巨人のアダム・ウォーカー外野手に引き続き夢中です。前回、「萌え」の理由を書きました。

 打ってよし、走ってよし、しかし守備は驚くほどヘタ。とくにスローイングは内野にうまく返球できない。相手チームはウォーカーの前に打球が飛ぶと当然のように次の塁を目指す。それを悲しそうな目で見つめるウォーカー……なんだか切ない。

 すると東スポが「スクープ」を放ったのだ。

『巨人外野手ウォーカー 衝撃告白「今まで外野守備を、コーチから教わったことなかった」』(5月10日 東スポWeb)

 まじか。ウォーカーは米独立リーグからやってきた。あまりコーチ陣もそろっていなかったという。現在は亀井善行コーチに付きっ切りで指導してもらっているので、守備について目からウロコ状態だと。

 びっくりした。だって「現在野球を習っている人」がプロ野球の試合で外野を守っているのだ。前代未聞です。東スポには「伸びしろしかない」とも書かれているが目が離せなくなってきた。この感情は完全に「萌え」である。

元同僚が明かした、米独立リーグ時代の伝説

 では6月の新情報です。注目したのはこの記事。

『巨人・ウォーカー伝説 米独立リーグ時代の元同僚が語るベールに包まれた過去』(6月14日)

 デイリースポーツがウォーカーの元同僚、BCリーグ・福島レッドホープスの福原大生選手に謎の過去を尋ねたのである。

 まず打撃の伝説。

「フリーバッティングなんですけど、逆方向に場外打ってましたね。バックスクリーンを超えたりとかも全然してました。試合では40打席くらいノーヒットってことがあって、コーチから『バットを短く持て』って言われて、バットを短く持ったまま場外ホームラン打ってました」

 漫画みたいなエピソードに驚くデイリー記者。そして守備の話になった。ある接戦の9回のこと。

「レフトをウォーカーが守っていて、ウチはエースが投げていた。それでレフトに飛球が行って、『これで2アウトや』って思っていたら、ウォーカーがポロッと落球。結果的にタイムリーエラーで同点になって、みんな『ふざけんなよ』みたいな…」

 ところが延長戦でウォーカーが場外ホームランを打って勝ったという。自作自演がすごい。なるほどと思ったのは次の証言だ。

「本当にバッティングの練習だけしていて。守備力を0にしたからこそ、あのバッティングだったのかもしれないです」

 独立リーグから上を目指すためにウォーカーは「一芸」に賭けたのだろうか。その甲斐あって巨人スカウトの目に留まったのか。

 デイリーの記事と同じ頃、サンスポは『亀井塾で伸びしろ開花』(6月15日)と大特集。なんとブルペンで送球練習という「秘策」を伝えている。ちなみにこの時期は交流戦が終わって数日間試合がない期間。ネタがないなかで各紙はウォーカーを取り上げていた。ウォーカー、もしかしてキテるのか?

 東スポは亀井コーチを直撃。

《巨人の新助っ人、アダム・ウォーカー外野手(30)が劇的な進化を遂げている。米独立リーグ出身で守備の指導をロクに受けたことがなく、開幕当初はキャッチボールすらまともにできない弱肩ぶりで周囲を驚がくさせたが、亀井善行外野守備兼走塁コーチ(39)による熱心な指導でメキメキと上達。どんな手法を使ったのか。》(6月15日 東スポWeb)

「亀井塾」で日々指導を受けるウォーカー。亀井コーチにとっても驚きの守備力だった ©Sankei Shimbum

亀井コーチが語る“萌え”の理由

 東スポはUFOとかウォーカーとか「未知」への反応がやはり素晴らしい。そして期待通り亀井語録も前代未聞だった。抜粋する。

「いやあ…僕も1年目でしょ? いきなりすげえとんでもない試練が来たなという感じでしたよ(笑い)。本当にこれを教えるのか!? と。これを直さないといけないのかと思うと、最初は相当不安でした」

「まず(ウォーカーの)練習のやり方を見て、すべて間違っている感じでしたね。そこからですかね」

「あれ以上の人はこれから出てこないでしょうね(笑い)。一年かけてやらないと。(守備を)何も知らないまま、ここまで来たんですから」

 守備を何も知らないままの人がレフトを守っている。こんなスリルがあるだろうか? 亀井コーチはこんなことも言っていた。

「みんなね、彼に対して見る目が優しくなっているんですよ(笑い)。『良くなったな、良くなったな』って言ってくれるんですけど」

 みんなウォーカーに萌えている。なんという展開。一方でみんな優しいというのは、打撃が好調という理由がかなり大きい。

 6月23日のスポーツ報知は一面で『ウォー 絶賛弾 長嶋さん』。

 6月22日のDeNA戦で15号ソロを打ったウォーカーが一面。注目すべきは長嶋茂雄さんのコメントだ。ウォーカーは不思議なバッターだと述べつつ「ウォーカーに倣え」と語っている。そして、

《ホームランバッターにフルスイングはいらない。アダムが理想だ。》

 アダム!

 遂に長嶋さんにファーストネームで呼ばれ始めたぞ。これはもうカール・ルイス級ということか(懐かしい)!?

打撃は相変わらず好調のウォーカー。7月1日時点で打率.307、16HRの成績を残している ©Hideki Sugiyama

「ちょっと涙が出そうになっちゃったよ」

 そして今月のウォーカー劇場のクライマックスは6月28日だった。

『巨人・亀井コーチ ウォーカーの補殺に大感激「ちょっと涙でそうになっちゃったよ。感動した」』(スポニチWEB)

 ウォーカーが中日戦(山形)で走者の本塁生還を2度に渡って阻止し、来日初補殺から一気に2つ記録!

 亀井コーチは試合後に「メチャクチャうれしかったですね。ちょっと涙でそうになっちゃったよ。感動したっすね」 「最初を見た人は分かると思うんですよ。これが成長じゃないかなと思いますね」と語った。

 ウォーカーは肩が弱いというよりそもそも投げ方を知らないのでは? と思って見てきたが、あのプレーを見ると確かに成長している。

 翌日、報知の名物コラム『仙ペン』は『僕らの家族、ウォーカー』(6月29日)と書いてきた。

《何でこんなにワクワクするんだろう。要するに「自分の家族の成長や奮闘」を見ているのと同じってことだ。超人的な身体能力を持つ赤ちゃんが驚異的なスピードで進化する—。こんなの目が離せないに決まっている。》

 すいません、私もウォーカーから今月も目が離せませんでした。

文=プチ鹿島

photograph by KYODO