注目を一身に集めたプロ入りから5年。日本ハム・清宮幸太郎は今、自身の「現在地」をどのように捉えているのか。BIGBOSSとの出会いがもたらした大きな変化。同学年のヤクルト・村上宗隆への本音は――。プロ入りから清宮を見続けてきた担当記者が綴った。(全2回の1回目/#2へ)

 変わりたい――。そう誓って臨んだ清宮幸太郎 の5年目シーズンが終わりを迎えようとしている。今季から就任したBIGBOSSこと 新庄剛志監督に多くのチャンスを与えられ、打率は2割前後ながら試合数、本塁打でキャリアハイの数字をマーク。もがき苦しみながら、一歩一歩着実に成長を遂げた1年だった。

「やっぱり変わりたかった」5年目の清宮が口にした渇望

 今年1月の自主トレ公開から、今シーズンに懸ける思いはひしひしと伝わってきた。ソフトバンク・柳田悠岐、ロッテ・安田尚憲らと並んだ清宮は、驚くほどスリムになっていた。「ここにいるメンバー中では余裕で一番食べていますけどね」と笑った顔はシュッと引き締まり、明らかに体つきが変わっていた。シーズン開幕直後、減量に踏み切った理由をこう語った。

「やっぱり変わりたかった。変わりたかったのが一番です」

「変化」への渇望を口にした。昨シーズンは初めて一軍昇格無し。同世代が大学や社会人野球を経てプロ入りするプロ5年目のシーズンに、危機感を誰より感じていた。

「周囲からは見た目が変わったと言われますが、やるからにはそれくらいやりたいし、誰がどう見ても変わったなと言われるようにしようと決めていました。やっぱり動きやすいですよ」

 すべての始まりは、BIGBOSSの言葉だった。秋季キャンプを視察に訪れた指揮官は、体重100kgを超えていた清宮に「ちょっとデブじゃね? やせない?」と声を掛けた。仙台から東京への新幹線移動の間に牛タン弁当7個平らげたという逸話を聞きつけ、ダイエット指令を出したのだ。打球が飛ばなくなることを心配して減量することに躊躇もあったというが覚悟を決めた。

 すぐ行動に移した。朝食前に時速6kmで歩くと脂肪燃焼効果があることを知り、秋季キャンプでは同部屋の吉田輝星と共に早朝散歩した。寮のある鎌ケ谷に戻ってからも継続し、わずか1カ月ほどで4、5kg減に成功。食事面ではドレッシングやたれで使わずに余分な糖質をカットし、年明けには昨秋のキャンプからさらに1kgの減量を果たした。

「デブじゃね?」から始まった1年。BIGBOSSへの思いは

 技術面でも打撃フォームの改造に着手した。

「去年までは自分のスイングが嫌いで、嫌いで仕方なかった。だから変えることに対して躊躇することは全くなかったです。見ていてもひどいので。やっぱり自分のスイングを見て、格好いいなって思いたいじゃないですか」

 オフは昨シーズン本塁打王のオリックス・杉本裕太郎らが通う野球塾「根鈴道場」に足を運び、正確なスイング軌道が身に付く「バレルバット」や、グリップが2本あるスイング矯正用具「シークエンスバット」を導入。これまでは球団施設で自主トレを行っていたが「5年目でガラっと環境を変えてやりたい」と一念発起し、「日本一のバッター。めちゃくちゃスイングが格好いい」と憧れるソフトバンク・柳田悠岐へ弟子入りを志願した。寝食を共にして、球界屈指のスラッガーに教えを請うた。

「目の前で柳田さんも一緒に練習してくださいますし、質問にも本当に丁寧に答えてくださるので、本当にここに来て良かったなと思っています。猛アピールしまくって、開幕戦はホークスなので、柳田さんの前で一発かましてやりたいと思います」

「ニュー清宮で行こう」柳田への憧れとあの人からの言葉

 ソフトバンクとの開幕戦で本塁打を放つことを宣言。意気揚々と春季キャンプに臨んだが、オープン戦では思うような結果が出ずに苦しんだ。開幕前最後の試合となった3月20日のDeNA戦(札幌ドーム)の練習前、BIGBOSSが手を差し伸べてくれた。稲葉篤紀GM、金子誠野手総合兼打撃コーチも交えた約30分にわたる指導で、下半身を意識した打撃フォームを体に染みこませ「ニュー清宮でいこう」と助言をもらった。

 その試合で代打安打を放ち、開幕一軍メンバーに滑り込んだ。今季初出場となった3月26日のソフトバンクとの開幕第2戦(PayPayドーム)では、お世話になった右翼手・柳田の頭上を越える今季初本塁打をマーク。一軍の舞台で517日ぶりに放ったホームランの感触は格別だったという。

「一軍で打つのは違いますよね。やっぱりいいですよ。だって、良い打ち方しないとホームランは出ないし、100点満点のスイングはホームランのはず。ビッグボスと稲葉さんと誠さんとオープン戦の最後の試合で思い切って色々チャレンジした結果じゃないかなと思います。自分が思っていたよりも変化があって、すごくおもしろかったです。ボスから“割れを作って欲しい”とずっと言われていたんですけど、それが全然出来なくて……。でも 急に出来るようになりました。あっこんな感じかって。オフも色々やってきてめちゃくちゃ良かったな。それがなかったら今はないですから」

 幸先よくスタートを切ったが、悔しい思いもたくさん味わった。走塁ミスや守備でエラーを犯し、指揮官が報道陣の前で厳しい言葉を投げかけることもあった。夏場までチャンスでさっぱり打てず、今季11号まで本塁打は全てソロアーチ。くじけそうになった時もあったが、試合後には稲葉GMや金子コーチが居残り練習に付き添ってくれ、BIGBOSSは前向きになれる声掛けをしてくれた。

「試合後もいつも2人がバッティングを見てくれますし、2人ともすごい引き出しが沢山ある方。いつも見てくれて、気に掛けてくれているとすごく思うので、感謝の思いが強いです。ビッグボスからは『楽しんでやれよ』と常に言われます。あとは『良くなってきているから自信もっていってくれ』と言われることもあって、それもうれしいです。シンプルな言葉ですけど、一番わかりやすいというか、なじみある言葉かなと思います」

「高卒でプロ入りしたことに悔いは……」清宮が語る現在地

 大舞台で大きなインパクトを残すこともできた。プラスワン投票で初選出されたオールスターゲームでは第1戦の7回の守備から出場し、9回の打席で値千金のサヨナラ本塁打をマーク。ホームランダービーでは師匠・柳田の打撃投手を務め、イニング間の「きつねダンス」タイムではきつねの耳を着けてキレッキレの踊りを披露した。一流選手が集う祭典で主役の座をかっさらい、とびっきりの笑顔を見せた。

 変化を恐れず、挑戦し続けたプロ5年目のシーズン。一方で23歳の若きスラッガー候補には、野球を始めた当時から変わらない思いがある。

「ホームランを沢山打ちたいという気持ちは変わらないです。今振り返ると、高校時代はめっちゃ打っていました。3年生の時は試合でヒットを打ったら、『ああ、残念』みたいな感じでした。でも、やっぱりプロは違います。その世代のエースになっている 人たちが集っている場所ですから。だからといって、高卒でプロ入りしたことに対して、悔いはありません。自分の立ち位置もはっきりしていますし、早くプロに来ることが出来て、本当に良かったと思います」

 リトルリーグ時代から『和製ベーブ・ルース』と注目を集め、早実高時代には高校歴代最多とされる111本塁打を記録した。自身の代名詞でもあるホームランを打ちたいというピュアな感情は、今も清宮の原動力だ。

「ホームランは正義ですから」

 そう口にする清宮。同学年で、令和初の三冠王が決定的となったヤクルト・村上宗隆にはどんな思いを持っているのか――。 

≪後編≫へ続く

文=中田愛沙美(道新スポーツ)

photograph by KYODO