現在のプロ野球のカレンダーでは、交流戦突入までがひとつの区切り。

 セ・リーグの首位に立っているヤクルトの高津臣吾監督も、

「これで節目というか、また新たな交流戦というステージに入っていくので、また、油断することなく、しっかりと気持ちを引き締めてグラウンドに立ちたい」

 と話している。

 各球団とも、シーズン143試合のうち3分の1を過ぎたあたりで、ようやくデータも出そろってきて、「傾向」が見えてきた。

 プロ野球に限らず、メジャーリーグにおいても私が重視するのは「得失点差」だ。プロは「平均」を競う世界であり、長いシーズンを戦っていくうえで、得失点差が順位につながっていく可能性が高くなる。

 さて、交流戦突入前のセ・リーグの順位、各球団の得失点差はこうなっている。

 この数字は、とても興味深い。それを列挙してみると……。

 ・得失点差で圧倒的優位を誇る広島が、実際は3位。

 ・2位の巨人は、最近になって得失点差がマイナスに転じた。

 ・このところ、阪神が得失点差を急激に改善し始めた。

 といったところだが、得失点差から見る各球団の特徴をまとめてみる。

【3位】広島「得失点差は“圧倒的”なのに…」

 広島は得失点差(+58)では圧倒的な強さを見せている。

 鈴木誠也が抜け、得点力が心配されていたカープだが、得点は202(1試合平均4.39)でトップだ。その中身が興味深い。本塁打数は24本、盗塁数は8個でこのふたつのカテゴリーではセ・リーグの最下位。反対に出塁率、犠打、犠飛の数はトップ。鈴木誠也が移籍したことで、「線」を意識した打線のつながりがいい。

 では、なぜ3位なのかといえば……7回以降に失点するケースが多いのだ。

 5月の8敗のうち、7試合で7回以降に失点をしているのだ。

 つまり、リリーフ陣の課題につながっていく。9回の栗林良吏は信頼度100%。しかし、8回の収まりがまだ悪い。このところ、勝ちパターンの試合では矢崎拓也を7回、8回に森浦大輔を起用したり、僅差の試合をケムナ誠、塹江敦哉でしのいでいる。

 序盤で大量リードを奪う余裕のある展開も今季のカープの持ち味ではあるが、交流戦では1点を争う試合で、どの順番でリリーフ陣の札を切るのか、佐々岡真司監督の腕の見せどころだ。

【2位】巨人「じつは得失点差マイナス」

 一方、得失点差マイナス(-5)ながら2位につけている巨人をどう考えたらいいだろうか?

 3月から4月までの31試合、巨人の得失点差は+25(得点136、失点111)だった。

 ところが、5月に入ってからの18試合で、なんと-30と不振を極めている。

 これは主将の坂本勇人の離脱と、ちょうど時期が重なる。

 坂本が最後に出場したのは4月30日の阪神戦。5月に入ると大差で敗れる試合が増え、加えて吉川尚輝の離脱も重なって、弱り目に祟り目。この時期に得失点差がガクンと落ち込んだ。

 交流戦突入前の10試合は7勝3敗と持ち直しているが、7勝のうち3勝が1点差。実に際どい試合をモノにしている。このあたり、シーズン前半にもかかわらず、原辰徳監督の執念とも思える細かい継投が目立つが、クローザーの大勢がいかに勝利に貢献しているかが分かる。

 現在、巨人は2位につけてはいるが、得失点差で分かるように中身は心許ない。「坂本が戻ってくるまで」の期間、交流戦で原監督がどのような采配をふるうのか注目される。

【4位】中日「交流戦がチャンスか?」

 巨人はなんとか持ち直しているが、心配なのは中日(-24)とDeNAだ。

 開幕当初、中日は長年の課題とされてきた得点力に改善傾向が見られたが、この10試合は2勝8敗、得点32、失点51という状態で交流戦に突入した。

 中日は広いバンテリンドームと敵地とでは数値がガラリと変わる球団だが、5月に入ってからは打線が不調。バンテリンドームでは6試合戦ってわずか16点、敵地では12試合も37点と、得点プロデュース力が低下してきた。

 ただし、交流戦でDH制の恩恵を生かせそうなのが中日である。打数は少ないながらも、打率3割を超えているアリエル・マルティネスをパ・リーグの球場ではDHで使えるのが好材料。大島洋平も戻って、敵地での打線のつながりに注目したい。

【5位】DeNA「ワーストの要因は?」

 DeNAは得失点差がワースト(-48)。意外だったのは得点が139点でリーグ最下位だったこと。4番の牧秀悟は固定されているが、オースティンがまだ1試合もプレーしておらず、佐野恵太、ソト、宮崎敏郎も戦列を離れていた期間があり、得点力が安定しなかったことがその原因だろう。

 交流戦に入って佐野を1番に起用したり、三浦大輔監督はいろいろ工夫を凝らしているが、歯車が噛み合う打順を発見できるかがポイントになる。

 また、投手陣では先発が序盤に失点を重ねることが多く、6回自責点3点以内の「クオリティスタート(QS)」が少ない。

 ここ10試合でQSが達成されたのは、5月10日のロメロ、5月12日の大貫(7回2失点も敗戦)、5月17日の今永(完封勝利)の3試合だけ。先発がどう試合を作っていくかが得失点差を改善するカギになりそうだ。

【6位】阪神「借金12でも得失点差はわずか-3」

 阪神の数字は、ある意味で「カオス」である。

 交流戦突入前、借金は12。ところが、得失点差ではわずか-3にしか過ぎない。

 実は5月に入って、阪神の得失点差は著しく改善している。17試合を戦い、得点52に対し、失点は37。投手陣が充実し始め、なんと、1試合平均で2点ほどしか許していないのだ。ところが、この数字が勝ちに結びつくかというと話は別で、5月の月間成績は交流戦突入前までは、8勝9敗。

 問題は5月だけで完封負けが5試合あることで、相手先発投手を見ると、小川(ヤクルト)に2度。そして石川(ヤクルト)、大野雄(中日)、床田(広島)とサウスポー相手に苦戦を強いられていることが分かる。

 対左投手での改善が見られれば、一気に借金を返すのは無理にしても、徐々にチーム状態は改善してくるはずだ。

【1位】ヤクルト「去年とは違うチーム」

 そして日本一チームのヤクルトが、交流戦突入前に首位に立った。

 しかし、昨年のチームとはだいぶ様相が違う。

 まず、昨季は得点力がリーグトップで、打線が牽引した面も大きかった。ところが、今季は総得点が166点。1試合平均に直すと3.77で、昨季の4.37と比べると得点プロデュース力がかなり落ち込んでいるのが分かる。一方で、総失点は広島と並んでリーグ1位で、投手力で現在の地位を築いていることが分かる。

 得点力低下の原因を求めるのは簡単で、5番を打つサンタナの長期離脱、そして昨季は6番に固定されていた中村悠平が、開幕から1カ月以上にわたって出場できなかったのが大きい。

 中村は5月3日に復帰、現在は中村と2年目の内山壮真が1日おきに先発マスクをかぶる形になっているが、中村が戻ってきてからは11勝5敗1分と好調。得失点は65対39と、この17試合で+26を稼ぎ出している。

 中村の復帰は投手陣の安定につながっており、1試合あたり2点ほどしか許していない。中でもブルペンの5月の月間防御率は24日の時点では0点台前半で、クローザーのマクガフ、交流戦初戦で無死満塁のピンチを切り抜けた田口麗斗はいまだに自責点ゼロを継続中だ。

 交流戦の焦点は、対戦経験がほとんどない投手に対して、どう得点を作っていくかということだろう。高津臣吾監督は「打線ではまだ上手く行かないところも多い」と話しており、DHに誰を起用するかを含め、まだまだ模索が続きそうだ。

 例年、交流戦でガラッと戦いぶりがかわることもある。これまでの傾向がどのような変化を見せるのかが楽しみだ。

文=生島淳

photograph by Sankei Shimbun