徳監督の2人への評価だ。

打撃では高い適応能力を見せているポランコ ©Hideki Sugiyama

 もちろん守りに関しても手をこまねいて放置している訳ではない。特にウォーカーは連日、亀井善行外野守備兼走塁コーチがつきっきりでスローイングを指導。ここ最近は心なしか、以前ほどのギクシャク感がなくなってきているように見えるのは、そうした努力の賜物なのかもしれない。

「守備も一生懸命練習してくれていますし、足も速い。まだまだ本当の意味で途上の選手だと思うのでね。期待しています」

 こう語る原監督には外国人選手の起用で重きを置いていることがある。

「本当にチームに貢献してくれる選手の2つのパターン」とは?

「これまで現役時代から、それこそ何十人という(外国人)選手を見てきたけど、本当にチームに貢献してくれる選手というのは2つのパターンだと思う」

 原監督が外国人選手の評価をこう語っていたことがある。

 その1つがバリバリのメジャーリーガーとして教育を受けてきた選手で、そういう選手はプライドも高いがチームのために働く意識が強く、いざというときに頼りになる。

 原監督は現役時代の印象に残っている外国人選手としてウォーレン・クロマティ外野手を上げるが、もう一人、クロマティ以上に心に残っている選手がいる。

現役時代のクロマティ ©Sports Graphic Number

「やっぱりレジーは特別だった」

 1983年から2年間、巨人でプレーしたレジー・スミス外野手だった。ロサンゼルス・ドジャースなどメジャーで17年間プレーした両打ちの外野手で、通算314本塁打は現在でもスイッチヒッターとしてはメジャー歴代8位の記録となる。

「日本にきたときにはもう身体はボロボロだったけど、物静かでプライドの塊のような選手だった。決してただ金だけのために日本に出稼ぎに来たという感じではなくて、いつも『俺はメジャーリーガーだ。俺のプレーを見てくれ!』っていうような振る舞いで、僕自身もいろんなことを教えてもらったよ」

 原監督のスミスとの一番の思い出は自身がスランプで悩んでいるときのことだった。

「タツノリ、お前にとってバッティングってなんだ?」

「ああでもない、こうでもないってフォームのことで悩んで、打席でも非常に迷いが出ていた。そんな姿を見ていたんだろうね。ある日、レジーが僕のところにやって来て『タツノリ、お前にとってバッティングってなんだ?』って聞いてきたんだ」

 ただ、不振の迷宮に入っていた選手・原辰徳はその問いに即答はできずに、言葉に詰まってしまった。するとスミスは学校の先生が生徒を諭すように、こう語りかけてきたという。

「バッティングで1番大事なことは、まずスイングすることだ。フォームとか、バットの軌道とか、そんなことで悩むんじゃなくて、ますスイングしなさい。自分が追い詰められているときこそ、まず強くバットを振ることを考えなさい。バッティングとはスイング・ファーストなんだよ」

日本で骨を埋めるくらいの気持ちでやってきている選手

 その時の「スイング・ファースト」という言葉は、その後の幾度となく訪れた修羅場でバッター・原辰徳を支え、指導者となった後にも打撃哲学として刻まれるものとなった。

 もちろん1983年のリーグ優勝決定試合での1試合3本塁打などバットでの貢献もさることながら、このパターンの選手は数字以上の影響力をチームに与えて貢献してくれるという点でも貴重な存在となるものだ。

 そしてもう1つのパターンはアメリカではあまり成功は手にできなかったが、日本で成功して骨を埋めるくらいの気持ちでやってきている選手である。

 それはまさにウォーカーのような選手だ。

打撃では結果を残しているウォーカー ©Kiichi Matsumoto

「一番、厄介なのは実績があって日本で最後にひと稼ぎしようというような選手だよね。メジャーで実績があるから、日本にきても自分のスタイルを変えようとしない。それでいて結果が出ないと起用法やアンパイアなど周囲の環境のせいにする。でも、アメリカでなかなか結果が出なくても、日本で絶対に成功したいと思っている選手は、やっぱり必死ですよ。だから環境への順応も早いし、何より本人が努力する。そういう選手の姿というのは、必ず周りの日本人の選手にも伝わるし、だから外国人選手でも、いわゆる助っ人ではなく本当の意味でチームの一員になれる」

 これはウォーカーへのコメントではない。

推定年俸3400万円の選手に“大化け”を期待する背景

 巨人がなかなかいい外国人選手を獲得できずに苦労していたときに、どういう選手が欲しいのかという話を聞いた答えだった。ただ、振り返ってみると、まさにウォーカーのために用意したようなコメントにも聞こえてくる。

 2012年にミネソタ・ツインズにドラフト3巡目で指名されてプロ入り。ただその後は、独立リーグを挟んで4球団を渡り歩いたが、ついにメジャー昇格はできなかった。そうして19年からは独立リーグを主戦場にして20年と21年シーズンにはアメリカン・アソシエーション・リーグの本塁打王とMVPを獲得して、その活躍に注目した巨人が声をかけた。

 推定年俸は30万ドル(約3400万円)。年齢的にもまだ30歳でこれから本格化していく可能性も秘めている。何よりウォーカーにはこの場所しかない。日本で成功することへの強い意志があることが、原監督が大化けを期待する背景にあるのだ。

亀井コーチ(左)とウォーカー ©Kiichi Matsumoto

 実はもう一人のポランコにしてもまだ30歳とキャリアに幕を閉じるには早い年齢だが、度重なるケガでメジャー復帰の可能性はほぼ消えている。そういう意味では変なプライドを捨ててここが最後の場所、ここで成功するという覚悟で日本にやってきている。しかも巨人にはそういう覚悟の外国人選手のお手本的なゼラス・ウィーラー内野手がいる。ポランコもウィーラーの姿を見て、ベンチのムードメーカー的な存在となっているのも“買える”ポイントなのである。

原監督「いつか神様もほほ笑むと思うよ」

 チームの大黒柱である坂本勇人内野手と絶好調だった吉川尚輝内野手をケガで欠き、得点力が下がっている現状を考えれば、守備には目をつむっても、ウォーカーとポランコが打線に欠かせぬ存在であることは間違いない。5月27日の日本ハムとの交流戦から、ウォーカーは指名打者での起用も可能になる。今後2人の守備が劇的に向上する可能性は考えられないかもしれないが、少しでも改善されることがチームにとってプラスアルファにはなるだろう。

「人事を尽くして(天命を待つ)という形を見ているとね。いつか神様もほほ笑むと思うよ」

 亀井コーチと熱心に送球練習をするウォーカーの姿に、原監督はこう語っていたと東京スポーツは伝えている。

 諸刃の剣でもポランコとウォーカーを使い続ける。

 監督の覚悟は決まっているようだ。

文=鷲田康

photograph by Kiichi Matsumoto